明治座 明治座創業150周年記念前月祭 『大逆転!大江戸桜誉賑 だいぎゃくてん!おおえどかーにばる』

 松平健の、体幹はしっかりしてて安定してる。はー、腰がキマッテルってこれね。と思う。どんな俳優でも、たとえ鶴田浩二でも、腰のキマらないひとは映画で「いい者」に映らない。けどさー、今日松平健は、目測を誤って、カラミに刀を当ててしまった。(あったいへん)→(だいじょうぶ竹光だから)→(松平健駄目じゃん)と、頭の中が目まぐるしく、我に返っちゃったよ。気を付けてほしい。細川の芝居はからっぽのギャグがほぼない。たとえ客があんまり笑わなくても、かたちだけの新しくないギャグは要らん。

 傘職人の万吉(コロッケ)と殿様(松平健)が、口げんかになり、互いの身分を入れ替える話。それぞれの妻もつきあう。芝居ばかり観ている万吉の女房お玉(久本雅美)は奥方に、殿様の奥方お琴(壇れい)は町方の女房になる。万吉コロッケのものまねショーもついてくる。若殿様(荒木宏文)と万吉のデュエットがとてもよかった。コロッケのものまねはじめてみたけど、彼の「森進一」の真似の中には、コロッケのこれまで聴いてきたロックが、色の変わる石のようにひかっている。けど、ネタ古すぎない?鶴田浩二?子供のころに聴いた歌がうまく真似できるのはフツー、非凡なのはプロになってから舞台に掛けた物。例えば福山雅治だ。久本雅美、声がよく出てた。声大切。嗄らさないように。丹羽貞仁、声はコントロールできているが(もひとつ思い切りよく)、身体が後回しになっている。もっと客席に顔見せる。全身で(観てくれ俺を)って云う。壇れい、家老(真砂京之介)言い損ないしてたねえ。町娘(那須沙綾)、演出の意図をちゃんと掴んでいる。セットチェンジがのろい。

小さくステップを踏むだけなのに、マツケンサンバ松平健は、足元で起きた波が、静かにきちんと体幹に伝わる。さざ波が全身に響く。正調だなと思うのだ。「善き人」「善きもの」の善き踊りだ。