2023-03-01から1ヶ月間の記事一覧

東急シアターオーブ ミュージカル『マチルダ』

世の中にうすーく広がる、「こどもってやっかい」という空気。主人公マチルダ(三上野乃花)は、その、こどもを覆う気配(世界中の子供が、実はそれに気が付いている)と戦う。 マチルダを「ぼうず」と呼び、厄介者の最低な奴と扱う父ミスター・ワームウッド…

東京芸術劇場シアターイースト 『カスパー』

「統一と正義と自由」「我らは皆で兄弟のごとく」、というようなフレーズを持つドイツの歌——ドイツ国歌が、傷だらけのSP盤から流れてくる。動けない病気の子のような、清らかな視線を持つカスパー(寛一郎)は、カスパーたち、あるいは黒衣たち(王下貴司、…

PARCO劇場 PARCO劇場50th Anniversary シリーズ PARCO PRODUCE 2023  ミュージカル『おとこたち』

ジャンル負けしてる。ミュージカルの海は広く、深いねえ。熱い紅茶に角砂糖を入れると、あっという間にほろほろ崩れるように、2014年に観たストレートプレイ『おとこたち』のいいところが、さぁっと溶けてしまう。うーん、前半、鈴木(吉原光夫)の世界への…

シアター風姿花伝 パラドックス定数 第48項 『四兄弟』

四兄弟は、暴虐の父をころすことで、隷属の苦しい状態から抜け出る。最初は暴力、その暴力を否定することはできない。ソビエト。共産主義。レーニン。あっそうかふーんと発見があり、そこが目からうろこ。レーニンやスターリンやフルシチョフは暴力から生ま…

東京建物Brillia HALL 2023年劇団☆新感線43周年興行・春公演 Shinkansen faces Shakespear 『ミナト町純情オセロ 月がとっても慕情篇』

パラレルな感じ?シェークスピアと映画みたいな50年代と、こちらから眺める現代とが、悲劇の起こる「島」の周りを三重に、見えない線でぐるぐる巻きにする、沙鷗組の亡くなった組長の妻(アイ子=高田聖子)が、イアゴーと同じくらい非道い奸計をめぐらし、オ…

明治座 明治座創業150周年記念前月祭 『大逆転!大江戸桜誉賑 だいぎゃくてん!おおえどかーにばる』

松平健の、体幹はしっかりしてて安定してる。はー、腰がキマッテルってこれね。と思う。どんな俳優でも、たとえ鶴田浩二でも、腰のキマらないひとは映画で「いい者」に映らない。けどさー、今日松平健は、目測を誤って、カラミに刀を当ててしまった。(あっ…

渋谷TOHO 『Winny』

俳優に水洩れがない。皆集中し、きっちりこなす。画面手前に映りこむ、脇役の少壮弁護士浜崎(和田正人)の、パソコン画面を畳む手つきすら充実している。すごいなー。ポッキーを食べるプログラム開発者の主人公金子勇(東出昌大)、法律用語を台詞の地模様…

KAAT神奈川芸術劇場〈ホール〉 KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『蜘蛛巣城』

蜘蛛の巣にかかった男や女。黒澤明がなぜ自分のマクベスにその名をつけたかよくわかった。夢、野望、功名、どんな動機でも、蜘蛛の巣に魅了され、虜になったものは逃げられない。昏い運命に捕食されるのを待つ。そしてまた、人々を喰らう運命は、脆く儚く、…

TOHOシネマズ渋谷 『フェイブルマンズ』

サム(ガブリエル・ラベル)の母ミッツィ・フェイブルマン(ミシェル・ウィリアムズ)が笑いながら、戯れに葉をつけた若木につかまり、木は左右に大きく反って撓む。あれ、サム――スティーブン・スピルバーグだと思うのだ。折れそうな程傷められる少年。後半…

TOHOシネマズ渋谷 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

エヴリン・ワン(ミシェル・ヨー)は夫のウェイランド(キー・ホイ・クァン)と共におんぼろなコインランドリーを経営している。税金に監査が入り、彼女は自分の申告を見直さなければならない。経費には「カラオケセット」がのん気に計上されている。(交際…