大田区民ホールアプリコ 『熱き心で突っ走れ!』 第一部お芝居 第二部歌謡ショー

 つよい風が吹いているけど、咲きたての桜は散る様子がない。今日は小林旭を観に行く日。昭和の映画スター。歌手でもある。

 正直に言うと、私には日活の小林旭が、よくわからなかったのである。渡り鳥シリーズをちら見しても、見どころがわからず、日活ファンの友人に聞いたりした。言下に「アキラよ。」という返事が返ってきた。そうか、アキラだよねー。という、失礼な前段があっての今日である。

 幕が開くと皆何かにいら立っている様子、父信秀の葬儀の焼香に、長男信長(小林旭)がなかなか現れない。信長は袴もつけずに登場すると、祭壇にむかって、抹香を投げつける。その背中。

 私は思い出した。ブラインドに向かって立っているワイシャツ姿の男を、後ろから見ている。きれいにぴんと糊付けされたシャツに影ができ、まるで彫像のように見える。背中から精気がただよっている。それは95年の小林旭主演のドラマだった。その時と同じ背中、精悍な背中だ。あれから20年、小林旭は自分を変えずにこの後姿を維持してきたのだろう。どうやって?

 二部の歌謡ショーになったとき、ファンの人々が、プレゼントを持って舞台に押し寄せてきた。小林旭は歌の合間に、スタッフにむかって「止めなくていいよ。」といった。やさしいと思った。そして正しい。もう一度、「君たち、そんなに一生懸命止めなくていいよ」といった。スタッフのことも考えていた。歌は声量が出ていたし、何より音程がぴしっとしたままだった。そして、ファンのプレゼントも受け取り続けたのである。

 こんど、小林旭の映画を、もう一度見てみようと思う。見どころは、もちろんアキラだ。