ナイロン100°C 結成25周年公演第二弾 46th SESSION 『睾丸』

 1968年よりあと、たぶん連合赤軍事件より前。知り合いの大学生とテレビを見ていた。大学紛争のニュースである。ヘルメットをかぶった学生が大学構内でシュプレヒコールを繰り返す。

「このとき〇〇ちゃんはなにをしていたの」

「見てた」

 見てた。うーん。小さい私はすごく残念に思ったのである。その位世の中の空気は「学生さん」に同情的であったということかな。

 1993年、学生運動の盛り上がった1968年から25年後、「セクト」で学生運動をしていた人々が再会する。セクトを率いていた七ツ森(安井順平)は事故に遭ってずっと入院しており、赤本(三宅弘城)の会社は景気が悪く、裏街道を歩いてきた立石(みのすけ)の家は火事になって、突然赤本の家に妻(長田奈麻)と転がり込んでくる。そして赤本の妻亜子(坂井真紀)はセクトの三人に愛されていた。

 紅顔の若者たちは厚顔な大人になり果てるのだが、ケラはそこへ作劇の重さを寄りかからせたりしない。七ツ森が1993年の赤本と立石を弾劾する芝居にも、七ツ森と亜子がカタストロフを迎える芝居にも(「きりよく5万」と金を出すとき、観客の私の血管の中の血が、シュウッとソーダみたいに沸きあがった)しない。25年ぶりに芝居をしようという場当たり的なロマンチシズムを黙って提示する。暗がりに高く渡された細い綱を足で探って進む。聴いているのは、カチカチと時を刻むおもちゃのような時計の音だ。

 最後のシーン、一つのまなざしがある傲岸の終焉を舞台に導きいれるが、ここ、見ない方がよかった気がする。あのまま、あの空間に知らずに紛れ込んでいる方が、シャープさは消えても、「現在」につながるような。廣川三憲、難しい役をとてもナチュラルに作る。感じいいのが素晴らしい。