シアターオーブ 『ジーザス・クライスト・スーパースター・イン・コンサート』2021

 んー。今日のラミン・カリムルーちょっと上ずってない?しかも、それが役柄のユダの動揺してるのとなぜか同調していて、動揺だか上ずってんのかどっちかわからない仕上がり。冒頭のギターソロは重さを掛けずさっと進め、照明はテレビだったら怒られるくらい客席に向けて明滅する。アンサンブルは「体つきが似てるから揃っちゃうねー」という中に黒人の人(ジャラン・ミューズ)がひとり入っていていた。悪くない、何故だろう。

 今度のジーザスは東洋系の人で(マイケル・K・リー)、端正でノーブルだ。胸が自然に誇らかに反り、歌はうまく、メタルのような高音が素晴らしい。なのに寺院の商業化を怒る所で失敗し、「You only have to die」というフレーズを一オクターブ下げていた。

 それから美しいマリア(セリンダ・シューンマッカー)は躰に感情が行ってなく、突然歌だけが上手。ジーザスが「じぶんでなおせ!」と叫んだあと、マリアの歌とのつながりに段差があった。

 こうなると、ピラト(ロベール・マリアン)の表現力が目立ち、シモン(柿澤勇人)がうまく歌いおおせたこと、ヘロデ(藤岡正明)、カヤパ(宮原浩暢)が大過なかったのをよかったねと思う。歌がうまいってなんだろう。考えてしまった。

 この演出の中ではユダがほんとうにちっともジーザスを理解できないこと――わからないということの中にある怖れと孤独――、ジーザスが自分をほめたたえる民衆の中で感じる強烈な断絶感が、手に取るように感じられた。

 ユダの「あなたがわたしを殺す」という叫びは、祈りの朗誦のようだった。けど、むかしのプロダクションの音源を聴くと、めっちゃがんばってるよね。まだまだやれるはず。「I don’t know him」、ペテロ(テリー・リアン)もね。