2021-07-01から1ヶ月間の記事一覧

赤坂レッドシアター プリエールプロデュース 『マミィ!』

うわずっていた。 母小須田咲(熊谷真美)と、実家を訪ねてきた娘来奈(らいな、宮崎香蓮)のやりとりが、もんのすごい音域あがっているうえに互いに近寄っていて、どちらも役柄を打ち消しあっている。特に熊谷真美は主役であり、15年も蒸発していた夫和久(…

紀伊國屋ホール ラッパ屋 第46回公演 『コメンテーターズ』

ワイドショーのプロデューサー真行寺(岩橋道子)はお買い物好きという設定で、両手にたくさんのショッピングバッグを持って登場する。ショッピングバッグの大きさは均等で、「お買い物好きのリアリティ」ははっきりいってない。しかし、その嵩張るバッグを…

Bunkamuraシアターコクーン COCOON PRODUCTION 2021『物語りなき、この世界。』

あのー。「人は無意味に耐えることはできない」っていう、古い推理小説を読んでから、あっそうなのねと物語を疑うことをしてきませんでした。それと世の中の物語を求める人、物語に乾いている人って、不幸せな人が多いと思う。いいとか悪いとかではなく、今…

新国立劇場小劇場 新国立劇場 演劇 2020/2021 『反応工程』

「あっホールデン・コールフィールド」正枝(天野はな)が田宮(久保田響介)に「逃げずに戦争へ行け」と破れた赤紙を握らせるところで、場面は凍り、孤独の中に田宮は残される。サリーは来ない。小学校しか出ていない正枝と大学へ進むであろう優秀な田宮、…

帝国劇場 『レ・ミゼラブル』

ものすごい音量で荘重な前奏が聴こえるとスクリーンに波しぶきが見え、ヴィクトル・ユーゴーの本の世界が観音開きになって、「レミゼラブル」がなだれ込んでくる。 ガレー船漕ぎ、いちいち芝居が大仰だよと言いもあえず、全てのシーンが並列に矢継ぎ早に繰り…

シアタートラム 劇団チョコレートケーキ 第34回公演 『一九一一年』

男は泣かぬがよし とされた明治末期にあって、大逆事件の予審判事を務めた田原巧(西尾友樹)の目の裏側、身体の内側に、さんさんと涙が流れ落ちている。後悔、無念、慙愧、それらすべての思いを込めて、「内側に涙が流れる」。その涙の音を観客は聴き、気配…

シアターオーブ 『ジーザス・クライスト・スーパースター・イン・コンサート』2021

んー。今日のラミン・カリムルーちょっと上ずってない?しかも、それが役柄のユダの動揺してるのとなぜか同調していて、動揺だか上ずってんのかどっちかわからない仕上がり。冒頭のギターソロは重さを掛けずさっと進め、照明はテレビだったら怒られるくらい客…

世田谷パブリックシアター 『森 フォレ』

装置家のつくりだした、大きな木の年輪の、傾いた舞台セットが、理詰めでこの芝居を説明してくるにもかかわらず、私のイメージはずっと、ここは(子宮)の中なのだという、どっちかっていうと強迫的な感じであった。「子宮」という日本語は、かつての男たち…

座・高円寺1 劇団扉座40周年記念 『解体青茶婆』

洋学史上、医学史上に大きな名を残す杉田玄白(有馬自由)は、83歳となっている。彼が『ターヘル・アナトミア』を翻訳したいきさつを記した『蘭学事始』には、記載されていない事実が多く、前野良沢の名前もない。それを校訂すべく、弟子の大槻玄澤(山中崇…

あうるすぽっと serial number06 『hedge1-2-3 sideA hedge/insider』

や、台詞の言い方修正したんだね。わざとらしいところがなくなってる。と思ったのもつかの間、次の瞬間物凄い悲哀が訪れる。資本を「投入」が、「豆乳」に聞こえる自分の人生に、ショックを受けるのだ。愛とお金と健康、大事な三つの物のうち、私、「お金」…

角川シネマ有楽町 Peter Barakan's Music Film Festival 『ランブル RUMBLE  The Indians Who Rocked The World』

もちろん今では多くの人がネイティブ・アメリカンと呼んでいて、と頭では分かっているけれど、遠く離れた島国の、そのまた押入れの中に棲んでいるような私には、子供のころに柱にピンで貼った童画のイメージが抜けず、苦労する。ちいさな水彩画の中では、赤…

角川シネマ有楽町 Peter Barakan's Music Film Festival 『BILLIE ビリー』

図書館の本の、「お父さんとお母さんがほぼ子供」ってところでびっくりした中学生はそのあとその人のことをすっかり忘れていた。20代、90分のテープをオートリヴァースにして、どれだけかけっぱなしにしても全然いやにならない音楽が、「ビリー・ホリデイ」…

角川シネマ有楽町 Peter Barakan's Music Film Festival 『マイ・ジェネレーション ロンドンをぶっとばせ!』

ゆりかごから墓場まで という、たった10文字ほどのスローガンが、どんだけ大きな波紋と事態を呼んだか、この映画で突然、ぴかっとわかった。教育の充実と福祉の完備が、次世代(マイケル・ケインの世代)をでかく育てたのだ。日本の保守派の作家すら、「イギ…