新橋演舞場 2022年 劇団☆新感線 42周年興行・秋公演 SHINKANSEN RX『薔薇とサムライ  海賊女王の帰還』

 17世紀初頭のヨーロッパに、コルドニアという小国があり、国を治める女王は、元海賊のアンヌ(天海祐希)である。悪者たちから国を取り戻したものの、十数年が過ぎるうち、隣国ソルバニアノッソの女王マリア・グランデ(高田聖子)は、コルドニア併合に向けて、すこしづつ足場を固めつつあった。アンヌに迫る危機、かつて彼女を王座につけるべく働いたジパング国の五右衛門(古田新太)が再び現れ、その脅威を除くため共に立ち上がる。

 「国」ってなに?って思った。それがちょっと大雑把であいまいで、観ていて困る。「国のため」とか結構出てくるけど、それはいったい?うちのじいちゃんやばあちゃん、若い人のひいおじいさんやひいおばあさん、一人も生き延びられなかった『火垂るの墓』の一家とか、「国のため」でえらいことになってるじゃない。と、重いことを考えつつ、意外なとこから現れる五右衛門とか、ほっそりした手足をしゅっと伸ばしてポーズをとるアンヌの変身っぷりに見惚れる。天海祐希はうつくしい。でも、その美しさがうまく集約されないのだ。風呂敷に話のパーツを入れて、一気に背負ったみたいになっている。特にラウル(神尾楓珠)とベルナルド(西垣匠)のキャラ立ちは問題だ。似通っていて区別ができない。神尾は声はいいのに、音程が怪しい。西垣の身体は、まだ人に「見せる用」の仕様になっていない。これさ、音楽劇だがミュージカルになりきれてない。一か所だけ、ミュージカルの輝きを放つのは、ロザリオ(石田ニコル)が、「もう一度考えてみて」と歌うシーンだ。前半、石田の台詞は、まだ鉋屑の様にカールしているんだけど、ここまっすぐ。よかった。

 波幕が登場するところなど、「物足りない」。たぶん難民問題が出てくるので、太陽劇団の波の迫力を思い出したせい。吟遊旅団、森奈みはる、声がキンキンしてる。早乙女友貴、あと三人ほしい。