アップリンク渋谷 『8日で死んだ怪獣の12日の物語』

『スワロウテイル』(1996)以来、岩井俊二からは目をそらし続けてきた。あれ、かっこいい男の子と、すてきな女の子が、果てしなく誉めあうのを、じっと見ているような映画だったよね。凝ったセットとセンスいい映像を、やっと日本の人が作れるようになった…

アップリンク吉祥寺 『劇場』

「劇団おろか」。もうここで笑う。自分たちを「おろか」と名付けるセンスと、実際にその名の劇団があっても不思議ではない現実っぽさとの絶妙のバランスだ。そしてそっと差し出される悲劇喜劇の木下順二追悼号、載っているのは別役実の戯曲だった。大げさで…

TOHOシネマズ日本橋 『コンフィデンスマンJP プリンセス編』

『マスカレードホテル』に次ぐ怪作。フジテレビってさー、いっつもこんな映画作っているの。こんな映画でも、現場のスタッフと、現場の役者ががんばってて、会社もお金持ちだから、少々の駄作は気にならないの。わたしは仰天したよ。 ランカウィに行くお金が…

CUBE PRODUCE『PRE AFTER CORONA SHOW THE MOVIE』リーディングアクト『プラン変更~名探偵アラータ探偵、最後から7、8番目の冒険~』 

間隔をあけて並び、開場と同時に入り口前で手指の消毒、検温(カメラ)、靴裏消毒(マット)、チケット確認(係員一瞥)、ロビーにて自分で半券キリトリ、グッズ受け取る(グッズの中にフェイスガード)。 フェイスガード、うまく組み立てられるかとくらくら…

アップリンク クラウド 『わたしはロランス』

フレッド(スザンヌ・クレマン)。彼女に尽きる。ハシバミ色の眼はまるで流体だ。恋人ロランス(メルヴィル・プポー)をゲイと疑って悲しむときは深く徹った泉に見え、あれこれの重いトラブルに眼差しは沸騰する。秘密の旅を囁かれて瞳はちらりと左から右に…

アマゾンプライム 『ドリーム』

カメラはいつでも「写る人」を選んでいて、そこに「写らない人」のことを忘れさせる。西部劇には東洋人はいない。NASAの映像で黒人の人を見たことはなかった。しかし、フィドルの音色の中に胡弓の声をふと聴くことがあるように、『ドリーム』は、「写らない…

アマゾンプライム 『ロケットマン』

レジー・ドワイト少年はいい耳をしている。いったん聴いた音楽はすぐ再現することができる。母(ブライス・ダラス・ハワード)は彼を愛していない。父(スティーヴン・マッキントッシュ)は家庭に見向きもしない。レジーは王立音楽院に進み、ロックンロール…

アマゾンプライム 『グリーンブック』

2013年『それでも夜は明ける』。地面に爪先立ちになって動きつづけないと首に掛けられた縄で窒息してしまう罰、解放された主人公を追いかけて絶望の余り泣く女の奴隷。黒人による、奴隷を扱ったこの映画を見て、2013年まで黒人の目で語る奴隷制の映画を「ま…

アマゾンプライム 『わたしは、ダニエル・ブレイク』

大工のダニエル・ブレイク(デイヴ・ジョーンズ)は心臓病で働けない。国から支援を受けようとするが、国はまるで何とかして補助するまいと決意しているかのようにダニエルを阻む。高齢のダニエルには、オンラインで書類に書き込みすることからして難しい。…

アマゾンプライム 『イエスタディ』

「はい、円の面積はπrの二乗、この公式、先生が発見したんやったらよかったけどね」 と、つまらなそうに言う数学の先生がいたなあ。と思い出すビートルズのいなかった世界の物語『イエスタディ』。だあれもビートルズのことをおぼえていないのに、たった一人…

アップリンク クラウド 『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』

セルゲイ・ポルーニンの跳躍と回転を見て! 乱暴なくらいの勢いをつけて、空中に放り出された片足の中心で、残りの体が美しくデリケートに旋回してゆく。 このドキュメンタリーはホームビデオからテレビまで、いろんな映像を使ってダンサー=ポルーニンの足跡…

アップリンク クラウド 『白い暴動』

「移民を全員拘束して国外へ出す。18世紀末の流刑のように」こんなこと眉一つ動かさずいってのける政治家(イーノック・パウエル)に支持を表明するってどんなんだ。まあ、「自分の知っている場所」が変わってしまうというのは怖いものだ。恐怖。深い所から…

youtube 『オペラ座の怪人 25周年記念公演inロンドン  The Phantom of the Opera at the Royal Albert Hall』

ええーそうだったのと、最後のインポーズを見てびっくりしている。ファントムの顔は半分見えなくて、見えるほうの半分にも細かい疵がぶつぶつとつけてあり、唇は斜めにめくれているのだ。張った声をよく聴けば分かったかもしれないけど、このファントムにこ…

アマゾンプライム 『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』

絵筆がブリキ缶にあたる微かな音。曲がった腕で一人の女が絵を描いている。絵の具の色はつやつやと赤く、筆の先にたっぷりと溜まる。女の指の第二関節に、ターコイズグリーンの絵の具がくっついている。これ、夢の色だ。 『しあわせの絵の具』。うっげー。こ…

アップリンク クラウド 『シーモアさんと、大人のための人生入門』

「うそくさい」 ピアノの前で、聴衆に向かってシーモア・バーンスタイン先生の紹介をするイーサン・ホークの声にケチをつけるのであった。 シーモア老人の声は、どこで何をしていようとピッチが変わらず、拍は緩やかで優しく、誰に対しても同じだ。これさ、…

youtube  二兎社 『立ち止まる人々』

3月28日、29日に池袋芸術劇場シアターイーストで行われるはずだったドラマリーディング公演が、ネットにあげられている。只なの?お金払うのに。芸術ちゃんと「補償」されてほしいよね。 いろいろおもしろかったんだけど、中では『鷗外の怪談』がすーごくよか…

アマゾンプライム 『嘘八百』

「女の子」。 こうやってかぎかっこで括ると、なんか閉じ込められてる感じするよね。この映画の主人公小池則夫(中井貴一)にも「女の子」(森川葵=いまり)がいて、誰にも必要とされていない。この普通の女の子が、ばーん!意外な働きをするのだが、みてて…

日生劇場 『ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド ~汚れなき瞳~』

セブンの前で、何故不良がしゃがんでいたかというと、それは何かのデモンストレーションでもプレゼンテーションでもなく、ただ、そういう風にしか座れなかったからである。体と心は、関係ないみたいだけど、関係してる。 三浦春馬の演じる「男」(The Man)…

赤坂レッドシアター T-WORKS#3 『愛する母、マリの肖像』

勇者。古川健が母と娘の関係につっこんできた。 ねぇねぇ、仲よさそうに見えても、母と娘は大変なんだよー。母が「なんてすごいヒールなの」と言い、娘が「これくらい普通よ」と返したとしても、娘の心の手帳には裏抜けするくらい濃い文字で「呪われた。」と…

アマゾンプライム 『マスカレード・ホテル』

さんまが見つからん。手持ちのタブレットなんかでこじんまり観るからである。大きい画面で観なおすと、た易く彼は現れ、あっさりした大団円に拍子抜けしてもう一度頭から映画を辿る。 こんなもんじゃなかろー。 もっと大きい謎々が仕組まれているはず。何か…

Pカンパニー 『京河原町四条上ル近江屋二階――夢、幕末青年の。』

京都だねーと、なぜか一見してわかる二重を組んだ舞台、階段に明かりがあたっている辺りを見るとどうやら赤いみたい。天井のサスにも赤い色が反射しているもん。それが京の橋と血塗られた幕末をすぐイメージさせる。二重の台は高さが揃っていて、死んだ人た…

吉祥寺オデヲン 『1917 命をかけた伝令 』

知もあれば勇もある、情け深くて面白い、源平合戦の登場人物を、あっさり戦斗で死なせてしまった作家がいた。後々になって作家は言う、「あれを死なせるのではなかった。」物語はその人が生きてた方が数倍面白かったはずだけど、彼はどうしたことか生き長ら…

渋谷HUMAXシネマ 『グッドバイ 〜嘘からはじまる人生喜劇〜 』

小池栄子優勝。小池栄子がテープを切らんとするその瞬間まで、隣を大泉洋が顎を振ってちらちら小池を見ながら力走する。 扁平の麦わら帽をかぶり、オレンジ赤のワンピースを着て路地を歩いてくるキヌ子(小池栄子)の美しさ。映画「おてんば娘の大冒険」の画…

下北沢 駅前劇場 綾田俊樹・ベンガルによる綾ベン企画vol.14 『川のほとりで3賢人』

綾ベン企画vol.14『川のほとりで3賢人』、前売り・当日4500円、初日と二日目16:00のみ特別料金4000円。 公演の前半、割引する若手劇団は多い。たぶん、芝居が固まってなかったりするからだろう。今回のこの割引は? …かたまってなかったね。全篇、味でなん…

シネ・リーブル池袋 National Theatre Live In Japan 2020 『リーマン・トリロジー』

いそがしやいそがしや、磯辺の石に腰かけて、心静かに糸を解くなり 縺れた凧糸、縺れた首飾り、縺れた刺繍糸、そういうのを年寄りの所に半泣きで持ち込むと、こう唱えて解いてくれたもんだった。 舞台の上にはバンカーズボックスに見える(アメリカ人が馘首…

Bunkamuraザ・ミュージアム 『永遠のソール・ライター』

X E L F A R C と、カメラの商標文字が裏返って反対。鏡の柱に向かって写真を撮るソール・ライターがいる。ソール・ライターは何気ない。(俺の写真さ。セルフ・ポートレートだよ。)襟がとんがって長い。はやりの綿シャツの胸の上にカメラを構え、ファイン…

劇団東京乾電池 第30回下北沢演劇祭参加作品『卵の中の白雪姫』

深緑の古びた街灯と小さい木の椅子、舞台面は木の床が出ている。上手奥の登場口から、七十年代風に髪の長い女の人がギターを持って出て来て唄う。おー。気負いゼロ。淡々と「友達のお父さん」の歌を弾き語る。こんなに肩の力が抜けてて、こんなに世界と自分…

てがみ座第16回公演 『燦々』

大きな劇場にかかっているのが、まざまざと見えるような作品だった。品もあるうえ、格も備わる。てがみ座の人々が懸命に頭上に支える『燦々』は、いつかふわっと浮き上がって飛び立ちそうになっている。 この再演(リブート?)版では主人公お栄(前田亜季)…

劇団民藝 『白い花』

渡辺正行が「無理」と「我慢」のコーラの一気飲みを広めてからというもの、それは平凡な光景になったのかもしれない。 劇団民藝『白い花』では、主人公百合(中地美佐子)が、心の乱れを吹っ切るように、ラムネ三本を次々に一気飲みする。 ラムネ三本? 中地…

そぴあしんぐう 『風間杜夫の落語会』

イケアのある町。といえば、イケアに行ったことある人なら想像つくと思うが、そういう町だ。大体、私にしてからが、香椎花園より先にある町が、目の端からこぼれちゃってるのであった。 うつむきながら鮮やかな青と黄色のイケア脇を寒々と通り抜け、カインズ…