MANDOLIN  『FROM THE REHEARSAL ROOM:TOKYO』

 (ミュージカルの『レ・ミゼラブル』観たことない…。)弱気になりながらアメリカの配信サイト「MANDOLIN」をチェックする。5月22日朝9時から、ラミン・カリムルーとハドリー・フレイザーの『ザ・リハーサルルーム』を聴くためだ。今日がパート1、29日朝九時からがパート2、合わせて40ドル25セント(手数料込)だ。ドル?とちょっと海外旅行気分だよ。

 白黒の映像で、マスクをしたラミンとハドリーが映る。大きなヴァンに乗り込み、ハドリーが珍しそうに東京の町を指さしている。

 カラーになったラミン・カリムルーは丸首の黒シャツに銀のペンダントをして白っぽいパンツ、ハドリー・フレイザーは黒のドレスシャツと黒のパンツで、左手の時計と指輪がきらっとしている。

 この配信を見て、「声の芯」ということを考えた。ラミン・カリムルーも、ハドリー・フレイザーも、手が切れるように歌がうまい。音程は正確、声はまっすぐ矢のように届き、体全部に共振する。ハドリーは『ウェストサイド・ストーリー』の「マリア」を歌ったが、いきなり素晴らしかった。この歌さ、教会の朗誦のような一音で始まり、マリアの名を繰り返して呼ぶ。転調して恋の高揚が語られる。マリアの「まり」はどっちかというと技巧だけど、「あ」音はいつも相手(ここにいないマリア)にかかってる感じがする。風の舟に乗ってマリアに届く音というかさー。それがとてもデリケートで美しい。優しいのだ。ラミンは低音だととても複雑な、でも磨きに磨いた重いガラスのような声で『アナスタシア』のナンバーを歌い、きれいなファルセットで「Bring him home」(『レ・ミゼラブル』で闘うマリウスの身を思って歌われる歌)を三浦春馬に捧げていた。このかなしみと願いの透明さ。でもラミンは『エーデルワイス』の「スモール」の「ル」が、ちょっと失敗してた。惜しすぎる。