PARCO THEATER OPENING SERIES 『獣道一直線!!!』  

 宮藤官九郎、早く役者やめて執筆に専念したらと思っていたが、この芝居を観て心が変わったよ。虚構と現実の間の断崖に身を伸べて、あっち岸とこっち岸をつなぐおさるの橋(ドリトル先生)みたいになってる。声がリアルで、信頼できるインテリジェントな音である。その上をどすどすと三銃士と池谷のぶえ山本美月が何度も渡る。他のものが皆好き勝手やっているのに、ひとり宮藤官九郎は自分の役割をきっちり認識し、やり通す。自分の脚本とはいえ、えらい。ここでクドカンが踏ん張らなかったら、この芝居はばらばらになってしまったはずだよねー。

 交際相手に多額の保険金をかけ、金を貢がせては殺したらしい女、苗田松子(池谷のぶえ)。ドキュメンタリー映画作家関(宮藤官九郎)は真相を探ろうと松子のいる福島の練り物工場を訪れる。そこには彼女と関わった男たちの関係を再現する3人の役者(生汗勝々=生瀬勝久、池手成芯=池田成志、古新田太=古田新太)がいた。

 「オーディション会場」にカツカツとパンプスの響き渡る靴音。しかし現れた女(おばさん=池谷のぶえ)は意表をつく。ここ笑った。あの筋肉の附いた傍若無人な足(その肯定感!!)に、その後の展開の総てがあるみたい。池谷の自信たっぷりの張った声に、くるくると絡め取られてゆく。CASE5の交通事故シーンはもたもたしてちっとも盛り上がらない。河原雅彦、乗り物だすの好きだなあ。『鈍獣』で懲りたかと思っていた。「そうやって私をお母さんにするんだ」(関かなえ=山本美月)、女の人のルサンチマンに満ちた台詞が宮藤から出てくることに驚き。「女の人はわからない」という結末は、練り物になっちゃうし。生瀬、池田、古田、それぞれきちんとやるが、新味はない。がっかりだよ。