渋谷HUMAXシネマ 『グッドバイ 〜嘘からはじまる人生喜劇〜 』

 小池栄子優勝。小池栄子がテープを切らんとするその瞬間まで、隣を大泉洋が顎を振ってちらちら小池を見ながら力走する。

 扁平の麦わら帽をかぶり、オレンジ赤のワンピースを着て路地を歩いてくるキヌ子(小池栄子)の美しさ。映画「おてんば娘の大冒険」の画面に見惚れるその口元に、無邪気な白い歯が真珠のように並んでいる。「損させないってほんと」と目はきらきらひかり、箪笥を持ち上げた時には素晴らしいと思った。助演の女優もいい。日本の女優はきっちり仕事できるのに、「させてもらえてない」と感じた。少し猫背の「夢二体型」を「すてき」ではなく「怖い」と思わせる緒川たまき、しゃっきりしている水川あさみ、訛りの浮かない木村多江橋本愛は愛人の中で、ひときわ美しく撮れてないし、台詞が硬い。青いターバンが似合ってない。スタッフ・監督の一考を要する。青木さん(緒川たまき)のCGは生々しくて心が冷め、大泉洋の迫るシーンは陽気さがなくて長すぎる。必要?作家の連行(松重豊)に「(あの女を)仕留めたのか」と聞かれ、「仕留めてません」と返す台詞がもくろんだとおりに働いてなく、間抜けで冗長なやり取りになっている。あと、採掘場のメイクが残念。髭なのに、バイトの若い者みたいにしか見えない。

 大泉洋小池栄子の向こうを張るべくがんばった。妻に別れを切り出された後など、存在そのものが青くなっているように見える。ルパンで連行にいう「別れたいです」の一言は、ここだけは血を吐くようにマジだった方がよかった。

 『八日目の蝉』の小池栄子は、あの役を「通しきった」とこがすごいと思ったけど、このキヌ子は抜きんでている。大泉洋は、これからも小池栄子と一緒に作品を作りたいといっていた。それならこのペース(かなり早く、きつい)で走り続けて、再度合流しなくちゃダメである。小池栄子は、飛ばしてたもん。