Bunkamuraシアターコクーン 『パ・ラパパンパン』

 初めに断わっとくが、私は11月に、それも初旬に、クリスマスソングを流す店が嫌い。クリスマスソングかければ、客入りが上向いて、店が輝くのか。店のアンケートに「まだクリスマスじゃない」と書くよ。木枯らしも吹かずうららかな陽気の今日、『パ・ラパパンパン』は、「そんな店」であった。「クリスマスでもなんでもないぞ」という以外に、この芝居になにをいえばいい?

 「佳作賞」でデビューした作家来栖てまり(松たか子)は、飛躍を求めてミステリーを書こうとしている。編集者の浅見鏡太郎(神木隆之介)はてまりに厳しく突っ込みつつ、何とか小説を成立させようとする。しかしてまりは作品にも登場人物にも責任を持たない。いわゆる、「書き捨てる」。そのうち、てまりの作品、『クリスマスキャロル殺人事件』の登場人物たちが勝手に動き始める。

 てまりのミステリーが、恐るべき低レベル。浅見の上司の編集長裏木戸(オクイシュージ)が、「書かれない方がいい小説があるんだ!」と悪役っぽく叫ぶが、それが心から首肯される。オクイ、小松和重菅原永二、など手練れ(何とかしてくれる人)がキャスティングされていても、台本のキャラ付けが均一で、筋を運んでいるだけだ。また、最初に舞台上に登場人物がずらずら居並ぶと、とても平凡で、大東駿介の身体が「生きてない」のなんか一目でばれる(最初のシーンね)。早見あかりのその妻は、声がぴいひゃらして、笛のように裏返って聞きづらい。松の「Little Drummer Boy」は聴き応えあるけど、神木との二重唱は失敗だ。小日向スクルージと筒井イザベルのシーンも、哀しくない。貧しい才能でも、懸命に捧げものをするように創造する、それがすばらしい、そこは伝わった。テレビでは許されるねきっと、でもさ、10000円取る舞台だよね。クリスマス飾りの素敵なレストラン行ったらファーストフードだった、て感じ。