新国立劇場小劇場 『スカイライト』(プレビュー)

 舞台を挟んで両側に階段状に客席。仕切りを取り去ったアパートの部屋。貧寒としている。右端と左端に上げ下げ窓があり、左端は四角く囲われてキッチンになっている。みすぼらしいダイニングテーブル、ちぐはぐの椅子、こたつと見まがう寝乱れたベッド、へたった安楽椅子の足元、部屋のそこここに、乱雑に積まれたり、それが崩れたりしている本。自分ちかー。

 どんなにキラ(蒼井優)が否定しようと、キラがアリスを裏切ってトム(浅野雅博)と不倫したことをすごーく悔いていることがはっきり伝わってくる。妻アリスが死んで一年、キラと別れて三年、トムはキラのアパートを訪ねる。トムは失われた可能性を取り戻そうとし、キラは悩みながら掴んだ信条ごと自分をわかってもらおうとする。愛しあっているのに理解しあえない二人、皮肉を言い、怒鳴りあい、抱きあって、もどかしい一夜は過ぎ去ってゆく。彼らの前には過去の罪と、階級差や「ビジネス」と「献身」の違いが立ちはだかるのだった。戯曲が面白くて、二人の応酬が始まると客席が息を飲んで集中する。最初にキラが自分の立場を説明しようとするところ、たぶん蒼井優も腑に落ちないのだろう、よくわからん。六年半もつきあっといて罪悪感て何。ここ、戯曲の弱いとこだと思う。しかし、キラがリネンのナプキンに顔をうずめる表情が素晴らしい。一緒に激動の一夜を戦った気になる。浅野雅博、ストーブに足つけるリアルさに笑った。もっと横柄でもいいよ。心の全てを込めた手紙を置きっぱなしにする、致命的な感じが欲しい。葉山奨之、台詞忘れちゃったの?忘れても台詞の感触があっているところはすごいが、吃音がリアルすぎる。心配で芝居に集中できません。あと、雪が冷たくまたシェルターのようで、よかった。