2019-05-01から1ヶ月間の記事一覧
『ニュースセンター9時』で観たシェークスピアの装束の麗人は、ずいぶん年上のように中学生には思えたが、今となってはそんなに年も変わらないような気がする。若いよね、玉三郎。 幕が開き、ハープやピアノやドラムス、8人のバイオリン、クラリネット2人…
うねる大西洋のように、瀬戸の渦のように、上品なグレーの光る布が、舞台いっぱいに皺の文様をえがいている。黒い壁にパリの建物の遠い輪郭。それも銀色のテープで作られて上品だ。布の上にはCDデッキや本やまくらが浮かんでいる。枕のせいで、大きなベッド…
この劇場もまた、一つの容れもの――うつわ――である。 四角いアクリルの容れものに蛍光灯が点き(カチンと何かにスイッチが入る)、トラック、木々、公衆トイレが、それぞれその中にあって、ゆっくり舞台前へ移動する(カチン)。透明の小さな函の中のブルーの…
うーん。脱お母さん脱物語裏ニナガワ?誰が誰だかわからない、と終演後誰かがロビーでつぶやいていたけど、そこも大事な要素だったのかもしれない。 「私の名前がわからない」世界、名づける人のいない世界、新しい、生まれたのか生まれないのかわからない世…
全篇自然光で撮られた映画、線路の上を二人の女の子がきゃあきゃあ笑いながら遠ざかっていく。その年下の方の女の子は兄さんが死んで、一人ぼっちになってしまったけれど、寄宿舎は窮屈だから、脱け出して、明るい方へ明るい方へと駆け出すのだ。そこでエン…
劇場への階段を上がりながら、漂うかすかな音を聴くために足を止める。鋭い細い風の音。デリケートに選ばれた音だ。岡田将生のハムレットはじめ、皆台詞が、地面から水を吸い上げる植物のように、体の奥底、下の方から聞こえ、嘘がなく、そこがとても素晴ら…
これって、社会や家庭の中でのバランスを、一人の男が成長して新たに獲得していく話なの?いいのそれで? 巨大宅配システムの仕分け部門の仕事に従事する男オリヴィエ(ロマン・デュリス)。朝暗いうちから家を出てチームリーダーとして働く。彼は無力で、馘首…
昔、内田光子が、「私たち(演奏家?ミュージシャン?)は、空間に音を放る人」と言っていた。音っていうのは、みんな、空間を漂ったり、飛んだり、空に吸われていったりするものなのかもしれない。 ジョン・ルーリーの描く人物はたいてい、下半身がない。空…