国立演芸場 「五代目圓楽一門会」

 開演15分前に会場に入ると、もう前座のけん玉が高座に上がって一席やっている。客より早い。すごいなあ、青年団みたいだ。今日は「五代目圓楽一門会」。

 五代目圓楽という人は、「いいかい、落語家というのは世の中に要らない商売なんだ。そこのところを世間の人に悟られないようにしなくちゃならない。」と弟子に言って聞かせていたそうだ。この話がおかしくて好きだ。

 かけてある額は「喜色是人生」という素直な字、入江相政ってジジューチョーの人ではないかな。この字の素直なところが圓楽一門にあっていると思った。いつもかかっている額なのかもしれないけど。

 めくりがめくられ、鯛好の「ちりとてちん」。赤や緑に変わっちゃった豆腐が、おなかに収まりかねる所作に感心。萬橘「真田小僧」、子供の催促、子供の話にあせる父親の返事が、リアルな「たった今」に感じられる。五代目圓楽がタクシーで、間違ってやくざの偉い人のお葬式に連れて行かれる話をする圓福。と、ここで若手の人たちがかっぽれを踊る。座敷芸なんだね。揃ってる。どんどんおじいさんにお酒を注ぐおばあさんが上手な愛楽、つづいて竜楽。たたずまいがとてもきれい、あっさりして真面目な感じ。洒脱というには真面目が勝ってるけど、こういうのが江戸前というのかもしれない。常に「私」が出ている萬橘と対照的だ。豆腐屋さんが良かった。皆で当意即妙に答えを出し合う中喜利があって、兼好「黄金の大黒」、歯切れがよく明快。中喜利をさして「ああいう連中のいる長屋です」と説明してくれる。すとんと胸に落ちる。トリは好楽「ねずみ穴」。お兄さんが随分ひどい人なのだが、夢から覚めてみるとこのお兄さんがいい。なんか、地獄で仏。落語の滋味を感じるのである。