スズナリ『SEX,LOVE&DEATH』

LOVEを、SEXDEATHが挟んでいる。それぞれ1996年、2000年に初演された『13000/2』と『スモーク』、今回新たに書き下ろされた『死んでみた』の三本を、オムニバス形式で上演する試みだ。どれもケラリーノ・サンドロヴィッチの作品である。出演するのは、ナイロン100℃の若手の俳優のほか、おなじく若手の注目される俳優たちだ。

 『13000/2』は、ファッションヘルス(だと思う)が舞台。かっちり作った店内に、店の女たちのショーケースがしつらえられていて、中で物憂げに身づくろいする彼女たちは、深海魚のようにひっそりしている。そこだけ音が消えるみたいだ。ケースの外で男たちはひどい目にあい、ケースの中では没義道なことが起きるのだが、それすら乾いた笑いにかわってゆく。

 二つ目の『死んでみた』は、周囲(愛)から疎外されている男が、それと気づかずにいる話。セリフの割り方がかっこいい。そしてそれを一気につなげるところがさりげなくてクール。妻(白石廿日)の再度の登場が、作品の世界を大きくしており、また、収斂する役割も果たしている。

 『スモーク』は、2000年ごろ放送されていた「あいのり」という番組がモデルになっているらしく、実名で登場する。男女が車に乗って旅をするバラエティらしい。目的は恋愛だ。この芝居の感じだと、大嫌いだけどつい見てしまうような番組だったようだ。海外のホテルで、タバコが吸えずイライラする日本人テレビ関係者の人々。みな、ひどい報いを受ける。

 ケラの芝居では、人物のセリフが矛盾していて、それを相手に指摘されたり、されなかったりし、なにかひんやりしたおかしさを生む。ここでは矛盾が、時間の経過でゆっくり気持ちが変わったように見える。惜しい気がする。

どの俳優も自分の役柄をしっかり演じている。若手というより、経験を積んでいる役者である。定越さんの娘(吉牟田眞奈)とケータイにはびっくりした。『スモーク』の田中(福原冠)とサチ(菊池明明)とのやり取りが好きだった。