ザ・スズナリ NYLON 100℃ 48th Session 『Don't Freak Out』

 家父長制を哄笑するおんなたち。

 『砂の女』のあの男は、砂の中に閉じ込められる一方、居心地の良い巣穴で、「女」に世話され、一人で過ごす自由を得た。彼は「お世話」を疑わない。『Don’t Freak Out』の父天房征太郎(みのすけ)は、女中部屋から地下に降りる「井戸」のなかに棲み、女中のひとり、愛人のくも(村岡希美)に面倒を見てもらっている。出入りは縄梯子だが、征太郎は逃げ出そうともしない。地上の天房家は、征太郎の弟茂次郎(岩谷健司)が「父」となり、うまく回っているのであった。「父」の首をすげ替えて、力ある者のもとで家族を成すことで、「家」は、なーんもなかったかのように存続する。家族の成員はアメーバのように変わり、それをおまわりさん(公権力―藤田秀世)が助けることで、ますます強固に生き延びる。徒に咲く毒の花のような娘颯子(松本まりか)は、家長によってくじかれ弱くなる。女中の姉妹、あめ(松永玲子――お辞儀もっと丁寧に)とくもは(ジュネみたいだけどさ)、あるとき「もうお世話しない」と決めることで、「家」とその時々の「家長」に打撃を与える。結婚もハカイする。土気色になるまでほっとくのだ。みな顔を白く塗ってるが、劇場のちっさいことが功を奏して、めっちゃ怖い。いい感じにアングラ。そして、なんの「だし」が出てるのかわからないけど、芝居のにじみ出たその顔が見飽きない。前半、中盤まで、何の話か分からず、ただ「分からない事態」が延々と続き、つらかった。暗示があってもいいし、もっと面白く語ってほしい。「家」につきものの復讐のことも出てくる、つれて行かれる安澤千草の眼が、金泥のように見えた。廣川三憲が窓に姿を現すとき(こわい!)、颯子のキャーが少し客の気づきより遅い。ここ駄目だ。みのすけ、取り乱した芝居が新しい。みんな中盤を乗り切るため、120%の出力で臨んでくれー。