ピーター・バラカンのPing-Pong DJ Special ゲスト:濱口祐自

 訛りがひどくて聞き取れない、そんなこと、今の日本でありえない。けど、濱口祐自を見ていると、さようしからばの侍言葉でないと、他国のものと意思疎通できなかったという幕末のことなど思い浮かべてしまうのであった。

 ゆっくりうねる、紀州勝浦のイントネーションに気を取られているうちに、意味がすっかり飛んでしまい、でも濱口祐自は笑顔になりかけながら話し続けていて、侍言葉で気を張っているやっぱり田舎者の私は、わけのわからないコンプレックスで気が縮こまるのである。自由人だなあこの人。他所の藩士というよりもっと自由。脱藩浪人みたいだ。

 マグロ漁船に乗っていたことがあるそうだ。そしてパプアニューギニアに行ったのだって。勝浦で竹を伐ってライブハウスを作り、十二年ほど店をやっていた、とか、時々東京に来てライブをやっている、とか、ホームページに書いてある。どんなことが書いてあっても、信じられるね。

 ショパンに影響を与えたアイルランドの作曲家ジョン・フィールドの、夜想曲の五番がいいと、紀州弁でいう。そして、演奏者はミヒャエル・なにがし(覚えられなかった)がいいという。くわしいのだ。

 今晩はミニコンサートで、ショーケースのようにギターを演奏した。カヴァー曲、自作の歌、スライドギター、ブルース。聴いていると、体の中の暗い井戸に、砂が一粒、光りながら落ちていくような感じがする。スライドギター(ギターのネックの塗装はきれいにはがれ、その修練が思われた)になると、うねる音、指の管にひびく割れた音、かっこいいフレーズが続く。かっこいい!とかけ声がかかると、「最高のほめ言葉やの、」とのん気に応え、それも、かっこよかった。九月八日月曜日インターFMバラカンモーニングに出演、必聴だよ。