東京ドーム ポール・マカ―トニー

 アリーナの後方に、15メートルほどのタワーが3つ立っていて、そのうち2つには、4段に照明がセットされている。場内に流れる新しい「今」のアレンジのビートルズナンバー。年の取り方を間違った人、間違ってない人、もうライブTシャツを着てる人、着てない人、若者、親子連れ、様々な人がいる。ストイックに舞台に背を向けて、誘導したり、チェックをする目つきするどいスタッフの口元が、BGМにあわせて、「アンドアイラブハー」と小さく動いている。黒いTシャツの4人の照明係が、次々にするするとタワーを登っていく。ステージの両脇にポールの年代記のような写真がスクロールする。

 Eight Days a Weekが始まる。半信半疑。ポールが歌っている?リバプールから出てきたあの人?ビートルズで5月の空気みたいな歌をたくさん歌ってた人?ウィングスの?ステラ・マカートニーのお父さん?ていうか去年コンサート中止になったよね?

 それは本人も気にしてたみたいで、「かえってきたよ」「有言実行」と、日本語で言っていた。

 どの曲もクオリティが高く、かつ六十年代らしく曲が短く、知らない曲がない。ポールも中盤から尻上がりに調子が良くなったように思われ、とても速く、楽しく過ぎた三時間だった。一時間くらいに感じられた。ジョージの曲Somethingのウクレレ演奏は素敵だった。ビートルズ後期のナンバーもよかったし(バンドの演奏力の高さが思われた)、ウィングスのLet Me Roll Itのキメのフレーズのギターもかっこよかった。終盤、ふと我に返ると、年の取り方間違った人間違ってない人Tシャツ着てる人着てないひと若者親子連れ、会場に来ているすべてのひとが、みなとても幸せそうなのであった。5万3千人。5万3千人が幸せって、すごいことではないだろうか。