2022-07-01から1ヶ月間の記事一覧

ヒューマントラストシネマ渋谷 『エルヴィス』

時間軸をいくつも並行させたり、きゅっと束ねたり、画面を割ったり、バズ・ラーマンはいくつもの書体で小説を書く「実験の人」みたいだ。畳み掛けて強調するのがとても上手。エルヴィス・プレスリー(オースティン・バトラー)を世界的なスターに押し上げた…

Bunkamuraル・シネマ 『魂のまなざし』

木桶の上で白い皿をこそぎ洗う音、大きなたらいの水を家の表に空ける音、モップで床を「磨る」音、敷物をうち振る音、髪をブラッシングする音、ベッドに入る衣擦れ、鉛筆を素早く動かす音、全てのものに音があって、それはこう囁いているみたいだ。(シャル…

下北沢駅前劇場 TRASHMASTERS vol.36『出鱈目』

中津留章仁、劇作家、49歳。えええー?芝居は手練れらしく4層ほどの絵巻物、又は4層の立体紙芝居のように作られ、進めば進むほど葛藤が深まるように設計されてはいる。とある地方都市、x市の市長広末孝雄(カゴシマジロー)は、沈みゆく市を活性化するため、…

新国立劇場オペラハウス 2021/2022シーズンオペラ クロード・アシル・ドビュッシー 『ペレアスとメリザンド』

このオペラを観る前に、予習としてペーター・シュタイン版(1992)を観た。あそこでは勝手に結婚したゴローに対し、アルケル王が、(我々は)運命の片側しか見えぬといっていて、それが芝居全体を通して一部分が常に覆われているという演出に適っていた。こ…

新国立劇場 小劇場 『M.バタフライ』

愛って幻影かもだなー。と思って劇場を後にする。芝居だって幻影だ。二人の人間をすれ違わせたまま置き去りにする。陽炎のように幻影がいくつもいくつも立ちあがり、『M.バタフライ』を形作ってゆく。1983年にフランスで発覚したスパイ事件に想を得て、「征…

本多劇場 オフィス三〇〇 『私の恋人beyond』

えー、脳?渡辺えりとのんのアフタートークを聞いて、吃驚するのであった。そういえば、そういうちいさい塊が、下手(しもて)の方で見えた気がするなー。「わかってほしい」というよりも、「わかられたくない」と自己を韜晦する、アングラの魔術のような手…