紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA 『KOKAMI@network vol.19 ウィングレス 翼を持たぬ天使』

一人の天使(榊原一郎=福田悠太)が女(絹田玲菜=大野いと)に惚れ、人間として地上に降りる。女に振られた天使は、また天上に戻ろうと、人を本当の意味で救うため奮闘し、スピリチュアル団体の神の声を名乗る男(神山英雄=渡辺いっけい)と敵対する。…こんなのより、ネットやチラシに載ってるあらすじが、めっちゃ面白そう。梗概が堅牢。これどういうことかなー。もしかして鴻上尚史、頭の中で図形動かして、プロット立ててる?図式は面白いのに、実際の芝居はそれより落ちる。「いま、ここ」の台詞の応酬、「ここ」に停滞して詰める場面が弱い。スプレーを持ち出して、みんなが危険な目に遭うシーン、笑ったけどさ。「元天使は『宇宙の声』代表の神山秀雄と戦い始めた。」と書いてあるけど、ガチの論争とかないんだよね。物足りない。「本当に救う」は宿題になって次回へ引き延ばされていく。もうちょっと、「救うとは」という省察や思索が、やりとりになって「停滞」を生んでもいいんじゃないの?少なくとも福田悠太は、「停滞」に耐えられるし、相手が渡辺いっけいなら、もっといいシーンが作れたと思う。鴻上さんて、いっつもフローだよねー。

 福田、とらえどころのない役をがんばってはいる。けど、純粋が薄い。最後もピュアにね。田畑智子、ピュアな幕切れの福田に対し、もっとぶっきらぼうにいかないと、福田のピュアが立たないよ。渡辺いっけい、危なげなく、しかもざくざく切り込んでいる。なぜか第三舞台みたい。大野いと、とにかく腹から声を出しなよ。小南光司、鈴木康介もだ。おなかから声が出ないと、美女にもハンサムにも、いい人にも悪い人にも、何にも見えん。二人の小天使(辻捺々、湯浅くらら)の、ハクチョウみたいな両手のストロークがぶれずお見事。田畑と麻衣(三上さくら/中川陽葵、ダブルキャスト)のシーンが一番充実していて、「みせる」。なのに本日のキャストの表が、見当たりませんでした。