世田谷パブリックシアター りゅーとぴあ×世田谷パブリックシアター 『住所まちがい』

 んー。これ、何でやろうと思った?この戯曲、三位一体の神とかマリア信仰をダイレクトに扱っててむずかしいじゃない?しかも1990年初演。古い。

 三人の男が、めいめい違った住所のメモをもとに、同じ部屋にたどり着く。一人は会社の社長(仲村トオル)で、女と会うために来た。もう一人は元警官(渡辺いっけい)、ここが取引先だと信じている。最後のひとりの大学教授(田中哲司)は原稿のゲラを受け取りに出版社へ行くつもりだった。

 空気の汚染のために突然の警報が町中に鳴り響き、三人はかみ合わないままこの七階の部屋に閉じ込められる。生、死、神について冗談紛れに会話をするうち、彼らは自分が生きているのか死んでしまったのか、わからなくなるのだった。

 この芝居、もう圧倒的にスケッチが足りない。仲村トオルは女に逢ううきうきがないし、渡辺いっけいはテーブルクロスを一瞬で引くような、下地の警官がパッと露わになってくるところがない。田中哲司、もっとライプニッツとかウィトゲンシュタインとかすらすらっと言えないの。三人とも、このくらいの年まわりの俳優になったら、立ってるだけで、それまでのストーリーが身体にでないとだめ。あと、三人が実存的不安に駆られるまでの滑走路(不安のレンジ)が、粗い。しかし、後半は彼らの底力で面白くなる。朝海ひかる、全てがミステリアスというより中途半端。訛りも中途半端、美しい女性のハイヒールも中途半端。ミステリアスは一か所でいい。ヒールの足を前半分、ぺたっと地面につけないで。足の甲を押し出して、足の甲が靴の一部になり、一番美しく見えるように(きのうみた…)。

 部屋は十字をたくさん含んだ白一色、黒――死――を下塗りにこっそり隠している。