2022-11-01から1ヶ月間の記事一覧

本多劇場 KERA・MAP #010 『しびれ雲』

KERAの頭の中から生まれた架空の島「梟島」に、一人の怪我をした男が現れる。記憶を失い、フジオ(井上芳雄)と名付けられた男と、彼の周りの20人に満たない人間関係の、戦ぐ波乱と頭上に浮かぶ「しびれ雲」。島の住人の潮目になるという「しびれ雲」を見上…

世田谷パブリックシアター シス・カンパニー公演『ショウ・マスト・ゴー・オン』

再演の映像を、深夜のテレビで観たのかなあ。「松」、「トランプ」くらいの、断片的な記憶しか残ってない。楽しく観て、すっかり忘れてる。今回この28年後の再々演を観て、「ふーん」と感心するのは、ところどころに、ひんやりした匕首のような怖さが潜んで…

東京芸術劇場 プレイハウス 東京芸術祭2022 芸劇オータムセレクション『守銭奴 ザ・マネー・クレイジー』

稀代のけちんぼうアルパゴン(佐々木蔵之介)は、召使のお仕着せから食べ物からなにもかもにけちけちしている。娘エリーズ(大西礼芳)を金持の老人アンセルム(壤晴彦)に縁付け、自分は息子クレアント(竹内將人)の思う人マリアーヌ(天野はな)を妻にし…

紀伊國屋ホール 『管理人/THE CARETAKER』

「背景の壁に窓、その下半分は袋で覆われている。」(喜志哲雄訳)って、どういうことかと思ったら、茶色い麻袋のような布で、窓が隠されているのだった。窓の上の羽目板はむき出しになり、寸胴鍋や脚立や木箱、古くて端が縮れた新聞の束の山、皆ぼろぼろで…

東京芸術劇場シアターイースト 二兎社公演46 『歌わせたい男たち』

「立場」。立場が変わると意見が変わる。そんなのよく見聞きすることだけど、その立場が煮詰められて、のっぴきならない人たちがいる。学校の先生だ。永井愛は国歌斉唱問題の山場を2008年に設定しているけども、私の知ってる限りでは、式を巡る厳しい対立は…

恵比寿ガーデンシネマ 『土を喰らう十二ヵ月』

まず、「一年間かけている」ってことが映画に出てる。高速撮影がちょっと多いけど、いやじゃない。土に埋けた(?)里芋を出す、雪の下からほうれん草を採るところもしっかりリアルで、真っ黒の土をつけた芋を、一つ一つ流しで洗うとか、ほうれん草の根が白…

新国立劇場小劇場 シリーズ未来につなぐもの『私の一ヶ月』

うーん…何をどういっていいか…あのう…言うよ。 趣味が悪い。すごく悪い。泉(村岡希美)の夫拓馬(大石将弘)の死を、残された泉がこころの重荷として背負っている。それを、「風鈴(実物)をかける」ことで表現する。いやな気持になりました。これさ、もう…

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA  こまつ座 第145回公演 『吾輩は漱石である』

「手紙を披くと、あなたの声がきこえるけれど、二度三度と読むうちに、その声は消えてしまいます。」っていうのあったよね。わたくし、この芝居を観て、そのことを考えました。 私も(平埜生成がthe座 no.116で、本作が大好きだといっている)井上ひさしの評…

SCOOL 劇壇ガルバ 第4弾実験公演『錆色の木馬』

うゎゎゎ、むずかしいやん。と思い、こんな時論理的な人ならすぐ理解できるのに、と思い、鏡に向かって、鏡を持った時のことを考える。鏡の中には、鏡を持った「ワタシ」が映り、「ワタシ」の持った鏡の中にも、もっと小さな「ワタシ」が映る。一つの鏡に、…

中野サンプラザ 『ベルウッド・レコード50周年記念コンサート』

ずいぶん高低(たかひく)のあるスタンドが舞台に並び、一番上に照明をつけて、星のように光ってる。 今日は、『ベルウッド・レコード』の50周年の記念コンサートだ。ベルウッドって、1972年に正式に活動を始めたキングレコード傘下のレーベルなんだって。70…

池袋シネマ・ロサ 『Bridal,my Song』

「映画を見る側に考えさせるのがA級映画であって、すべてを説明してしまうのはB級だ」(クリント・イーストウッド、『「ローリング・ストーン」インタビュー選集』ヤン・S・ウェナー/ジョー・レヴィ編著 太田黒奉之/富原まさ江/友田葉子訳)と、イースト…

新橋演舞場 2022年 劇団☆新感線 42周年興行・秋公演 SHINKANSEN RX『薔薇とサムライ  海賊女王の帰還』

17世紀初頭のヨーロッパに、コルドニアという小国があり、国を治める女王は、元海賊のアンヌ(天海祐希)である。悪者たちから国を取り戻したものの、十数年が過ぎるうち、隣国ソルバニアノッソの女王マリア・グランデ(高田聖子)は、コルドニア併合に向け…

Bunkamuraザ・ミュージアム 『イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき』

90年代の終わり、「北欧」が若い女の人たちの間ではやり始めたのは、みんな無意識に、北欧ミタイニナリタカッタからだと思う。子供たちにはみな整った保育園があり、老人は守られ母親は働けて、一個人として尊重され、人権はちゃんとしていて、国は情報の透…