彩の国さいたま芸術劇場 彩の国シェイクスピア・シリーズ第34弾 『ヘンリー五世』

 吉田鋼太郎の演出って不思議だ、車のハンドルの「あそび」のように、余裕が芝居のキズを吸い込む。キズが魅力に見える。「あっ、そこ取っちゃうの?」という吃驚も、芝居の輝きを増す。「そこ取っちゃった」の驚きました。「ない」ことで「ある」のが際立ち、同時に「そこじゃない」こと、ハル=ヘンリー(松坂桃李)の成長物語であることがはっきりする。客席に入るとそこは暗く、スモークが焚かれ、函の内部にいる気持ちが迫ってくる。事実、ここは函、コーラス(吉田鋼太郎)に案内されて、英仏海峡を越え時空を越える。吉田鋼太郎の説明は観客を引きつけ、皆楽しく旅に臨む。

 映像がなー。「3Dにしてよ」とすぐ思うのだが、それって芝居だよね。冒頭のヘンリー、黒いマントが板につかず、王なのに左右に首を振って諸卿を見渡すのは、まだ王とは言えないからだろう。問題はバードルフ(岩倉弘樹)の処刑前、首を垂れてうつむくシーンだ。ここ、王ならば背を向けるはずだが、ハルはまだ「成人」してないからうつむく。「うつむく動作を立てる」。ずっとうつむきすぎ。

 ウィリアムズ(續木淳平)素晴らしい。野営の王とのやり取り、もすこしがんばって。一兵士らしく。ここ大事。王が成長する。

 フランス皇太子(溝端淳平)、眉をひそめてボールを投げてる所いい。全てが伝わる。従者(山田隼平)のボールの受けっぷりもいい。フランス宮廷のシーンで溝端はきちんと感情をつなげそこにいるが、もすこし芝居の明度下げて。つまり、おなかの中で芝居する。そうじゃないと皆溝端さん見ちゃうからね。キャサリン(宮崎夢子)の台詞から「首」「顎」と「上着」取っちゃったの?「死」と「セックス」をイギリスがもたらすって意味じゃないあれ?ちがうの?一回目のシャコンヌめっちゃまずい、意味不明。フルエリン(河内大和)の訛りがよく分からない。個人の属性?