アマゾンプライム 『わたしは、ダニエル・ブレイク』

 大工のダニエル・ブレイク(デイヴ・ジョーンズ)は心臓病で働けない。国から支援を受けようとするが、国はまるで何とかして補助するまいと決意しているかのようにダニエルを阻む。高齢のダニエルには、オンラインで書類に書き込みすることからして難しい。決してあきらめないと思うダニエルだったが、ふと知り合ったシングルマザーのケイティ(ヘイリー・スクワイアーズ)と同じく、その生活は追い詰められていく。ケイティは貧しい人(ケイティも国の補助を受けられないでいる)に食糧を供給するフードバンクで、突然トマト缶を開けて中身を手づかみで食べる。乏しい食事で子供に充分食べさせるため、自分は飢えているのだ。空腹の余り「何をしているのかわからなくなった」このシーンは、何が起きたのか咄嗟にその場の誰にもわからないという方法だと思うんだけど、うまくいってない。びっくりしない。まずいよ。脳内で「じぶんのこと」として再生できないもん。ケイティの娘デイジー(ブリアナ・シャン)はフードバンクに行ったことを友達に知られてしまう。夜、母親のベッドに行って打ち明ける時、その体は冷たい。ずっと眠れなかったんだなあ。ここ、いいよね。それに娘が美貌であること、息子が多動なことから、ケイティの人生が垣間見える。説明なしで素晴らしい。

 この飢えているシーンからの成り行き、ITが扱えないダニエル、はらはらして観ているだけで怒りがふつふつ湧いてくる。

 遂にダニエルは爆発するが、その姿は名乗りを上げる中世の騎士のようだ。施しを受けようとしてるんじゃないんだ、わたしは一人の市民だ、その怒りは、ひとり十万円の補償すらなかなか受けられないでいる私たちにも共通している。