OSK日本歌劇団 『レビュー 春のおどり』

 「客席にいる皆様にも、私たちにも、つまずいたり、落ち込んだり、それ以上に笑ったり、何気ない日常の中にかけがえのない人生のドラマがあるはずです」パンフレットから顔を上げて富士山の緞帳を見る。じんわり来るこれ。このトップスター(桐生麻耶=きりゅうあさや)の言葉を読んでちょっとうるっときているのだった。苦労してるやん。と、いきなり心を開く。今まで、見たこともなかった劇団だったのにね。OSK日本歌劇団は、調べると山あり谷ありで、一度は解散している。大変だったことがいい感じにこの挨拶に滲んでいるのだ。それはレビューが始まってからも同じだ。華やかで、設えられた桜の造花のひとつひとつが桜花の小さな爆竹のように威勢よく美しく感じられ、団員の振り付けの仕草の端々まで脈打って瑞々しい。舞台上の団員の視線が全員一丸なのに別々で、一人一人の影を負い、それぞれの光を放つ。この陰翳、この厚みがレビューという物の大事な要素だなと思った。

 なにより、初日の今日、桐生麻耶を筆頭に、舞台の後ろ隅に位置する団員まで、激しい気力が漲っていた。激しい余りに、声が十全でなかったり、難所で音を外す局面もある(惜しいっ)のだが、何だかそのキズから血が出そう。レビューは「生身」なんだという気がした。有機物のように生きているのだ。

 桐生麻耶を要とする舞扇の舞に始まり、絢爛豪華に踊りは続く。従来通りのラインダンス(みな、かわるがわる長く、長く足を上げ続ける!)に女の人にも受けるよう工夫を凝らしているし、ヴィヴァルディにはコンテンポラリーダンスの匂いがする。そして一番大切なことは、すべてが観客に「開かれて」いて、難しくないってところだ。「劇団」というより、かっこいい「桐生麻耶とその一党」と呼ぶのが似つかわしい、すばらしい、豪奢なレビューだった。