劇団民藝 『神と人とのあいだ 第一部 審判』

 「僕は大体、その時代にやる意味というフレーズは好きになれないんです。作品がよければいつの時代にも通じるものだと信じてるし、作品を時代風潮に捉われずに独立したものとして考えていきたい」(児玉庸策)

 「木下作品の現代風な舞台化があってもいいとは思いますが、民藝でやる場合には違うんだと思っています」(丹野郁弓)

 プライド高いなー。劇団民藝、創立1950年。

 たとえば『愛妻物語』(1951 新藤兼人監督)は今見ても面白いし、37歳の宇野重吉は清新でとても素敵。でも、フィルムの宇野重吉は「年を取らない」。1949年初演の『山脈』は、1978年に再演されているが、たぶん戦後の若い人たちの心に刺さったその芝居が、1978年にはさっぱり訳が分からなかったのは、アップデートがなされていなかったのかもしれない。『山脈』の観劇体験から、「作品がよければいつの時代にも通じる」というのは、ほぼないと思っている私です。 

 今日観た『神と人との間 第一部 審判』は、第二次世界大戦後に戦勝国が日本の軍国主義を裁いた「東京裁判」を扱っている。裁き、裁かれるというのは単純な問題で、真実の追求だと考えがちだけど、この法廷にはいろいろなものが付随していて、真相や真情は、芝居が進むにつれ見えにくくなる。罪状認否や忌避の手続き、日本軍の残酷な拷問とそれを語る証人のフランス人のトラウマ、罪はシーソーのように重くなったり軽くなったりする。

 民藝はベテランの俳優が多く、軍服の似合う人はいない。首席検察官の神敏将や検察官Bの境賢一がわずかに威勢がよく、伊藤孝雄に華がある。若い役者もっと育てなくちゃダメじゃない?