浅草九劇 札幌座・道産子男闘呼倶楽部 『五月、忘れられた庭の片隅に花が咲く』東京公演

鄭義信の濃い芝居。夕張の炭鉱、事故、そして静かに凋落してゆく街を、崩壊した小さな家族の中に映し出す。どこも手堅く、しっかりできていて、綻んだ関係をまるでギリシャ悲劇のように語る。これ鄭義信の得意技だよねー。いつも通り。でも、ものすっごく集…

彩の国さいたま芸術劇場 大ホール 彩の国シェイクスピア・シリーズ『へンリー八世』

悩みって集中力だよね。何をしていても、「それにつけても…」と悩みに戻る力、そしてわざわざ悩みの中へとまた入って行く力、集中力があるから悩みが生まれる。 阿部寛の王さま(ヘンリー八世)は、集中力が今一つ。冒頭の暗がりから現れる王の叫びは、赤ん…

KAAT神奈川芸術劇場 ミュージカル『夜の女たち』

舞台上が、フィルムのコマを白味と黒味につなげた碁盤縞だ。青みを帯びた舞台が、去っていった夥しい死者を思わせる。そして、コマの一つ一つが、戦場や空襲や飢え死にの惨劇を映しているように見えてきた。日本(語)の土壌から生まれた音(声)が、台詞に…

本多劇場 イキウメ『天の敵』

「永遠と」っていう、今日びの言い回しが一か所だけ入ってて、すわりがわるい。これくらいのさりげなさで、それぞれの時代の言葉がかすかにあってもよかったねー。『天の敵』は一世紀にわたる一人の男の物語だけど、時代色が薄いからさ。それともこの気持ち…

Bunkamuraシアターコクーン 『血の婚礼』

木村達成、「かっこいい」のポテンシャルが高い。私がファンなら「全通」だ。でも、一方で、「かっこいい」を大事にしてる役者のことは(どうだかなあ)と思ってもいる。それでもこの『血の婚礼』の木村、ただ一人名前のあるレオナルドはつきぬけてかっこい…

TOHOシネマズ渋谷 『ブレット・トレイン』

真田広之、おじいちゃんの役受けるのやめなよ。と、ちょっとむっとしているのであった。列車「ゆかり号」の狭い通路で、右から左、左から右と敵を薙ぎ倒す太刀筋を見てると、シャープで修練されていて、まだおじいちゃん早いだろ。 東京を出発した新幹線に、…

配信 パルコ・プロデュース2022 『VAMP SHOW ヴァンプショウ』

1992年。初演観ました。みんなで女を「まわしちゃうぞ」という表現が凄い嫌だったのと、藤井かほりの事を(これ儲け役だなあ)と思ったなあ。コンパクトで片付いた芝居で、おもしろかった。駅長はこんなに出てこなかった、そして「まわしちゃうぞっていやだ…

角川シネマ有楽町 Peter Barakan's Music Film Festival  『モンク/モンク・イン・ヨーロッパ』

発表します。わたし、セロニアス・モンクがにがてー。すきになれないー。勿論、セロニアス・モンクがたどたどしく弾く、落ちて輝く水のようなピアノはとてもいいとは思う。けど、モンクの作曲現場(メンバーの一人がコードを書きとり、モンクが自分の身体の…

角川シネマ有楽町 Peter Barakan's Music Film Festival  『真夏の夜のジャズ』

「ジャズ好きじゃないもの、冷やかしよ」 ジェリー・マリガン(バリトンサックス奏者)が好きだという青年の声に続いて、甲高い娘の声がする。私もね、ジャズ好きかどうかわからないよ。今日の『真夏の夜のジャズ』鑑賞も、彼女と同じ、冷やかしかもしれん。…

自由劇場 ミュージカル『ダブル・トラブル』2022夏 Season C

明るさが、二段階に調節できるサーチライトみたいに、原田優一の喉が二段に開いて、客席を眩しく照らす。準備万端だね。テンションと集中力もきっちりだ。二人(原田優一、太田基裕)とも生き生きと芝居する。初演より、前半躍動しており、面白くなってる。 …

角川シネマ有楽町 Peter Barakan's Film Festival 2022 『さらば青春の光』

夜、お出かけしている間に、家が16,7歳の鴉みたいな若者でいっぱいになり、酒を飲んでセックスをし、花壇をスクーターでめちゃくちゃ荒したら、と思うと、顔が青ざめる感じ。もう私はジミーになれない。しょうもないおとなだよ。システムだ。がっかり。 ジ…

角川シネマ有楽町 Peter Barakan's Film Festival 2022 『アメリカン・エピック1~4』

あのー、わたし今日長く映画館に居て、アタマもうろうとしてるかもだけど、『アメリカン・エピック』はほんとに観てよかった。1920年代、ラジオが家庭の娯楽の首位を占めると、レコードの売り上げはみるみる落ちた。そこでレコード会社は地方にスカウトを派…

角川シネマ有楽町 Peter Barakan's Music Film Festival 2022  『ブリング・ミンヨー・バック!』

風の盆の一週前の富山駅は、静かに手をかざして踊る八尾の人たちの映像でいっぱいだ。(へえー)お土産買いながら見入った後で、ふと一瞬涙出たりするのであった。なんだろ。あんなに見物人いるのに、見せようと思っている人がおらん。人のために踊ってない…

俳優座劇場 劇団昴公演 SUBARU No.37 2022 『評決』

弁護士資格剥奪寸前まで追い詰められ、所長の娘とも離婚したフランク・ギャルビン(宮本充)が、酒浸りの日々を過ごすうらぶれた事務所の光景で、急速に違和感を感じる。 (だ、脱輪してる) 訴訟の御用聞きのため葬儀場に電話する声は滑舌がきちんとしてる…

世田谷パブリックシアター シアタートラム 『毛皮のヴィーナス』

支配したい(サディズム)、支配されたい(マゾヒズム)、ふーん、どっちもね、とすっかり冷静なんだけど、すっかり冷静じゃあ、この芝居全然わからないのだった。なんか、芝居の裏打ちに、「ディオニュソス的赤」が縫い付けてある。黒いキャンバスをナイフ…

Bunkamuraシアターコクーン COCOON PRODUCTION 2022 +CUBE 25th PRESENTS,2022『世界は笑う』

舞台端にどーんと掛けられた大きな時計の時間が、観客の時間と同期する。KERA、時間を融かしたのであった。 昭和三十年代、笑いの劇団三角座の、台本を配って徹夜で稽古を始めるまでの、3、40分がぴったりこちらに貼りついてくる。そして、地方公演の長野の…

新宿シアタートップス TAAC 『人生が、はじまらない』

作者が、井戸の中のひどい話に近寄らぬよう、井戸屋形をかけて遠巻きにしてるのに、その遠巻きにする残酷さが、さらに芝居を地獄の様に残酷にしている、ってかんじかな。作者は登場人物に決して近寄らない。ネグレクトした母親にも置き去りだった長男にも次…

東京芸術劇場プレイハウス NODA・MAP第25回公演 『Q:A Night At The Kabuki』

『Q』はずいぶん変わったねー。「クイーン」、そして『オペラ座の一夜』がバンドの四人を一つの脳髄に納めているように、『Q』で繰り広げられる極彩色の源平合戦は、「それからの愁里愛」(松たか子)という女の頭の中から吹きこぼれてゆく物語だ。それは寝…

ヒューマントラストシネマ渋谷 『エルヴィス』

時間軸をいくつも並行させたり、きゅっと束ねたり、画面を割ったり、バズ・ラーマンはいくつもの書体で小説を書く「実験の人」みたいだ。畳み掛けて強調するのがとても上手。エルヴィス・プレスリー(オースティン・バトラー)を世界的なスターに押し上げた…

Bunkamuraル・シネマ 『魂のまなざし』

木桶の上で白い皿をこそぎ洗う音、大きなたらいの水を家の表に空ける音、モップで床を「磨る」音、敷物をうち振る音、髪をブラッシングする音、ベッドに入る衣擦れ、鉛筆を素早く動かす音、全てのものに音があって、それはこう囁いているみたいだ。(シャル…

下北沢駅前劇場 TRASHMASTERS vol.36『出鱈目』

中津留章仁、劇作家、49歳。えええー?芝居は手練れらしく4層ほどの絵巻物、又は4層の立体紙芝居のように作られ、進めば進むほど葛藤が深まるように設計されてはいる。とある地方都市、x市の市長広末孝雄(カゴシマジロー)は、沈みゆく市を活性化するため、…

新国立劇場オペラハウス 2021/2022シーズンオペラ クロード・アシル・ドビュッシー 『ペレアスとメリザンド』

このオペラを観る前に、予習としてペーター・シュタイン版(1992)を観た。あそこでは勝手に結婚したゴローに対し、アルケル王が、(我々は)運命の片側しか見えぬといっていて、それが芝居全体を通して一部分が常に覆われているという演出に適っていた。こ…

新国立劇場 小劇場 『M.バタフライ』

愛って幻影かもだなー。と思って劇場を後にする。芝居だって幻影だ。二人の人間をすれ違わせたまま置き去りにする。陽炎のように幻影がいくつもいくつも立ちあがり、『M.バタフライ』を形作ってゆく。1983年にフランスで発覚したスパイ事件に想を得て、「征…

本多劇場 オフィス三〇〇 『私の恋人beyond』

えー、脳?渡辺えりとのんのアフタートークを聞いて、吃驚するのであった。そういえば、そういうちいさい塊が、下手(しもて)の方で見えた気がするなー。「わかってほしい」というよりも、「わかられたくない」と自己を韜晦する、アングラの魔術のような手…

歌舞伎座 六月大歌舞伎 第三部 『ふるあめりかに袖はぬらさじ』

こころざし。志は船の汽笛となって、男を女から遠ざけ、女の思うのと違う方角へ男を連れ去る。芝居の中で、汽笛は長く短く、高く低く鳴り、男を引き剥がしてゆく。 横浜岩亀楼の花魁亀遊(河合雪之丞)は病みついて行燈部屋に寝かされている。見舞うのは廓芸…

世田谷パブリックシアター 『室温~夜の音楽~』

観に行くと大抵が上下二層に割られている河原雅彦演出の舞台の中で、今回のセットが一番緊(しま)っていていいよ。内、外、二重に混ざって見えるよう、ぴしっとまとまっている。或る家の洋間の壁の続きに崖の擁壁のコンクリートパネルが素知らぬ顔でつなが…

新橋演舞場 東京喜劇 熱海五郎一座新橋演舞場シリーズ第8弾『任侠サーカス キズナたちの挽歌』

前説の東貴博がほっそりしてハンサムなので、えっ、ふーんと驚くのだった。しかし話は低調で、大谷選手でなく小谷です、それはよくあるやつさ。東の説明する「花道を通ってもいいが台詞喋っちゃだめ、ただ通るだけ、『口パク』に音効つけます」っていう、新…

CINE QUINTO 『シェイン 世界が愛する厄介者のうた』

シェイン・マガウアンはまだ60歳なのに、よれよれの折れそうにかよわい老人に見え、年来のポーグズファンの私はショックの余り大風に吹き飛ばされたような気持になる。シェイン、こんなになっちゃって。でもさ、この「吹き飛ばされたような感じ」は、シェイ…

Bunkamuraル・シネマ 『さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について』

上司の腹の、やっと塞がった赤紫の傷口に、白い軟膏を塗らされる。煙草会社のコピーライターであるヤーコプ・ファビアン(トム・シリング)は、そんなことまでやったのに、馘首を宣告される。この、理不尽なものを親切心から引き受ける行為いろいろが、何か…

PARCO劇場 パルコ・プロデュース2022『てなもんや三文オペラ』

マック(生田斗真)、とても大きな役だ。そして、とても重い役である。『三文オペラ』の「マック・ザ・ナイフ」でありながら、太平洋戦争の南方からの帰還兵で、鉄くず盗賊「アパッチ」を率いる向う見ずな男でなければならない。戦地から帰ってきた男たちは…