オフィス3◯◯ 「女々しき力プロジェクト~序章『消えなさいローラ』」

おんもしろかったー。と劇場を出、この『消えなさいローラ』がたった三日間しかやらないことを考えると、煌々と電信柱の明かりに照らされた侘しいアパートの一室が、あっと言う間に吹き飛ばされる砂の一粒のように思われてくるのだった。儚いねぇ。この芝居は三日で終われるようなものではないのだ。課題は多く、謎は深い。

 テネシー・ウィリアムズの『ガラスの動物園』を下敷きに、芝居はすらすらと始まる。渡辺えりの一人ぼっちのローラのトーンが、一ミリも外さない。充分な深みと、ローラの内実を伴っている。ローラ?ローラです。このモノローグを聴くだけでも、芝居を観に来た価値はあった。しかし、後半に向けてのブラックなお茶会のシーンや、尾上松也がだんだんに職を変え、ローラと母に迫るシーンがやや冗長。練られていない。尾上松也はすこし台詞を歌うが、歌っちゃだめ。歌うとビニールの上を水滴がころころ転がるように、心に沁みない。松也は葬儀社社員であり探偵であり、そして次第に不在の男そのものに見えてくる。別役はここで立ち止まらない。ローラにとって待つこととはなんなのかを究めようとする。待つ時には、何かをしていてはいけない。それは一生けんめい何もしないことなのだ。ローラ、職もなく恋人もなく、生きる術のない、この世の役割から外れた女。終幕芝居は反転し、もう一人のローラを照射する。居場所のないもの、どこにもいられないもの。しかしその者はローラに消えなさいと命じる。それは生きよという声に聞こえた。

 尾上松也、いっちゃなんだがめっちゃいい役である。まだまだできそうだ。歌に入るところが自然でとてもよかったが、今日はハモリが全然うまくいってなかった。渡辺えり、母とローラがかさなるところがスリリングでない。