2020-10-01から1ヶ月間の記事一覧

シアターコクーン COCOON PRODUCTION 2020 『フリムンシスターズ』

分断と分裂。昼と夜(輝く二丁目の看板)、右の階段と左の階段、上手と下手で高低のついた二つの赤い戸口。グレーのコンクリートを模した壁に、一際鮮やかに海が描かれる。あー、この海がいろんなものを隔てているね。沖縄と東京、ゲイとゲイでないもの、日…

あうるすぽっと ロームシアター京都 レパートリー作品 『糸井版 摂州合邦辻』

4度、5度と繰り返される合邦(武谷公雄)の殺人シーンは、それが現在の東京に起きる子殺しでもあることを強調している。父(武谷公雄)と小さい娘(玉手=辻=内田慈)のシーンが長く演じられ、二人はセンチメンタルな歌の掛け合いで繋がりを訴えあう。これ…

ヒューマントラストシネマ渋谷 『スパイの妻』

常套句(クリシェ)でない。この作品が海外で評価されたのは、まずそこだろうと思う。この題材(日本軍の人体実験)は、日本では空気の薄い、誰も行きたがらない暗い場所にある。だからそこで起きる出来事を、まだ誰も見たことがないのだ。状況も主人公も、…

練馬文化センター小ホール イッセー尾形の妄ソー劇場

舞台下手に衣装ラック、小机に水のペットボトルが見える。その下にかつらがいくつか。中央に二重、両脇に一段だけ階段がついている。奥に信号機がうっすら傾いで立ち、開演前の地明かりは青い。イッセー尾形による会場内諸注意、あんまりおもしろくない。「…

日経ホール 〈振替公演〉J亭スピンオフ企画 12 白酒・三三 大手町二人会

座席の背もたれの背が高い。日経ホール、ここって何するところ?きっとセミナーや何かやっているに違いない。ネットで確かめたら月に3,4回お笑いライヴやコンサートもある。ふーん。辺りを見回す。演劇の公演では、いま、客席は水を打ったように静まり返って…

東京芸術祭2020 東京芸術劇場30周年記念公演 『真夏の夜の夢』

開演前、勿論舞台は暗いけど、空調の換気の音やスイッチがオンのまま消された照明の立てる奇妙な唸り声が聞こえてくる。舞台の一番奥には銀色らしい四角いもの(調理台)が、客席の赤いシートを映している。何でしょうこの宇宙感。ここにすべての重力や光が…

PARCO THEATER OPENING SERIES 『獣道一直線!!!』  

宮藤官九郎、早く役者やめて執筆に専念したらと思っていたが、この芝居を観て心が変わったよ。虚構と現実の間の断崖に身を伸べて、あっち岸とこっち岸をつなぐおさるの橋(ドリトル先生)みたいになってる。声がリアルで、信頼できるインテリジェントな音で…

Bunkamuraシアターコクーン COCOON Movie!!芸術監督名作選 『下谷万年町物語』

なんだろう。さっぱり話に追いつけなかったくせに、観終わるとさめざめと涙を流しているのであった。 初演1981年、再演も同じく蜷川幸雄演出で2012年。「日陰者」「異端」であるところのおかまたち、六本指の少年文ちゃん(西島隆弘)とやはり六本指の洋一青…

ヴィレッジプロデュース2020Series Another Style 『浦島さん』

六曲一双の大きな屏風。二曲の屏風がその両脇に立つ。舞台上手と下手に不均衡な箱のようなものの山。絵草紙がたくさん重なっているようにも見える。舞台中央に向けて、鋭い9本の照明があたる。かっこいい。 今日演じられるのは太宰治の書いた『お伽草紙』の…

Bunkamuraシアターコクーン COCOON Movie!!芸術監督名作選 『女教師は二度抱かれた』

夢は檻。夢は無、夢には顔がない。 動物園の動物たちはのん気で、みているこちらは優越感、と、「舞台と観客」「見られる人と見る人」の関係が語られる。してみるとこの世は檻?いつでも見られる人と見る人がいる。さしずめゲイは見られる人、私たちは見る人…

serial number 05 『All My Sons』

「どうぞ戯曲以上のことが起きます様に」と祈ってはいたものの、中央には「奥へ」(見えない方角へ)倒れているリンゴの木があって、羽目板の家の二階、客席に向かった角が、何か災厄でもあって齧り取られたように抉れ、暗がりがのぞいている。これさー、語…