2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧

日本橋TOHO 『スモール・アックス』第1話最速無料試写会

1968年ロンドン、ノッティングヒル、一人の(黒人の)男が、煙草の煙とさいころの音、レゲエ音楽でけぶっている地下の店を出て、路を斜めに横切り、挨拶したり不良を追い払ったりしながら、真新しい紫と黄緑の配色のレストランに入ってゆく。男の名前はフラ…

東京国際フォーラム ホールC ミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』

「地上のマリア」の出現から物語は始まる。ちいさなハミング。大きな格子柄のコートを着た女(ミセス・ジョンストン=堀内敬子)がしっかりと立ち、歌う。足元はくるぶし近くまで甲皮のある昔風のがっしりした中ヒールだ。上に向けた視線は挑戦的だが、すこ…

本多劇場 悪い芝居vol.28 『愛しのボカン』

「声、でてます」。確かに、誰も彼も、声出ている。客を瞞着するような、嘘のシーンも消えた。でも。今回開場して客席に入ると、青年団みたいに舞台に役者が板付きだ。この状況がつらい。実につらかった。男の子に注目されているのがわかっているのに、知ら…

劇団俳優座五階稽古場 劇団俳優座LABO公演38『京時雨濡れ羽双鳥』『花子』

これ、どちらも、女の価値、経済の話かな。女の人はいつでも値段をつけられてきた。田中千禾夫がどんだけ女に詳しくったって、「値段をつける側」だったことは動かせない。女は雌鶏のように卵を産むよう励まされる。子を産む女は価値がある。労働力として女…

こくみん共済coopホール 劇団昴公演『一枚のハガキ』

ふーん、やるね劇団昴、まず、個々の役柄の設計図がぴしっとしてて緩みがなく、それを実際に舞台に立ち上げる時も折り目が鋭くて、すんごいよく飛ぶ工学ハカセの紙飛行機みたいだ。人を得て古川健の脚色もひときわ輝いている。 冒頭、下士官の町田大征は戦時…

新宿ピカデリー 『アンチャーテッド』

ネイサン・ドレイク(トム・ホランド)という名前のドレイク船長の末裔が、マゼランの財宝を求め兄貴分サリー(マーク・ウォルバーグ)と世界を駆け巡る。 もともとが「ゲーム」だからか、話も心理描写も粗く、かっこいい悪者の女の人がふたりも出てるのに、…

渋谷TOHO 『ウェスト・サイド・ストーリー』

ポップコーンを食べる女子高生や、制服のカップル、男子高校生のグループが多い客席を見て、衣の片袖を目に押し当てる。そうそう、この映画って、もともと君たちの物やん。それを、梅の木よろしく、御所に召し上げられちゃってねぇ。 というのはさ、オリジナ…

ザ・スズナリ 東京成人演劇部vol.2 『命、ギガ長スW(ダブル)』[長ス組]三宅弘城×ともさかりえ

あの、「混ざる」の中にはマザーが入ってるんだよねと、恐る恐る言ってみるのは、駄洒落としてもあんまりやんという自分の心のブレーキが働いちゃうからだ。でも、松尾スズキはぶれないよ。突っ走る。そして、やりきる。 照明がつくと、背中の曲がった痩せた…

新国立劇場小劇場 『ライフ・イン・ザ・シアター』

舞台の手前側に役者の化粧台が2つ設えられ、その後ろにプロセニアムアーチ、フットライトに照らされた舞台が背中合わせに見えている。額縁によって切り抜かれた空間は、「虚無」にも「宇宙」にも「鏡」にも見立てられそうだ。お芝居って、じつは「無い」虚…

新橋演舞場 『陰陽師 生成り姫』

うわ、喉ひらいてる、と三宅健の底力に恐れ入る。一年たったら進歩しているのである。三宅は安倍晴明という吉凶を読み、陰陽を見極め、境界の不確かな不可思議の世界に生きる陰陽師を演じる。冷静沈着な晴明だ。この役は3幕まで「しどころ」がない。1幕と2幕…