2019-08-01から1ヶ月間の記事一覧
パンフレットの表紙の写真がきれい(ロゴは…いまいち。)。髪の短い女の人が、暗がりで長椅子に腰を下ろして京劇の靴をはこうとしている。長椅子の座まで左足を上げ、紐を結ぶところだ。舞台の照明が女の人の前方上からそっと当たり、彼女の動作の優しさ――す…
ニック・ロウをビルボード東京に聴きに行くことになって、凄く後悔した。ポップな感じ、短い曲、生き生きしたチューン、明るさ、好きにきまってる。どうしてもっと早く、たくさん、聴かなかったんだ。 ビルボード東京から見晴らす公園に、岩のオブジェをちり…
「あー、ハンマースホイ」 微妙に粗く、そして丁寧に塗られたうす水色の壁と、そこに白く低くめぐらされた腰板を見て、デンマークの画家のことをすぐ思い出すのだった。ハンマースホイは女(妻)の後姿や、ひと気のない室内をよく画題にした画家で、静謐な品…
ぽんぽんひゅるひゅる上がる花火のような会話、どこをとってもぱっと小さく火がつき、火薬が言葉を打ち上げて、金や銀の火花がきらきら海に散っていく。これ面白い話だね。初演1998年、21年たって再演したくなるのわかる。 1987年の夏、海外のある島の広壮な…
王冠は血塗られた太陽だ。 グロスター公リチャード(河内大和)は太陽の影にうつる自分のねじれた姿を呪いながら、激しく王冠を求める。七枚に分かれているくしゃくしゃの和紙のような後景のスクリーンの間から、リチャードは足先を見せ、逆子として生まれる…
文句はいろいろあった。劇場のサイズ感がつかめていず、皆怒鳴って声が割れている。只でさえ役柄の把握が難しいのに、赤薔薇ランカスター家のグロスター公ハンフリー(別所晋)と白薔薇ヨーク家のリチャード・プランタジネット(大塚航二朗)が、髭の生やし…
赤い幕が襞を寄せて「額縁」の中にある。開演時間が近づくと、幕は船の帆のように風を孕んでかすかにふくらむのだった。 私の頭の中では、あの幕は風で手前の客席の方へあおられて、高く高く、裾がミラーボールにつくくらいに持ち上がり、役者たちは「額縁」…
板橋区大山、すてきなカフェのあるところ。凍らせた紅茶のキューブの上に紅茶を注ぎ、レモンのスライスを5、6枚浮かべて、レモンをつぶして飲む。ゆるいジャズっぽい音楽が聞こえ、冷えて汗を浮かべたコップのように、すべてがゆったりとくぐもって遠く感じ…