熱海五郎一座 新橋演舞場シリーズ第六弾 東京喜劇 『翔べないスペースマンと危険なシナリオ~ギャグマゲドンmission~』

 前説はフリップを持つ官房長官のギャグ。答えたくないことはスルーする間合いが巧く、東貴博は生き生きとやっている。だが、そこに女性記者の姿はない。あー、ここがめざす「昭和の茶の間」(パンフレットの作者挨拶より)って意味?エッジィなところに突っ込んでいかないんだね。もうはじめっから「アルマゲドン(ネタ元の映画)みたいな担保なしじゃあありません」と言われてる感じ。言っとくけど、今は昭和じゃないんだよ。

 毎年「熱海五郎一座」を見るたび、「なんだ、今年の方が全然面白いじゃん。去年面白くなかったんだー。」と、奇妙な感慨を持って帰途に就く。

 今年の熱海五郎一座、出色。一幕の登場人物の会話が全部面白く、そうでもない所でも――例えばラサール石井が調味料を橋本マナミに聞くシーン――役者の力で面白くなってる。自然に笑え、スポットで抜くいくつかの会話なども、よくできた四コマ漫画のように輝く。

 二幕の展開はそれに比べるととても落ちる。種明かしがもったりしていて滑りが悪く、スピードもない。ここ、演じている方は無駄に疲れるだろうと思う。役名は変わらないというやり取りとか、要らないよ。フリップ出せば?奥さんが若くてとかの楽屋落ちもいらない。鉄板だから安心だろうけど、技倆があるから関係ないし、何より「アルマゲドン」(担保なし)じゃない。

 冒頭足を組み替える橋本マナミはすごく面白く、高島礼子は一生けんめい声を張って、吹っ切れているところが素晴らしい。

 春風亭昇太の滑舌悪いセリフが、説明も全くいらない自立したギャグになっている。「滑舌悪い」という芸である。丸山優子、もっと厳しく歌下手に突っ込もう。