劇団時間制作第十七回公演 『白紙の目次』

 まず、劇場の大きさに比して、声が大きすぎる。頑張ろうという気持ちが声に出てしまっている。頑張る気持ちは集中力に使おう。チラシにあらすじが書いてあるが、それが面白そうでなく、「テーマは『依存』。」ときちんと説明されていて、そんなことは観るほうが決めるのに、そんなセンスで大丈夫?と心配になる。

 神谷舞子(山本綾)が旅館の娘であることが、チラシを見ないとわからない。たくさん登場する女の人たちの、そのうちの一人として明快な描写がない。たくさん登場しすぎている。小説家沢木樹(はらみか)とその「マネージャー」福島栞(堀内華央里)ってなに?小説家にマネージャーっているの?声のトーンの重なりがきれいでない。二人だけの会話をみんなが聞いているのがリアルでない。作と演出が問題。

 この芝居で一番のもうけ役はすたか荘従業員池田晴菜(田中柚香)である。登退場のたびに心の色が変わり、おもしろい役だ。よく演じられていたのは舞子の夫雄太郎(田名瀬偉年)、何でも屋弓削敦(野村龍一)、雄太郎の幼馴染輪島大地(金田侑生)の三人だった。特に輪島はちょっとしか登場しないのに、逆転した世界(価値観の倒立した世界)の手触りをしっかり伝える。田名瀬偉年は芝居もいいけど、小道具とってもよかったよ。宿のカウンターに置かれた千葉県の観光案内とか、スナック菓子のスタンドとか、芝居にぴったりで胸が躍る。

バッドエンドやハッピーエンドを気にしてる年頃の人に言うのもなんだけど、脚本2500円(紙を綴じたもの)ってどうかと思う。自負するって素晴らしい、自信持ってるっていいことなんだろうが、山尾悠子の本だって2000円なんですよ。