吉祥寺シアター 演劇集団円 トライアルリーディング公演 『虫たちの日』

 うっ観客席で私けっこう若手、やばいぞ円、なんとかしないと。

 ほぼ直線で出来た木の椅子2つ。座面は平ら、座りにくかろう。椅子から見て中央寄りにそれぞれスツールがある。一つには新聞が載っている。下手寄りにはめいめい譜面台。窓のような大きさで、四角く明かりが床に2つ当たる。

 橋爪功と言えば、雑誌か何かで車運転してても交差点に差し掛かるとキレイな女の人いないかなーって目で探しちゃう、と冗談のように言っていたが、その後骨董通りと246の交差点で、本当に車の中から外を見ていたのでびっくりした。という思い出が。

 正面スクリーンに白抜きで、夕暮れの茶の間である、というようなト書きが映し出される。煤けた電灯。古い茶箪笥。

 上手から橋爪功(男1)がトイレットペーパーが切れた、とか何とか云いながら登場し椅子に座る。このひとことで、あーもう安心。と、何かやわらかい生地でできた葉っぱの上に座ったような気持になる。奥さん役の女1(福井裕子)も現れ、スムーズで含蓄あるやり取りをする。はーい安心。ゆったりとやり取りに浸る。夫はトイレットペーパーは補充しないし夕食の支度をしている奥さんに電気つけてくれというし、洗いものが増えるのにお小皿使ってお漬物食べるのである。玄関を誰かが訪うのに誰もいず、風の音がするところでなにか急に不穏な気配がする。今目の前で繰り広げられている日常以外の、日常は絶滅したのではないかという感じ、この2人が地球最後の2人なのではないかというかすかな不吉さだ。

 円のこのリーディング、とてもいいと思う。初演の時の中村伸郎より、橋爪功は4つ年上、こうした試みなら、「たくさん演れる」のではないだろうか。