紀伊國屋ホール ラッパ屋 第46回公演 『コメンテーターズ』

ワイドショーのプロデューサー真行寺(岩橋道子)はお買い物好きという設定で、両手にたくさんのショッピングバッグを持って登場する。ショッピングバッグの大きさは均等で、「お買い物好きのリアリティ」ははっきりいってない。しかし、その嵩張るバッグを…

Bunkamuraシアターコクーン COCOON PRODUCTION 2021『物語りなき、この世界。』

あのー。「人は無意味に耐えることはできない」っていう、古い推理小説を読んでから、あっそうなのねと物語を疑うことをしてきませんでした。それと世の中の物語を求める人、物語に乾いている人って、不幸せな人が多いと思う。いいとか悪いとかではなく、今…

新国立劇場小劇場 新国立劇場 演劇 2020/2021 『反応工程』

「あっホールデン・コールフィールド」正枝(天野はな)が田宮(久保田響介)に「逃げずに戦争へ行け」と破れた赤紙を握らせるところで、場面は凍り、孤独の中に田宮は残される。サリーは来ない。小学校しか出ていない正枝と大学へ進むであろう優秀な田宮、…

帝国劇場 『レ・ミゼラブル』

ものすごい音量で荘重な前奏が聴こえるとスクリーンに波しぶきが見え、ヴィクトル・ユーゴーの本の世界が観音開きになって、「レミゼラブル」がなだれ込んでくる。 ガレー船漕ぎ、いちいち芝居が大仰だよと言いもあえず、全てのシーンが並列に矢継ぎ早に繰り…

シアタートラム 劇団チョコレートケーキ 第34回公演 『一九一一年』

男は泣かぬがよし とされた明治末期にあって、大逆事件の予審判事を務めた田原巧(西尾友樹)の目の裏側、身体の内側に、さんさんと涙が流れ落ちている。後悔、無念、慙愧、それらすべての思いを込めて、「内側に涙が流れる」。その涙の音を観客は聴き、気配…

シアターオーブ 『ジーザス・クライスト・スーパースター・イン・コンサート』2021

んー。今日のラミン・カリムルーちょっと上ずってない?しかも、それが役柄のユダの動揺してるのとなぜか同調していて、動揺だか上ずってんのかどっちかわからない仕上がり。冒頭のギターソロは重さを掛けずさっと進め、照明はテレビだったら怒られるくらい客…

世田谷パブリックシアター 『森 フォレ』

装置家のつくりだした、大きな木の年輪の、傾いた舞台セットが、理詰めでこの芝居を説明してくるにもかかわらず、私のイメージはずっと、ここは(子宮)の中なのだという、どっちかっていうと強迫的な感じであった。「子宮」という日本語は、かつての男たち…

座・高円寺1 劇団扉座40周年記念 『解体青茶婆』

洋学史上、医学史上に大きな名を残す杉田玄白(有馬自由)は、83歳となっている。彼が『ターヘル・アナトミア』を翻訳したいきさつを記した『蘭学事始』には、記載されていない事実が多く、前野良沢の名前もない。それを校訂すべく、弟子の大槻玄澤(山中崇…

あうるすぽっと serial number06 『hedge1-2-3 sideA hedge/insider』

や、台詞の言い方修正したんだね。わざとらしいところがなくなってる。と思ったのもつかの間、次の瞬間物凄い悲哀が訪れる。資本を「投入」が、「豆乳」に聞こえる自分の人生に、ショックを受けるのだ。愛とお金と健康、大事な三つの物のうち、私、「お金」…

角川シネマ有楽町 Peter Barakan's Music Film Festival 『ランブル RUMBLE  The Indians Who Rocked The World』

もちろん今では多くの人がネイティブ・アメリカンと呼んでいて、と頭では分かっているけれど、遠く離れた島国の、そのまた押入れの中に棲んでいるような私には、子供のころに柱にピンで貼った童画のイメージが抜けず、苦労する。ちいさな水彩画の中では、赤…

角川シネマ有楽町 Peter Barakan's Music Film Festival 『BILLIE ビリー』

図書館の本の、「お父さんとお母さんがほぼ子供」ってところでびっくりした中学生はそのあとその人のことをすっかり忘れていた。20代、90分のテープをオートリヴァースにして、どれだけかけっぱなしにしても全然いやにならない音楽が、「ビリー・ホリデイ」…

角川シネマ有楽町 Peter Barakan's Music Film Festival 『マイ・ジェネレーション ロンドンをぶっとばせ!』

ゆりかごから墓場まで という、たった10文字ほどのスローガンが、どんだけ大きな波紋と事態を呼んだか、この映画で突然、ぴかっとわかった。教育の充実と福祉の完備が、次世代(マイケル・ケインの世代)をでかく育てたのだ。日本の保守派の作家すら、「イギ…

KAAT神奈川芸術劇場〈ホール〉 『イスラエル・ガルバン 春の祭典』

「宇宙ではあなたの悲鳴は誰にも聴こえない」というTシャツを着てる女の子を町場で見かけて、こわ!とビビったのだが、イスラエル・ガルバンの踊りを見た後だとさあそれはどうかなと思うのだった。さあそれはどうかな。 舞台にはおおよそ三つの円が光に照ら…

Bunkamuraル・シネマ 『アメイジング・グレイス アレサ・フランクリン』

LAの小さな教会に立つアレサ・フランクリンの顔は、硬く、これから起きることへの不安で小さく見える。そこ、私は本当に驚いた。あのアレサ・フランクリン、ソウルの女王、全力過ぎて「ニュアンスないやん」とこっそり貶していた大歌手が、心配の余り脅えた…

日本青年館ホール 『スマホを落としただけなのに』

上手(かみて)、下手(しもて)に向けて段々が高くなる二つの階段状のセットも、その上の平場の二脚ずつの椅子も、中央の机も、出入り口も背景も、あらゆるものが白い。そこに青い光があたって、今舞台にある全てのものが、ほんとは透明なんだといいたそう…

日本橋TOHO 『アメリカン・ユートピア』

ディヴィッド・バーンが、机を前にして椅子に座る。カメラはその映像を真上から撮る。ディヴィッド・バーンは両手をきちんと机の上に出している。手の間に脳の模型がある。カメラが切り替わり、彼は模型を左手に取る。 ディヴィッド・バーンが「脳を見せてく…

新橋演舞場 新橋演舞場シリーズ第7弾 東京喜劇『Jazzyなさくらは裏切りのハーモニー ~日米爆笑保障条約~』

「そんなんじゃないから俺たちの笑いは」 これまで3回熱海五郎一座の芝居を観たけれど、今日のはこんな声が聞こえてきそう。まず、角ばった五輪マークのある持ち運び卓を、首から提げた外国語訛りの男が出てくる。スーツだ。演じるのは深沢邦之である。この…

MANDOLIN 『FROM THE REHEARSAL ROOM:TOKYO』②

ラミン・カリムルーとハドリー・フレイザーが、東京のリハーサルルームから配信で歌を届ける第二部。 最初の一曲目は『ラ・マンチャの男』から「The Impossible Dream」をデュエットした。かわるがわる歌い、[ And I know…] から高音をハドリーが、主旋律を…

東京芸術劇場 プレイハウス NODA・MAP 第24回公演『フェイクスピア』

神の言葉はひどく遠い。 「FAKESPEARE」という、一種の看板が、舞台の頭上高くかかっている。誰にも聞かれない言葉 を射程に置きつつ、芝居のことを考える。誰かが泣きながら語る、すると客席の私たちはその言葉を聞く。誰かが独り言をいう、やっぱり私たち…

MANDOLIN  『FROM THE REHEARSAL ROOM:TOKYO』

(ミュージカルの『レ・ミゼラブル』観たことない…。)弱気になりながらアメリカの配信サイト「MANDOLIN」をチェックする。5月22日朝9時から、ラミン・カリムルーとハドリー・フレイザーの『ザ・リハーサルルーム』を聴くためだ。今日がパート1、29日…

よみうり大手町ホール 『ダブル・トラブル』ハリウッドチーム

あれっ。そりゃあコロナかもしれないが、客席の真ん中から後ろを見て、3分の2くらいしか入ってないの、おかしいと思う。それくらい面白かった。 ブロードウェイチームと違うのは、やっぱ勢いだね。お祭りで売ってる四方八方へぴろぴろって舌が飛び出す紙の…

よみうり大手町ホール 『ダブル・トラブル』ブロードウェイチーム

ジェーン・ラッセル、アステアと、15、6枚の額入り写真の飾られたシックなリハーサル室(録音ができ、ピアノや小さなカウチや、大きな机、木製レリーフの壁、木の切嵌めの模様など素晴らしい)がミュージカル全盛のハリウッドのお金持ちぶりを再現している…

PARCO THEATER 『ピサロ THE ROYAL HUNT OF THE SUN』

万里の波濤を越え、二週間の退屈な待機に耐えて、インドよりもコロナの猖獗する国にやってきた異国の客人。初日の芝居を観るために、劇場の真ん中あたりに座を占めるウィル・タケットの、きりっと立てた背筋を見ながら、「異国」について忙しく考えるのだっ…

彩の国さいたま芸術劇場 大ホール 彩の国シェイクスピア・シリーズ第37弾 『終わりよければすべてよし』

曠野である。ひとすじの風、空気を孕んだ何者か、または笛のような音がして、真っ赤な野の草をふと揺らす。 あっ にながわさん 一瞬空を見上げるような気持になり、「ここ」があの世とこの世の通路であることを感得する。赤い野原(曼珠沙華らしい、そう見え…

アマゾンプライム 『ハリエット』

奴隷のミンティ(シンシア・エリヴォ)は自由黒人のジョン・タブマン(ザカリー・モモー)と結婚しているが、どうしても自由にはなれない。農場主が死に、売られることになったため逃亡を決意する。農場で虐待を受けた後、昏倒して眠る病気を持つ彼女は、牧…

渋谷La.mama 『KERA solo live My living trick A Night of Small Show』

メモ取りながらドリンク持つの無理。と早々に引き換えをあきらめ、上手後ろの隅っこに、リュック背負って立ってる。 アウェー。 だってあたし演劇部上がりの演劇班だもん。KERAが劇団立ち上げた時、どのくらいawayだったか、ちょっとだけ考える。 そよそよと…

本多劇場 ゴツプロ!第六回公演 『向こうの果て』

舞台後ろに重なり混み合う無数の根っこ、上手から三分の一あたりにすきまがあるけれどそのすきまは思い切って暗く、そこに手でさわれない、見ることもできない、闇の根が張っているように感じられる。その根のあるところは津軽だということになっている。瞽…

シネクイント 『BLUE  ブルー』

一けた台の体脂肪率、鋭い目つき、早いパンチ、ボクサーを演じる東出昌大は、『聖の青春』の頃より三割増しでよくなっていると思う。どうしても試合に勝てない友人瓜田(松山ケンイチ)のノートを見て、「睫が濡れてるだけの」泣くシーンなど、センスもアッ…

Bunkamuraシアターコクーン COCOON PRODUCTION2021 『シブヤデアイマショウ』

神泉に向かう、八重桜の咲く道で、殺人事件の規制線が張られているのを見てから、もう24年かぁ。 大きな家具の下で縒れて波打ってる敷物みたいに、渋谷の街では様々なことが起こった。動かせない大きな家具的に渋谷には大小様々の建物が立ち、その下にある「…

新国立劇場小劇場 シリーズ人を思うちから 其の壱 『斬られの仙太』

奥に向かってきゅっと上がる平面の上には、たくさんの人が迷った動線のような跡がついていて、これはもう「急こう配の坂」だ。俳優たちはその上で、転がり落ちないように気を付けながら、足に力を入れて、命のやり取りをするのであった。坂の上は定規で引い…