TOHOシネマズ渋谷 『ブレット・トレイン』

 真田広之、おじいちゃんの役受けるのやめなよ。と、ちょっとむっとしているのであった。列車「ゆかり号」の狭い通路で、右から左、左から右と敵を薙ぎ倒す太刀筋を見てると、シャープで修練されていて、まだおじいちゃん早いだろ。

 東京を出発した新幹線に、トランクを奪って一駅で降りる予定の殺し屋レディバグ(ブラッド・ピット)が乗った。そこには息子の仇討ちを果たそうとする木村(アンドリュー・小路)、仇と狙われる娘プリンス(ジョーイ・キング)、大ボスホワイト・デス(マイケル・シャノン)に復命するタンジェリン(アーロン・テイラー=ジョンソン)とレモン(ブライアン・タイリー・ヘンリー)の二人の殺し屋、等々がいて、錯綜した関係が、互いに互いを死地に追い込む。

 とか書いたけど、これ、村上春樹タランティーノのパロディだよね。いろんなものがちょっとずつ笑われていて、東京オリンピックのマスコットのそっくりさんが真剣なパンチを受けるところなど、日本映画でやらなきゃだめじゃんと思い、そういえば日本映画って、『ラストサムライ』(滅びゆく蛮族)とか『硫黄島からの手紙』(立派な映画でした)みたいなの撮れないねーと途中までは考えてた。家族家族言い募る人々(居るね)、東洋の神秘みたいな宿命の話、日本刀、シンカンセン、出過ぎる血、ロシアマフィアの入り込むヤクザ、全てが少しひねられて、元図とずれ、笑われる。伊坂幸太郎の原作も、ずらして少し笑われてるのかもしれない。けれど、大真面目に「タランティーノ風」をやるブラッド・ピット(キメのシーンの前に髪を束ねてセルフパロディもやってくれる!)は、「タランティーノの映画に出た」「そして賞を取った」、「自分自身」をも笑って見せるのである。これでちゃらなの?果たして?

 レモン、あと一ミリ深く機関車トーマスの話しないと…。