2022-06-01から1ヶ月間の記事一覧

歌舞伎座 六月大歌舞伎 第三部 『ふるあめりかに袖はぬらさじ』

こころざし。志は船の汽笛となって、男を女から遠ざけ、女の思うのと違う方角へ男を連れ去る。芝居の中で、汽笛は長く短く、高く低く鳴り、男を引き剥がしてゆく。 横浜岩亀楼の花魁亀遊(河合雪之丞)は病みついて行燈部屋に寝かされている。見舞うのは廓芸…

世田谷パブリックシアター 『室温~夜の音楽~』

観に行くと大抵が上下二層に割られている河原雅彦演出の舞台の中で、今回のセットが一番緊(しま)っていていいよ。内、外、二重に混ざって見えるよう、ぴしっとまとまっている。或る家の洋間の壁の続きに崖の擁壁のコンクリートパネルが素知らぬ顔でつなが…

新橋演舞場 東京喜劇 熱海五郎一座新橋演舞場シリーズ第8弾『任侠サーカス キズナたちの挽歌』

前説の東貴博がほっそりしてハンサムなので、えっ、ふーんと驚くのだった。しかし話は低調で、大谷選手でなく小谷です、それはよくあるやつさ。東の説明する「花道を通ってもいいが台詞喋っちゃだめ、ただ通るだけ、『口パク』に音効つけます」っていう、新…

CINE QUINTO 『シェイン 世界が愛する厄介者のうた』

シェイン・マガウアンはまだ60歳なのに、よれよれの折れそうにかよわい老人に見え、年来のポーグズファンの私はショックの余り大風に吹き飛ばされたような気持になる。シェイン、こんなになっちゃって。でもさ、この「吹き飛ばされたような感じ」は、シェイ…

Bunkamuraル・シネマ 『さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について』

上司の腹の、やっと塞がった赤紫の傷口に、白い軟膏を塗らされる。煙草会社のコピーライターであるヤーコプ・ファビアン(トム・シリング)は、そんなことまでやったのに、馘首を宣告される。この、理不尽なものを親切心から引き受ける行為いろいろが、何か…

PARCO劇場 パルコ・プロデュース2022『てなもんや三文オペラ』

マック(生田斗真)、とても大きな役だ。そして、とても重い役である。『三文オペラ』の「マック・ザ・ナイフ」でありながら、太平洋戦争の南方からの帰還兵で、鉄くず盗賊「アパッチ」を率いる向う見ずな男でなければならない。戦地から帰ってきた男たちは…

フジフィルムスクエア 『写真家・平間至の両A面アー写/エー写』

んー。ワカラナイよぅとしゃがみこみたい気持ち。会場の、入り口に向かって左手に、ミュージシャンの写真が並び、右手には写真館で撮られた、市井の人々の写真が隙間なく架かる。『写真家・平間至の両A面アー写(アーティストの写真)/エー写(営業写真館の…

Bunkamura シアターコクーン COCOON PRODUCTION 2022/NINAGAWA MEMORIAL『パンドラの鐘』

古代と未来の双方から掘り進めたトンネルが、薄い刃物一枚の厚さに近づき、ふと入れ替わる、スリリングな戯曲と、むきだしの舞台にいびつな白い柱を立てて、荒野のようで墓のようで、内側のようで外側のように見せる演出は、すごく面白い。安全。安心。でも…

土門拳記念館 特別展 木村伊兵衛生誕120年記念 『木村伊兵衛と土門拳 ―「瞬間」と「凝視」の好敵手―』

あのー、写真展の宣伝写真、三堀家義が撮ったこの写真面白いね、「『カメラ』誌の合同審査をしていたころの木村と土門」(1954)。 ちょっと背の低い、がっちりしたA字型のシルエットの土門拳は、何かに怒っていて、S字型にはんなり立つ木村伊兵衛に向かって…