東京建物Brillia HALL 2023年劇団☆新感線43周年興行・春公演 Shinkansen faces Shakespear 『ミナト町純情オセロ 月がとっても慕情篇』

 パラレルな感じ?シェークスピアと映画みたいな50年代と、こちらから眺める現代とが、悲劇の起こる「島」の周りを三重に、見えない線でぐるぐる巻きにする、沙鷗組の亡くなった組長の妻(アイ子=高田聖子)が、イアゴーと同じくらい非道い奸計をめぐらし、オセロ(三宅健)を追いつめる。この芝居、うまく古めかしく作ってあるけど、それとカンケーなく、なにかが決定的に古い。それはね、皆ががんばって(あるいは図らずも)、関西弁がうまいことからきていると思う。声の出し方が吉本新喜劇と似通いすぎている。チエ(山本カナコ)とエミ(中谷さとみ)の最後の愁嘆場は、二人とも(吉本調でオセロ無理やん…)って感じの声の甲高い一場になっている。声下げて。松井玲奈も吉本の「いいとこお嬢さん」のように見え、弱い。純情にね。逆木圭一郎もっと悲しみ、もっと呪いをかける。チーズみたいに「お笑い」と「悲劇」が裂け、受け取り方にずーっと戸惑っていました。三宅健、『オセロ』はイアゴーが主人公じゃないよ。そう思っているのなら、今すぐイアゴーから奪還してほしい。冒頭スローモーション、ちょっと早い。中盤、いのうえひでのりがわざと大きく身振りをつけているという事は、それに即して内実をめっちゃ強く整えないと、ウソがばれる。アイ子に焚きつけられて、テンションが次第に上がり、物狂いになって妻と二人きりの場を迎える、ジャンピングボードを力いっぱい踏み込め、でなきゃ純情オセロになれん。自分の動線をよく見る。寺西拓人、誰にもつっこまれずひっそりやっていた『RRR』のステップ笑う。酒癖が悪いなら、最初は丼を遠ざけ、最後は躰に引き付ける。身体に味が出ないとつまらないよ。脚本は、粟根まことの活用が、今まで見た新感線の中で一番キマっていた。アイ子いいがもっと深い解釈を作家に求める。組長になれないの?殺人がのっぺりしてる。