有楽町朝日ホール イッセー尾形一人芝居 『妄ソー劇場・すぺしゃるvol.4』

 会場につくと、イッセー尾形の手になるミニチュアの人形劇場がいくつも展示されている。早めに行った方がいいよ。開場時間も早い。イッセー尾形が作った紙芝居を、実際にこどもたちに見せている映像もある。こどもが茶々をいれるので、ちっとも先へ進まない。イッセー尾形は困ってる。但し映像を観ている大人たちはけっこう笑っていた。

 (イッセー尾形の作った人形ね、あーはいはい)ってなってる自分を発見する。何やらせても上手だね。どの人形にも愛があり(特にゴッホは大好きなんだなと思った)12,3センチのゴッホが自分の絵(部屋)を覗き込んでるのなんかがある。ちいさな照明で二人の人形の後ろに翳を作り、背景に落とし込んでいるのがよかった。すごく上手。いい。でも独立したアート(?)じゃない。この道一本で食べて行けますかときかれたら、ちょっとねーと答える。絵もそうだけどさ、なんか「線の引きよう」が、専門の人に比べると、圧倒的に少ない感じがするんだよね。でも、専門の人と同じ、またはそれ以上のセンスでカバーしているのだ。この人形たちだって、自分のイラストを「そのまま」立体に起こしていて、よくある退屈な人形の、整理されてつるっとした感じから、とても遠い。炬燵から身を乗り出して、腹這いのまま絵を描いている北斎のさるまたも、がさがさした、ざらざらの仕上がりである。んー?してみると今日の舞台は、この人形たちを演じてみせてるのかな?

 ってことならめちゃくちゃ納得する。がさがさの、ざらざらした出来だもの。『詐欺防止留守番電話』でY’s電気の人が訪ねる家はほんとに散らかっていて(ってなにもない、イッセー尾形が作り出している)、観劇の邪魔になるくらいだった。『中華屋のおばちゃん』も『謝罪会見』も『高速道路男』も、ざらざらしてる、それは主にイッセー尾形が線をきちっと引かず、完品になるのを目指してないからだ。「思い出しながら作る過去の作品」ていう完成品である。私は不承知。隅々まで息が通ってるいまの作品が観たいもん。光るグレーのプリーツの服を着た謎のおばさんの『605号室』を初めて観たからか、面白く感じた。夫に死なれたおばさん、そして今の耐え難い空腹。『立体紙芝居』と『没落貴族(斜陽)オーロラ銀座』。『立体紙芝居』について言えば、もう理解するのを諦めました。おもしろい?おもしろいの?この紙芝居で疲れちゃって、オーロラ銀座の熱唱が、うまく頭に入ってきませんよ。