新橋演舞場 松竹新喜劇二月特別公演 『駕籠や捕物帳』『大阪の 家族はつらいよ』

まず、「松竹新喜劇二月特別公演」のパンフレットの表紙が、すーごくかわいい。ゲームに出てくる小道具が、すべて和物、といった体(てい)。法被や扇やお城がならび、芝居に出てくる烏賊や章魚がキュートな点々の目を見開き、一つ一つの絵柄はオレンジ色の…

世田谷パブリックシアター 『メアリ・スチュアート』

森新太郎演出で、がっつり稽古しましたという3時間15分。若い三浦涼介(=モーティマー)に、はっきりその効果が見て取れる。三浦の声は伸び、身ごなしは軽い。カンパニーの中で、一番いい声が出ていたと思う。だが、最初にメアリ・スチュアート(長谷川…

シアタートラム 『少女仮面』

黄色に赤のストライプのコーンが4つ。舞台の上はイントレだの脚立だので雑然としている。空き瓶回収の折りたたみボックスもあちこちに点在する。コーンの片側には立ち入り禁止のバーがひっかけられているが、バーの反対側は迷子のように地面に斜めに降りて…

シアターコクーン 『七転抜刀!戸塚宿』

一瞬の爆笑のために、すべてを犠牲にする。というのが、わたしの明石家さんまのイメージだ。その場の大きな笑いがほしくて、見送ってしまったオファーや企画、実人生のあれこれが、いくつもいくつも灯ろうのように流れてゆくのが見える。きついな。だが、「…

東京フォーラムホールA 『AN EVENING WITH CYNTHIA ERIVO』

足元が透けてる階段を、お上りくださいと言われたとたん軽いパニックに陥る高所恐怖症。東京フォーラムホールA、広い。 上手と下手のスクリーンに、AN EVENING WITH CYNTHIA ERIVOと読める。マシュー・モリソンと、三浦春馬の名前もある。場内にはサックスの…

渋谷TOEI 『カツベン!』

なんか『雄呂血』(1925)すごかった…。っていうまんまと映画の術中に嵌った感想でごめんなさい。1915年、京都のマキノ省三(山本耕史)から10年後の関東の二番館へ、物語がのんびり進む中、今思い返しても、エンドロールの右下隅の『雄呂血』が、頭の中でま…

穂の国とよはし芸術劇場PLATプロデュース 『荒れ野』

団地の狭い一室。壁のペナント!世界地図!カラーボックス!サイドボード!どういうこと?時が止まっているよ。まんなかに電気炬燵が一つ、ベランダに出るガラス引き戸は汚れている。引き戸の手前には、ピンチハンガーのピンチに留められたままの洗濯物の下着…

二兎社公演43 『私たちは何も知らない』

雑誌編集って遠い。でも、ツイッターは個人発行の「zine」に似ているような気がする。そう考えると、「青鞜を編集」というのもちょっと身近に感じられるのだった。 青鞜の盟主平塚らいてう(朝倉あき)、美術の才能のある尾竹紅吉(夏子)、事務を統括する保…

岩波ホール 『リンドグレーン』

大きな窓の前に据えられた仕事机、白いカーテンの向こうに緑がうっすら見える。後姿の老年女性――作家アストリッド・リンドグレーンの手元が映り、「アストリッド 誕生日おめでとう」と書かれた子供のファンレターの上を、アストリッドが指先で二回軽くたたく…

めぐろパーシモンホール 大ホール 『THE PIANO ERA 2019』

古式ゆかしいジャズ・ヴォーカルをたくさん聴き、それからおもむろにカイル・シェパードの曲を聴くと、 (なにがあった) と、吃驚するのである。今まで自明であったはずの「曲」、「メロディという物」が剥がされ、時計の中の精密な機構が見えちゃってる感…

KAAT神奈川芸術劇場〈ホール〉 KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『ドクター・ホフマンのサナトリウム〜カフカ第4の長編〜』

人差し指の指紋の渦を、一人の男が歩いてゆく。強い向かい風に帽子を押さえ、前方は感知不能、両脇は背の高い目隠しに視界を遮られている。いやなこと、困ったことが次々に起き(女の人が絡んでいることも多い)、結局彼にはいつも「現在」しかない。にもか…

小倉城天守閣再建60周年 『平成中村座 小倉城公演』

黒-白-柿の中村座の定式幕とおなじ配色の小さいのれんが、劇場前の売店の上に一列に並び、風に吹かれてお客を手招きする。甘酒、コーヒー、お弁当、シャンパン、シャンパン売り場の人は蝶ネクタイをしている。後ろを振り返るとそこが平成中村座だ。櫓には紫…

たましんRISURUホール(立川市市民会館) 大ホール 『柳家小三治 秋の会』

ほそいほそい三日月が、ホールのガラス壁越しに、ちょうどころあいの場所に出ている。その斜め上に星がひとつ光り、月とつよく引っ張り合っているように見え、夾雑物を許さず均衡をたもって成立している。絵のようですね。 今日の座布団は薄め、ふかふかの座…

世田谷パブリックシアター 『終わりのない』

個にして全、全にして個。オデュッセウスの「都合二十年」に及ぶ長い帰還の旅。一人の少年が、凍りついた一歩をどう踏み出すかの物語。 この三つがうまく重ねあわされSF的に進行する。と、だれもかれもそう思っている芝居だが、「そこじゃねー。」と小さい声…

serial number 03  『コンドーム0,01』

脚本は手堅い。役者もきちんと演じる。結果おもしろい。 なのに、文字が話し言葉になるところで、めっちゃまずいことが起きていると感じる。例えば、「え。でもさ。」という言葉は、はっきり「芝居の台詞」として発せられる。言ってみれば空間に穴がない。風…

恵比寿ガーデンホール 『Live Magic』 2019

曇り空のエビミツ、ついふらふらと、ラベンダー色のマニキュアとか買うのである。今年のライブマジックは、おっとりした人工衛星の心持で、つーと見学した。 まずバラカンさんのオープニングのあいさつ、13:00の8分前。8分できっちり、テキーラベースのスペ…

下北沢特設テント 唐組・第64回公演『ビニールの城』

『ビニールの城』、これ、「女って何か」「他者って何か」っていう話かなあ。 昔々、「わからないこと」「不条理なこと」を皆、女のせいにしていた時代がありました(『イヴの総て』をご覧ください)。男たちがビニールの包装越しに出遭うビニ本の女、モモ(…

武蔵野市民文化会館小ホール 『Dreamers' Circus』

流木を4本、交差させて組んだ束(つか)に、電球が仕込まれてかがり火のようになっている大きい照明が四つ、舞台上にランダムに置かれ、舞台前面にはまつぼっくりが点々と落ちていて、一つは小さなかわいいケージに入っているし、上手(向かって右側)には小…

彩の国さいたま芸術劇場 『蜷の綿 ―Nina's Cotton―』

ニーナ(たち)の語る台詞。 「その世界の中には、あなたとわたししかいない」 きびしく、かっこいい。一人の人間の心の中の分割された一つ一つをニーナ(たち)と男(=壮年、内田健司)で象徴し、ニナガワの心、心象、出来事をそれぞれ描き、結び合わせる…

東急シアターオーブ 『ジーザス・クライスト=スーパースター in コンサート』

遠藤周作のキリストの評伝は、確かキリストの死で終わっていて、そこから先は「信仰」の問題である、と言ってたような。『ジーザス・クライスト=スーパースター』は「信仰」ではなく、一人の男の苦悩の生涯を扱っているから、同じ形を取っているのだろう。 …

渋谷CLUB QUATTRO  『ホットハウスフラワーズ』

hothouse flowers 1.plural of hothouse flower えっ温室育ちのお姫様たちって意味ー。と、改めて驚いたところでクアトロ着。 くだけた格好の、或いはすこしゴージャス風味の服で、アイルランド人の人々が会場のそこここに散見される。今日のライヴはアイ…

東京芸術劇場 プレイハウス NODA・MAP 第23回公演 『Q:A Night At The Kabuki』

市松人形のように切りそろえたおかっぱ頭をゆらゆらさせ、ひとつ、ふたつ広瀬すずが台詞を言うと、唇がまるで手塚治虫の描く王女様のそれのように光っている気がする。分厚い髪の間から覗くあごは白く、首筋は可憐に細い。まるで「乙女心」に服を着せたみた…

新国立劇場中劇場 『渦が森団地の眠れない子たち』

藤原竜也、声嗄れてるやん。と、心の温度が零下にまで下がる。声がちゃんと出てる、その声に表現力がある、芝居ってそこからじゃないの。例え野田秀樹だったとしても、声嗄らしてたら評価しない。今日は二階の最後列だったのでなおさらだ。声がしゃがれてい…

下北沢 駅前劇場 ふくふくや第20回公演 『こどものおばさん』

頭でっかちに考えると、「ああ、セックスワーカーね。」とクールなくせに、よく知りもしない人がフーゾクで働こうとすると、全力で止める。とても矛盾した、価値観の揺れてる自分。私を含めた世間の揺れを映して、この芝居の「トルコ嬢」の述懐も海の上の艀…

シアタークリエ 『ラブズ・レイバーズ・ロスト ~恋の骨折り損~』

心のチューニングがめっちゃ難しいミュージカルであった。シェークスピアの、何を思ったか王様と三人の学友、という多めの人数を踏襲し、そのうち二人は髪型が似て、その上途中でパジャマに着替える。混乱してしまう(見分けられない)展開だ。なぜか開演前…

明治座 『めんたいぴりり  未来永劫編』

い…逸材?博多華丸を見て仰天する。何よりもその体躯が、子供のころからちゃんとしたもの食べてましたって感じの、ノーブルな気配すらするガタイなのだ。よく分かっている衣装(松竹衣装)の人が、アイロンのかかったシャツと、サスペンダーの附いたズボンを…

赤坂ACTシアター A New Musical 『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』

板垣恭一がんばった。日本の演劇が「長らく目を背けてきた」貧困と性差別をテーマに脚本を書き、アメリカに曲の三分の一を発注し演出した。題材はアメリカの19世紀の紡績工場、差別されてきた女たちを主人公とする「現在進行形の」(問題は大して変わってな…

サンパール荒川大ホール 『桃月庵白酒・柳家三三 二人会』

台風の風がびゅうびゅう、近所の蕎麦屋さんは落語会に行く人たちで満員。サンパール荒川、緞帳は古いが座席もトイレも新しくてきれいだ。 幕が上がると、ほいほいほいと軽やかに桃月庵あられが現れてふくふくに盛り上がった黄色い座布団にすっと座る。 「い…

CINE QUINTO シネクイント 『人間失格 太宰治と3人の女たち』

マリアナ海溝。世界で最も深い海溝、深さ一万メートル越え。 太宰と海溝と何の関係があるかと聞かれれば、正直ないわけだけど、太宰を扱うならばマリアナ海溝チャレンジャー海淵くらいの深さに、「傑作への渇望」がないとだめじゃない?この映画で唯一それを…

新宿武蔵野館 『ある船頭の話』

ふーん。オダギリジョー、一撃で日本映画の「なあなあの背骨」折ったね。そのことでオダギリジョーが何としてもこの映画を撮りたかったのが何故か、わかる。撮影クリストファー・ドイル、衣装ワダエミ、音楽ティグラン・ハマシアン。村上虹郎、川島鈴遥の若…