アマゾンプライム 東映創立70周年記念作品 『THE LEGEND &BUTTERFLY レジェンド&バタフライ』

木村拓哉、『ター』観たかなあ。ケイト・ブランシェットの、総身を「ター」に捧げる役作り、冒頭、ただ出番を待ってるだけなのに、緊張した顔つきが様々に変わるとことか凄いよね。あんまり顔を他人から注視されていると――アイドルってそうだと思うけど――人間っていつも自分がどんな表情をしているか、把握できるようになる。顔の表面のどんな小さな動きもコントロールできる。不用意な取り乱した顔などしない。いつでも素敵なのだ。

 もちろんケイト・ブランシェットだって、コントロールしていると思うけど、どこかで、それをやめてるポイントがある。外から内側を見るんじゃなく、内から外側へ感情を出すところ、観られることを恐れない、勇気のポイントだ。この出力の調整が、ケイト・ブランシェットは素晴らしいのだと思う。センスだよね。

 木村拓哉の信長は、どこと言って難はない。この長い作品中、チンピラっぽい時はそのように、濃姫綾瀬はるか)に促されて桶狭間に打って出るときは素早い武将に見え、夫婦仲が悪くなる時も、「しかたないね」って感じする。でもどれも、外から内、コントロールされているのだ。

 一番大事な最後の妻への述懐が、効いてない。これは脚本・演出のせいもある。全編で最も光らなきゃならない場所なのに、くすんでる。「ゆめ」は長すぎる。それに、それまでずーっと、信長が妻にきちんとつれない態度でないと、観客は泣けないよ。

 この人は信長で、木村拓哉ではないってことを、木村拓哉がこれからどうとらえていくかの問題だよね。

 戦国時代、ある夫婦の軌跡を追いかけるこの映画は、なんか、意外と「観られる」。手抜きがないし、お金のかかった少女漫画のように、話の筋がすてきにしてある。最後の台詞が、残念だね。ちょっと長すぎじゃない?

 綾瀬はるかは手堅く好演、中谷美紀の各務野、伊藤英明の侍従福富平太郎貞家が、抑えているけど存在感があり、彼らのおかげで映画が格上がりしている。