Pカンパニー 『京河原町四条上ル近江屋二階――夢、幕末青年の。』

 京都だねーと、なぜか一見してわかる二重を組んだ舞台、階段に明かりがあたっている辺りを見るとどうやら赤いみたい。天井のサスにも赤い色が反射しているもん。それが京の橋と血塗られた幕末をすぐイメージさせる。二重の台は高さが揃っていて、死んだ人たちのように重なり合っているのだ。功山寺(山口)にある万骨塔を思い出した。主に明治まで生きなかった志士の名を刻む、悔恨と憤懣のこもる塔である。赤い二重の奥に、語られないそれがうずくまっているような気がする。この装置、いろんなことを思わせるのにとてもシンプルでいいです。

 ところが。客席上手のドアから登場する女(案内役、木村万理)とその連れの髭(森源次郎)の衣装がひどい。案内役は臙脂のレザージャケットにジーンズ(ぴたぴた)にヒール、髭はやっぱりレザージャケットに拾って嵌めたようなストーンズのあのマークがついている。ぜーんぜん感情移入できないし、どの位相にいる人なのか、いやそもそも現実にいるタイプとは思われない。しかし話はどんどん進んでしまう。待ってー。「伯父貴」この言葉、今息してる?

 案内役とともに中岡慎太郎(林次樹)の過去に飛び、襲撃者の若者(松田健太郎)のつましい家庭を見せ、二重を積み上げていくようにあの近江屋二階の高みに到達する。「人間は利得でしか動かん」「約束は破った時から嘘になる」軽い感じの作劇かと思ったら、この二つの台詞がとても重い。ひっそり控える悔恨と憤懣が、身じろぎしたような気がした。一シーンごとのつながり、方向性が鈍く、てっぺんの近江屋、そして、その上で踊る人々の所まで行きつけない。中岡、実物と似てないけどよかった。中学の時、図書館にあった唯一の戯曲が『真田風雲録』だった。今日はその作家の芝居を観ることができて、感想文を書いた。