東京芸術劇場 シアターウェスト 『イキウメの金輪町コレクション 丙プログラム(節分祭)』

 んー?甲、乙、丙、三つのプログラムで一番落ちるかな。全体が、金輪タウンFMの持田喜美(瀧内公美)の司会する、金輪町節分祭になってるとこはいい。インタビューで「今年の鬼」として人物紹介されるスーパーコタヤ店長桜田文子(松岡依都美)が、『賽の河原で踊りまくる「亡霊」』で鬼をつとめるのもよくできた。だって、タイタニックの胴体に氷山が食い込むように、金輪町の現実と芝居が組み合っているように見えるもの。

 コント『インタビュー』は明らかに前川知大のものでないとわかる。作家(森下創)のファンだといいながら、まるで作家の事を知らないような相槌を打ち続けるインタビュアー(浜田信也)と腰の低いカメラマン(大窪人衛)。作家との間の齟齬を描く。この齟齬が浅い。歯車のかみ合わせが甘い。しかし、それもこれも節分祭だということで説明がつく。ここがなー。(因みに腰の低いカメラマンが笑顔でちょっとカメラを持ち上げて作家に見せるところ、よかった)

 やっぱ問題は前川の書いた落語がつまらないってことだと思う。特に前半。客の興味を惹きつづけることに失敗していて、観客が突然、手遊びする小学3年生のようになってしまっている。「落語ってこんな感じ」と前川が思ってる「こんな感じ」がつまらない。あと柳家三三に遠慮したのか二重の時間(金輪町住人と落語家)をきちんと提示できてない。インタビューないの?柳家三三古典落語の人なので(だからなのかなあ?)、現代ものと落語が、やっぱりタイタニックに氷山がぶつかったようになっており、こっちは失敗している。70代の引退した医者が、落語のおじいさんのようには喋らないだろう。笑えたのは近所のおばちゃんたちの噂部分。ざんねんな出来であった。