youtube  二兎社 『立ち止まる人々』

 3月28日、29日に池袋芸術劇場シアターイーストで行われるはずだったドラマリーディング公演が、ネットにあげられている。只なの?お金払うのに。芸術ちゃんと「補償」されてほしいよね。

 いろいろおもしろかったんだけど、中では『鷗外の怪談』がすーごくよかったと思う。初演から六年たって、あの頃よりも「権力と個人」が緊張しているということを差し引いても、鷗外林太郎の西原やすあきと、賀古(鶴所)の竪山隼太の切迫した演技はスリリングで、この芝居観たことあるのに、行方の知れない黒い水を追いかけているような気持になった。国家の陰謀を止めようとする林太郎。その林太郎の栄達を支えてきた友人、賀古がそれを抑える。話の先が読めない。落としどころがわからない。いいじゃんか!と画面(精一杯大きく引き伸ばして観ました。)にぎゅーとひっぱられる。竪山隼太は火打石をカチカチ打ち合わせて火花だしているみたいだし、西原やすあきは火花に耐えているじっくりした炭みたいだ。西原はこのほかにも『新・明暗』の皆に嫌われる小林というジャーナリストをやっている。火花のがまんだけじゃなく、繊細な台詞の受け取りに気を付けて。竪山隼太ともすこし勝負しないとさー。記者小林に絡まれる人妻、原田樹里。キャラメルボックスで観た時より段違いに台詞がはっきり聞こえるようになったが、声がひらひら(おもちゃの笛みたいに)翻って聞こえ、内実(内心)を伴っていない。「私だって結婚前の津田(夫=伊島空)をしっています!」という時の「私だって」は、ひらっと体から浮いちゃってます。『ら抜きの殺意』、台詞だけでふうんと説得される。副社長(安藤瞳)の話に出てくるお花の先生の造型がしっかりしていて、強いハートでやり抜かれており、お花の先生見える。対する土井志央梨、リーディングとはいえ、ケータイがよく見えないぜ。