こくみん共済coopホール 劇団昴公演『一枚のハガキ』

 ふーん、やるね劇団昴、まず、個々の役柄の設計図がぴしっとしてて緩みがなく、それを実際に舞台に立ち上げる時も折り目が鋭くて、すんごいよく飛ぶ工学ハカセの紙飛行機みたいだ。人を得て古川健の脚色もひときわ輝いている。

 冒頭、下士官の町田大征は戦時中の世界を一瞬で召喚する軍人らしい台詞回しだし、もう一人の下士官(紫藤雄太)は「影を慕いて」の前奏がちゃんと弾けている。神楽も舞も形になってる(神楽鈴がロックバンドみたいに見えるけど…)。兵事係A(桑原良太)とB(宮崎貴宜)も、土地の顔役の憎らしいような笑えるような泉屋(宮島岳史)に付き従って子分らしくやり取りし、特に宮崎は台詞にフラがある。貧しい農家の夫定造(田徳真尚)が、たった一枚の田を売って身請けした恋女房友子(服部幸子)も、悲惨な半生を無理なく確実に演じ、定造の戦友啓太(中西陽介)の「生きよう」には力があって、彼らが畑に植える青い麦は生まれてくるものたちの暗喩となっている。

 と、まあ、いうことない出来なのだが、もうちょっと笑わせるところは笑わせていいかな。あとやっぱ「籤」「戦争」が、運命みたいで気にかかる。友子は運命に「身を任す」ように定造の弟三平(笹井達規)の妻となり、また身を振る。「田んぼ一枚」が重い。当時はこんなもんでした、っていうけど、「いやだから」って結婚断った人も幾らもいた。「戦争いや」って、「わたしがいやだから」から始まるかもしれないね。「いや」という力がなかったら、なかなか世相に反対するのむずかしいもん。当日パンフレットの北村総一朗の文章には、誤植があるが、それを見つけ、当人に指摘できる劇団員であれ。なんて。