2022-01-01から1年間の記事一覧

Bunkamuraル・シネマ 『RRR』

うぉー。頭の中の「プラッシーの戦い」とか「ムガール帝国」とか「セポイの反乱」とかのお勉強が、一撃であっさり四方へぶっ飛んでいく。走る!飛ぶ!苦痛!友情!最初、映画館で予告編を観た時、(どうなのかなあこれ)と思ったのだった。予告の中の英国兵…

有楽町朝日ホール イッセー尾形一人芝居 『妄ソー劇場・すぺしゃるvol.4』

会場につくと、イッセー尾形の手になるミニチュアの人形劇場がいくつも展示されている。早めに行った方がいいよ。開場時間も早い。イッセー尾形が作った紙芝居を、実際にこどもたちに見せている映像もある。こどもが茶々をいれるので、ちっとも先へ進まない…

シアタークリエ 『4000マイルズ ~旅立ちの時~』

構造が、わからねー。これ結局何の話だったか、ちゃんと演出されていない。役者に意図が伝わってないし、役者が分かっていたとしても演じきれてない。『4000マイルズ』、青春ビルドゥングスロマンやん。自転車でアメリカを横断中に、強烈な喪失体験をした若…

ユーロスペース 『天上の花』

破綻なくきちっとできてる。歯車がぴったりとかみ合い、するすると物語は進み、惹きこまれる。 詩人三好達治(東出昌大)は、16年思い続けた、師萩原朔太郎の妹慶子(入山法子)と結婚するため、妻子と離別し、海辺の僻村に疎開する。しかし、三好の思う慶子…

WHITE CINE QUINTO 『ミセス・ハリス、パリへ行く』

第二次大戦後、従軍したまま帰還しない行方不明の夫を待ちながら、ミセス・ハリス(エイダ=レスリー・マンヴィル)は家政婦として働く。ある日仕事先でディオールの美しいドレスを見たミセス・ハリスは、お金を貯め、パリのクリスチャン・ディオールへ、オ…

TOHO CINEMAS シャンテ 『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』

「かわいい猫の絵を一生描き続けた男」「愛妻と死に別れたが一生愛していた男」と、なんか、ファンシーでラブリーな映画を想像しちゃうけど、全然違う。これ、「生きるのが下手な男がどうやって世界とコミットしたか」という剛速球映画なのだ。妻(エミリー…

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA 劇団民藝公演 『モデレート・ソプラノ』

目隠し鬼みたいに、芝居が観客の私たちを、どこに連れて行くのか、分からない作り。何をしているのかわからないけど、とりあえず踏み出す人々の群像劇だ、と途中までは思うのだが、目隠しを取ると、意外な場所に立っている。大体人間は、目が見えないみたい…

本多劇場 KERA・MAP #010 『しびれ雲』

KERAの頭の中から生まれた架空の島「梟島」に、一人の怪我をした男が現れる。記憶を失い、フジオ(井上芳雄)と名付けられた男と、彼の周りの20人に満たない人間関係の、戦ぐ波乱と頭上に浮かぶ「しびれ雲」。島の住人の潮目になるという「しびれ雲」を見上…

世田谷パブリックシアター シス・カンパニー公演『ショウ・マスト・ゴー・オン』

再演の映像を、深夜のテレビで観たのかなあ。「松」、「トランプ」くらいの、断片的な記憶しか残ってない。楽しく観て、すっかり忘れてる。今回この28年後の再々演を観て、「ふーん」と感心するのは、ところどころに、ひんやりした匕首のような怖さが潜んで…

東京芸術劇場 プレイハウス 東京芸術祭2022 芸劇オータムセレクション『守銭奴 ザ・マネー・クレイジー』

稀代のけちんぼうアルパゴン(佐々木蔵之介)は、召使のお仕着せから食べ物からなにもかもにけちけちしている。娘エリーズ(大西礼芳)を金持の老人アンセルム(壤晴彦)に縁付け、自分は息子クレアント(竹内將人)の思う人マリアーヌ(天野はな)を妻にし…

紀伊國屋ホール 『管理人/THE CARETAKER』

「背景の壁に窓、その下半分は袋で覆われている。」(喜志哲雄訳)って、どういうことかと思ったら、茶色い麻袋のような布で、窓が隠されているのだった。窓の上の羽目板はむき出しになり、寸胴鍋や脚立や木箱、古くて端が縮れた新聞の束の山、皆ぼろぼろで…

東京芸術劇場シアターイースト 二兎社公演46 『歌わせたい男たち』

「立場」。立場が変わると意見が変わる。そんなのよく見聞きすることだけど、その立場が煮詰められて、のっぴきならない人たちがいる。学校の先生だ。永井愛は国歌斉唱問題の山場を2008年に設定しているけども、私の知ってる限りでは、式を巡る厳しい対立は…

恵比寿ガーデンシネマ 『土を喰らう十二ヵ月』

まず、「一年間かけている」ってことが映画に出てる。高速撮影がちょっと多いけど、いやじゃない。土に埋けた(?)里芋を出す、雪の下からほうれん草を採るところもしっかりリアルで、真っ黒の土をつけた芋を、一つ一つ流しで洗うとか、ほうれん草の根が白…

新国立劇場小劇場 シリーズ未来につなぐもの『私の一ヶ月』

うーん…何をどういっていいか…あのう…言うよ。 趣味が悪い。すごく悪い。泉(村岡希美)の夫拓馬(大石将弘)の死を、残された泉がこころの重荷として背負っている。それを、「風鈴(実物)をかける」ことで表現する。いやな気持になりました。これさ、もう…

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA  こまつ座 第145回公演 『吾輩は漱石である』

「手紙を披くと、あなたの声がきこえるけれど、二度三度と読むうちに、その声は消えてしまいます。」っていうのあったよね。わたくし、この芝居を観て、そのことを考えました。 私も(平埜生成がthe座 no.116で、本作が大好きだといっている)井上ひさしの評…

SCOOL 劇壇ガルバ 第4弾実験公演『錆色の木馬』

うゎゎゎ、むずかしいやん。と思い、こんな時論理的な人ならすぐ理解できるのに、と思い、鏡に向かって、鏡を持った時のことを考える。鏡の中には、鏡を持った「ワタシ」が映り、「ワタシ」の持った鏡の中にも、もっと小さな「ワタシ」が映る。一つの鏡に、…

中野サンプラザ 『ベルウッド・レコード50周年記念コンサート』

ずいぶん高低(たかひく)のあるスタンドが舞台に並び、一番上に照明をつけて、星のように光ってる。 今日は、『ベルウッド・レコード』の50周年の記念コンサートだ。ベルウッドって、1972年に正式に活動を始めたキングレコード傘下のレーベルなんだって。70…

池袋シネマ・ロサ 『Bridal,my Song』

「映画を見る側に考えさせるのがA級映画であって、すべてを説明してしまうのはB級だ」(クリント・イーストウッド、『「ローリング・ストーン」インタビュー選集』ヤン・S・ウェナー/ジョー・レヴィ編著 太田黒奉之/富原まさ江/友田葉子訳)と、イースト…

新橋演舞場 2022年 劇団☆新感線 42周年興行・秋公演 SHINKANSEN RX『薔薇とサムライ  海賊女王の帰還』

17世紀初頭のヨーロッパに、コルドニアという小国があり、国を治める女王は、元海賊のアンヌ(天海祐希)である。悪者たちから国を取り戻したものの、十数年が過ぎるうち、隣国ソルバニアノッソの女王マリア・グランデ(高田聖子)は、コルドニア併合に向け…

Bunkamuraザ・ミュージアム 『イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき』

90年代の終わり、「北欧」が若い女の人たちの間ではやり始めたのは、みんな無意識に、北欧ミタイニナリタカッタからだと思う。子供たちにはみな整った保育園があり、老人は守られ母親は働けて、一個人として尊重され、人権はちゃんとしていて、国は情報の透…

新宿シアタートップス オフィス3〇〇公演 『ぼくらが非情の大河をくだる時 ~新宿薔薇戦争~』

ひとつの棺、3人の男。男たちは棺を奪い合い、押し付け合う。3人で「ひとりの男」としてえがかれる局面があり、切り替わって(スウィッチング!)「世代の違う3人の男」としてえがかれる局面があり、そして「家族の男たち」であり、つまりは「男」なのだ。こ…

明治座 『羽世保スウィングボーイズ』

作・演出:G2 美術:伊藤雅子 照明:高見和義 音楽監督:崎久保吉啓 音響:内藤勝博 衣裳:前田文子 等々、スタッフ名はチラシにきちんと載っていて、企画・製作が博多座で、後援に佐世保市がついていることまで、ぺらっと一枚のチラシ情報でわかるのに、キ…

恵比寿ガーデンホール 『Peter barakan's Live Magic』

開場まで15分押し、だけど久しぶりのライヴで、そんなこと全然気にならない。スタンディングの人と、指定席の人で入り口が違う。スタンディングはいつものように番号を呼ばれるのを待ち、指定席は三々五々入場してゆく。二階のフードマジックは、茶色の紙袋…

新国立劇場 中劇場 新国立劇場演劇 2022/2023シーズン『レオポルトシュタット』

幻の、荒れる海の向こう岸に、豆粒くらいの人影が見え、その後ろの激しく揺れる木々と降りしきる雨で、姿が霞みそう。小さい人影は、体全体を使って手旗信号を送ってくる。「レ―オ―ポ―ル―ト―シ―ュ―タ―ッ―ト」、そんなような気がいたしました。過去から現在へ…

浅草寺境内 平成中村座 十月大歌舞伎 『第二部 「綾の鼓」「唐茄子屋 不思議国之若旦那」』

『綾の鼓』。三人三様の、かなわぬ恋を描いた芝居だね。美しい華姫をいちずに慕う三郎次(中村虎之助)、退屈まぎれに庭掃きの三郎次を呼び出し、綾の鼓を与え、鳴れば思いをかなえるという華姫(中村鶴松)、亡くなった子供と同じ年齢の三郎次に鼓を教える…

武道館 『NORAH JONES JAPAN TOUR 2022』10月14日

「ノラ・ジョーンズのコンサートに行かないか?」と言われたら、いけすかない奴の誘いでもつい、うんと言っちゃう、という映画が昔ありました。と、突然思い出し、二つ返事でついてきた家族の顔を見て、こっそり笑ってしまう。さそう方も満を持してさそうよ…

猪熊弦一郎現代美術館 『常設展』

どんな風にも描けるということは祝福で、そして厄介だ。重荷で、苦しみにもなりかねない。と、猪熊弦一郎の絵を見て思いました。今日の展示には、まず猪熊の22歳の自画像(1924)がある。これがさー、もー、めっちゃいい絵なんですよー。買うなら(買えない…

東京芸術劇場プレイハウス 東京芸術祭2022 芸劇オータムセレクション『スカーレット・プリンセス The Scarlet Princess』

これほど自分の国と西洋が、遠いと思ったことはない。そしてその自分の国の古典芸能の価値観を、なんとなく面白く享受しているだけで、ぜーんぜん深く考えていなかったことも、浮き彫りになったよ…。 子供は、みずからの(おひめさまことばでもある!)一部…

東京芸術劇場シアターイースト 東京芸術祭2022 芸劇オータムセレクション ワールド・ベスト・プレイ・ビューイング 『ローマ悲劇』

えーと、divide(分ける)、unite(合わせる)、divide、unite、頭の中を工事現場みたいに単語が点滅して、目がちかちかする。ファーストシーンこそ割らないけど、この芝居――映画――映像は、イヴォ・ヴァン・ホーヴェとカメラが力を合わせて画面を分割しまく…

東京芸術劇場シアターイースト 東京芸術祭2022 芸劇オータムセレクション ワールド・ベスト・プレイ・ビューイング 『モリエール』

1978年、39歳のアリアーヌ・ムヌーシュキンが撮った映画。気鋭の作家さー。モリエールの逸話では、どこかで聞いた、瀕死のモリエールが「劇場で働く人のために、今日も舞台に上がらなくては」っていった、という話が琴線に触れるけど、この映画にはない。代…