TOHOシネマズ シャンテ 『ベルファスト』

 算数で頑張った9歳のバディ(ジュード・ヒル)の席次は「3番」、そこんとこ観ていて、私ごめんけどすこーし、笑った。ケネス・ブラナーて、3番ぽいもん。1番の孤独、2番の屈折と離れて、「頑張った子」の3番はクラスの「普通の子たち」と「秀才たち」とのジョイントだ。若いころ撮った彼の映画を観、いま『ベルファスト』を観て、(やっぱ欠けてんなあ)と思うのは「深さ」である。映画の後半、祖父(キアラン・ハインズ)の事をバディの父(ジェイミー・ドーナン)は「深い(deep)人だった」というのだが、映画が遠浅で、どの深さも表現しきれてないよ。まず、棟続きのテラスハウスが、ぺらっとしてる。浅っ。モノクロで撮ったのそのせい?空もその奥に月面着陸があるなんて到底想像できない。バディが騎士ごっこの盾に使うゴミバケツのブリキの蓋で、突如始まった投石を母(カトリーナ・バルフ)は避(よ)ける。ここ、びみょー。可笑しい話にもできないし、悲惨な話にもなれない、「ジョイント」っぽい感じだ。このどっちつかずが、バランスを失って転落すれば必ずそこにある(筈の)「深さ」をきれいに避(よ)けてしまう。ケネス・ブラナーってきっとバランスがいいんだね。生きてゆくには賢明なやり方だけど、作品にすると平板だ。

 夕飯の支度が出来たことを母が飾らない大声で知らせ、長屋の間を子供が走り回る夕暮れが一瞬で変貌するシーンが素晴らしい。戦争ってこうして始まる、と思う。

 バディは映画やお芝居が大好きで、そこだけカラーで表現される。あ、この人同世代なんだと、引用される映画でちょっと驚く。私も観たよ、田舎の映画館で、そして、引き金を引くと赤く光る光線銃、うちにもあったなー。