劇団東京乾電池 第30回下北沢演劇祭参加作品『卵の中の白雪姫』

 深緑の古びた街灯と小さい木の椅子、舞台面は木の床が出ている。上手奥の登場口から、七十年代風に髪の長い女の人がギターを持って出て来て唄う。おー。気負いゼロ。淡々と「友達のお父さん」の歌を弾き語る。こんなに肩の力が抜けてて、こんなに世界と自分の居場所をきちんと把握してて、「居方が自分」の人珍しい。媚もゼロ。山口ともこ。乾電池の女優さんだ。すごいなこの人と思ったが、台詞は歌よりぐっと落ちる。腰が決まらない。ふらふらしてる。間違ってもいた。

 ここから芝居は始まる。乞食(吉橋航也)が街灯の下に来る。食事を乞食の傍らで取り、その飢えを見ることで「おいしさ」を感じようとする老紳士(高田ワタリ)と給仕(島守杏介)もやって来る。全ては自分の魔力だと言い張る魔法使い(はにべあゆみ――声大きすぎ)とその小間使い(鈴木美紀)。市長さん(西村喜代子)と泥棒(青木誠人)、そして白雪姫(中井優衣)の卵を運ぶ卵売り(河野柑奈)。

 「白雪姫の卵」、なんか素敵そうだが実体がわからない。けれど人々は300年もそれを待っていた。希望、夢、願い、憧れ。そういうものを託された卵は、実は災厄を運んでくるかも。いやそうじゃないな。「なにをはこんでくるかわからない」のだ。カオナシが突然変容するように。

 今回、はにべを除いて声が割れている者はいない。それぞれの台詞が、突いたトコロテンの先端がめいめい好きな方を向いているようにばらばらだ。それがナンセンス?前の台詞に接ぎながら「果てしない一本のトコロテンの筋」のように作ったほうがいい。

 誰も相手のセリフを聴いてない。芝居が腑に落ちてない。柄本明、出ている人誰もこの芝居解ってる感じしないけど?