2023-01-01から1年間の記事一覧
北九州ってね、土から工場が生えてるような街でね、なんか、植物(PLANT)と設備(PLANT)が分かちがたく一つになってて、人体は硬く・柔らかく、すべてが生き物で、また、すべてが死んでるような気もし、かしわめしが有名で、栄えてさびれてる、そんなとこ…
撚れてかすれる自分の声を逆手にとって、東出昌大は「そんな声をしてるやつ」を舞台上に作り出そうとする。いいね、いいと思う、そろそろそんなことに挑戦してもいい頃さー。ディック(東出昌大)は銀行強盗を計画して、凶暴なバグ(阿部亮平)と、クレジッ…
プロセスが大事、プロセスが大事っていうけれど、ま、本当にプロセスが大事だな、と、急速に悟った本日です。 今日のワーク・イン・プログレスの中で一番見やすかったのは『淋しいおさかな』(演出・藤井千帆、演出補・鈴木麻美)だった。完成度が高く、表現…
んー。どうしたかったこれ?装置(美術:松岡泉)はきちんと仕事をして、秘密を解き明かしているのに(上へあがってゆく階段と、それと対称な「下」へとさかさまになっている階段)、肝心の芝居は?今まで何も起こらず、今も変わりなく、これからも何も起き…
『義経千本桜』、「渡海屋」「大物浦」。今回の公演で一番良かったのは、花道をやってきて、その存在感で舞台を支配する勘九郎の渡海屋銀平でござる。登場シーンね。あの空気感が、演目、演目の乗っかる日常を、芝居小屋の非日常へと押し上げ、非日常の中に…
10000円で2本の芝居を連続上演・幕間15分?と、戸惑いがちだった客席も、後半の別役実作『消えなさいローラ』で、ウィングフィールド家の稼ぎ手の息子トム(尾上松也)のセクシュアリティが、レースのカーテンをさっと掲げるように明らかになり、ロ…
キャラを立てろ!もー、これしかいうこと思いつかん。 第二次世界大戦で戦うため、服従を叩き込まれる6人の新兵の顛末を、1943年の召集と1945年の復員から語る。ひとりはこれまでユダヤ人を見たことがなかったし、語り手(ユージン=濱田龍臣)と引越トラッ…
パンドラの箱が空いて、あらゆる悪徳、秘密がガサゴソ、ちゅーちゅー飛び出しているような現代と同じように、1969年ごろの日本でも、いろんな禁忌がさらけ出されつつあった、でも、近親相姦や教師の痴漢の衝迫力は、69年のほうが何倍もすごかったような気が…
名古屋の駅に降りたことはあったけど、名古屋の街に出たのは初めてさ。もー、駅前の「大名古屋ビルヂング」の威容と(でかい)、「大」の矜持にちょっとおどろく。ええー、そんなこと、なかなか自分じゃ言えん。すごいビルだけどさ。御園座に『東海道四谷怪…
黒いひだの寄った、背後の黒い幕に、紫と青の明かりが交互に当てられている。その上にはLIVE MAGICと書いた大きなパネル。 バラカンさんが登場して、4年ぶりにフルサイズの開催ですという。合間の時間に余裕を作り、パフォーマンスも長めだって。四階にはマ…
「変やない?」その一言で、沙汰やみになった、「ノーズパテ」であった。せっかく専門店で、演劇部の予算使って買ったのにね。昔々、「東京の演劇」でも、顔を彫り深く見せるため、「ノーズパテ」で工夫していた。そこには西洋人に見えないということの焦燥…
聴けぇ、デレク・トラックス!て感じの導入。 最初の曲はI Am The Moonの中の最初の曲、Hear My Dearだ。めずらしく、デレクが勝手に弾くのだ。ぜーんぜんバンドの音を聴かない。聴かないってことはバンドを調整しない。すごく前に出る。ファニーな音がする…
ビルボード横浜、来るのは初めて、勝手がわからない。会場内に案内されても、どこが正面か見当がつかず、右見たり左向いたり、やっと正面の赤い緞帳(かっこよく襞に当てられた照明)の前に置かれたマイクと一本のギターの背面を見つけて、(こっちが正面か…
んんん?なんか、散らかってない?しかも、むずかしくしてない?マクベス家の3人(マクベス=アダム・クーパー、レイディマクベス=天海祐希、娘=吉川愛)は3人で1人、1人で3人だとして、芝居をここに集約しないとダメじゃない?だらだらと長く続く戦争…
若い作家の人って、結構強盗の芝居を書いてしまう。日本で奪われるのはきまって「金」、国で一番価値があるたいせつなものがお「金」だからだ。(これが宗教の力が強い国だと「主教」誘拐とかになる)深井邦彦1985年生まれ、彼が奪うのは素性の知れない「銀…
…2回見ちゃったよ。1回目は予備知識なく見たから何が何だかわからなかった。トラックで運ぶあの大きな箱は何?レゲエのバトルって?結局この人たち、チームなの?ジャーって何? ようやっと私に伝わったのは、恐ろしいほどとげとげしい景色——砂利、泥濘、…
囲い込まれた私たちは戦いを見、憎悪を見、そして愛を見る。ただ見る。見るだけだ。それは「演劇」という幻かもしれないし、もしかしたら何かのゲームなのかもしれず、ひょっとすると客席と地続きの現実——ウクライナ戦争やコロナ――であるかもしれない。それ…
こんなところに、「ロマンチック」は生き延びていた。いろいろ文句が多い、恋愛ものを見ても「あー、はいはい」という、そんなひねた私も『アナスタシア』にちょっと黙ったのである。体の中の、「ロマンチック」の干乾びた函が、魔法の水で蘇る。 革命のロシ…
下級貴族の妾腹の子光蔭(浜中文一)と、下人として使われる孤児草介(辰巳雄大)、口のきけない不思議な力を持つ少女とわ(菅原りこ)の、千年続く人生ともつれた愛。ふむふむ。浜中のとても緊まった、これ以上ないトーンの声が、キーボード(伊藤隆博)、…
「でも、50代が見えてきたときに、俳優として自分を捉え直さなければ」と、 言うたね。そんなら私も言う。伊藤英明、身体が硬い。柔軟性がない。だから台詞を忘れたとき、ぽきっと真っ白になる。まず体を柔らかくする。それから、眼で戯曲を読んだ時に、「台…
おもしろいじゃないの!と感心するのだった。斎藤工ってすごいね、どこからどう来てどうなった人なの?とか、そらこれだったら福山雅治出資するやろ、とか思った。後半、ものすごく面白い。手に汗握る。意外な展開。そして怖い。夫(窪田正孝)は妻(蓮佛美…
恋が浮世か浮世が恋か、とうっすら流れる地歌が、じわっと100席の洒落た円形劇場の空間を変える。玉三郎が、うちの狭いリビングに来たみたいに近い。肩が黒(いい黒!)で、下のほうが薄い藤色になっている着物は、「こぼれ松葉に梅」の裾模様だ。清長の浮世…
図式。日本人が国を奪い、その民を虐殺する朝鮮から帰ってきて、福田村で百姓になると決意している元教師澤田智一(井浦新)は、いつも画面の端にいる。空白の心を、それは示す。んー、そうだね、でも実のところ、そうした仕掛けは心を打たない、それよりも…
キタイニコタエル 日産スタジアムを埋める、5万だか、6万だかの観客を眺めながら、そこんとこを考えていた。5時48分、風は3メートル、気温30、1℃、ステージの温度は32,9℃だ。期待に応え、応えして、本日B’zはとうとう35周年ライブを行っている。会場に来…
「ははあ。」というのであった。時折劇場で見る西洋の俳優の体幹は分厚く、ツイードなどのジャケットを着ていても、ああジャケットが喜んでんなーと思うくらい、「隆(りゅう)としている」。中井貴一が躰鍛えているとことさら言ってるのを見たことはないが…
さりげなく、とてもさりげなく客席を巻き込んで芝居は始まり、大きな無機的なパネルに囲まれ、グレーの机にグレーの椅子が置かれたその場所は、「稽古場」であり、「青森」であり、「東京」であり、また「舞台」「劇場」である。「宇宙」であり胸の裡である…
芝居のぉ!足がぁ!みじかぁああい!凧のしっぽがなくてぐるぐるまわってる!景色が見えない!これフランスの芝居でしょ?フランス人てみんな試験ですごーく哲学的思考とか論理的展開を勉強するんじゃなかったっけ?「芝居の芯」を運ぶ足、凧に重さをつけて…
入場時間の4,5分前に南座につく、こんなに暑いからだろう、もう開場したといっている、劇場の中はぴーんと冷やしてあり、左手に「とらや」の暖簾が見えて、えーとらやでお茶ができるんだなと思うのだ。席に着きながら上を見上げると、やわらかいアールで囲…
「宮崎弁で劇作する」、それについてわたし、誤解していたみたい。たとえばボール紙の円盤に、都道府県の名前が細かく割って書いてあり、その中心から赤い矢印が出ている。この矢印は動かせて、どの土地の上にも来る。そしていま、矢印は偶然「宮崎」の上に…
小さくひとすじ、音楽が鳴り、それが生で演奏されるギターの独奏だとわかる。音楽は舞台の内側に聴こえていて(神社の境内でただギターを弾く人だと台詞で説明される)そして舞台の外、観客の私たちの耳に届いている。ギターの演奏(水村直也)は、つぶやく…