東京芸術劇場 シアターウェスト 『イキウメの金輪町コレクション 乙プログラム』

 梵字の大きく入った提灯が、小さい屋根のついた柱の下におさまり、おばけ提灯を連想する。「賽銭」と書いた箱と二人の人物が、上手(かみて)に照らし出される。

 うさんくさい。笑う。真面目な顔をしている真田(大窪人衛)と古橋(盛隆二)は仏教の「研究」者で、今しも下手(しもて)に立つ佐久間一郎(安井順平)を「来世を覗き見る」タイムマシーンに乗せようと説得中である。佐久間には、詳しくいわないけど込み入った事情があり、柔らかい筆ペンのような芝居で輪郭が縁どられ、品もある。「あっそうなんだふーん」とあっさり来世を受け入れるところもいい。なぜそんなに来世に拘るかは次の『ゴッド・セーブ・ザ・クイーン』で明かされる。この構成はいいよね。私が「短編」「オムニバス」「SF」が苦手なのは、「新奇だけど話がどこへもつながらないですぐ終わる」からだもん。松岡依都美の演じる自殺志願の神埼は、いまいち芝居がごつごつしている。いつの間にかつりこまれてクライマックスに運ばれないと、やなかんじの「死にたい動機」が目立っちゃう。ゆるさないゆるさないといい続ける「佐久間一郎」(盛隆二)の登場する『許さない十字路』は、神埼の振る舞いと全然カンケーなさそうでカンケーしている。

 『賽の河原で踊りまくる「亡霊」』が、長い。途中で、(どうしてこんな責め苦につきあっているのかなあ)と考える暇がある。賽(実はダンボール)を各人で「創造的に」積めとかいう課題が、まったく芝居の稽古みたいだった。鬼(安井順平)が演出家、亡者たち(大窪人衛、盛隆二、森下創、浜田信也)がそれぞれ俳優である。と、勝手に見立てをしたおかげで、安井の俺は味方で敵だという台詞で笑えたけど、段ボールが手間取る。先が読め、すこし退屈。