Bunkamuraシアターコクーン COCOON PRODUCTION2021 『シブヤデアイマショウ』

 神泉に向かう、八重桜の咲く道で、殺人事件の規制線が張られているのを見てから、もう24年かぁ。

 大きな家具の下で縒れて波打ってる敷物みたいに、渋谷の街では様々なことが起こった。動かせない大きな家具的に渋谷には大小様々の建物が立ち、その下にある「縒れ」や「波」はなかったことにされていく。松尾スズキは シブヤデアイマショウ という12500円のレビュー(高級レビューだ)の中に、それを座敷箒でかいなでに掃いた自分の感触を、そっと忍び込ませる。

 ここが、この番組(番組っぽい)の一番いい所じゃないの。ただね、「かいなで」なんだよね。もっと渋谷にロックオンしてもいい。松尾スズキは「レビュー」を何でも入れられるおばあさんの信玄袋のようにしたいのかもしれず、それで「関西」の漫才(笑い飯)が入っていたのかな。それとも「吉本」の伸長ぶりに、現代を感じているのか。違和感ない。そして異化は感じない。(せも?)(せもなの?)(せもだとしても今いち)

 もっともよかったのは秋山菜津子の「タイトルが思い出せない」クルト・ワイルの曲と(松尾スズキ訳詞のクルト・ワイル、いいかもしれん)、石丸幹二と柚希礼音の「ひとかけらの勇気」だった。

柚希礼音、ロミオの歌の「かならず」の「ら」が外れていたよ。

 のん、一生懸命やっていて、足があわてるシーンなどよくこなしている。しかし、歌はへなへな。サディスティック・ミカ・バンドの「タイムマシンにおねがい」をギターを弾いてうたうけれど、これこそかいなで。「不思議な夢」「スイッチ」「タップダンス」「ポンパドール」、頭の中でまず思い浮かべ、思い浮かべたものを忠実に言葉に貼りつけて、客の頭の中に送り込まなきゃだめだよ。