本多劇場 『東京原子核クラブ』

ひとりひとりの芝居が、飛び出す絵本みたいに、開いた途端、こちらの手を圧して扇形に広がる。ぎっしりだ。 特に、東大野球部エチオピア文学専攻の橋場大吉(大村わたる)が、野球部の友人林田(石川湖太郎)に頭を下げるシーンでの大村の芝居の精度はすばら…

東京芸術劇場 シアターイースト 二兎社公演44 『ザ・空気 ver.3 そして彼は去った…』

私と同世代の人、上の人、下の人、皆、学校で勇気を問われたことはないだろう。そんな世の中だった。勇気がなくても生きてきた。勇気がなくても生きていける。忖度忖度とみんなが言うけれど、問題の核心は忖度なんかじゃない。勇気である。勇気というと蛮勇…

ユーロライブ 浪曲 『玉川奈々福 ぜ~んぶ新作 新作フェス!! #3』

信濃の山路木隠れに 聞くは御堂の明けの鐘 はるかに見ゆる浅間山 燃えて身を焼く、 と、メモして顔を上げ茫然とする。眉を寄せて考える。情報が多すぎて自分の外に零れてるのを感じるのだ。鶴見俊輔って、零れてるものを大切にする人だったなあ。東大を頂点…

東京芸術劇場 プレイハウス Sky presents 『てにあまる』

単線の手漕ぎトロッコに乗っていたら、いつの間にかぴったりと球の中に閉じ込められていました。と思って観終わった。すごく面白かった。この芝居を面白くしているのは、まず登場する俳優たちの誠実さである。IT企業の社長鳥井勇気(藤原竜也)、離婚したい…

東京芸術劇場シアターイースト 劇団民藝+こまつ座公演『ある八重子物語』 

水谷八重子の芝居は昔よくNHKでやっていたけど、子供にはそれほど面白くなく、チャンネル変えがちだった。しかし、大人になってから、水色の着物を着て体をそっと折り、振り向いている舞台写真を見て、吃驚した。それこそ「臈たけた」、「愁いある」美し…

シアタークリエ 『オトコ・フタリ』

おおよそ200人の人物を動かして『篤姫』の台本を書き、ヒットさせた田渕久美子だけど、わずか3人の登場人物による2時間弱の『オトコ・フタリ』には手古摺ったようである。大体、この企画、どういうの?ミュージカルスターによる楽しいおまけ的な何かだったの…

紀伊国屋ホール 扉座40周年★withコロナ緊急前倒し企画『10knocks~その扉を叩き続けろ~ 10歓喜の歌』

見たところ1200円はしそうな立派なパンフレットが只。皆口ではいろいろ言うけれど、実際に無料にするというのはとても難しい。だって興行だもの。偉い。ひとしきり扉座の果断に感心し、すごいなーと思った後で、芝居(リーディングだけど)を観て考え直した…

有楽町朝日ホール イッセー尾形一人芝居 『妄ソー劇場すぺしゃる 2020』

お湯の出るカランと、上等の一枚で水気がふき取れるペーパータオルを完備した洗面所のある、ここは有楽町の朝日ホールだ。 会場中央の両端に華奢なカメラが据えてあり、記録用かと思ったら、暮れにテレビ放送すると最後にイッセー尾形自身が軽い感じで言って…

世田谷パブリックシアター シス・カンパニー公演 『23階の笑い』

フリーザーから出したばかりの仔牛のあばら肉で、奥さん(さいしょの)にぶんなぐられそうになった(いや、なぐられた?)ニール・サイモン(そのわけは出世作『裸足で散歩』などで、夫の台詞を読めばわかる)は、こんな芝居も書いていたんだね。 1953年、マ…

東京芸術劇場 シアターイースト パラドックス定数 第46項 『プライベート・ジョーク』

パラドックス定数、熱烈なファンがたくさんついている。終演後、脚本を買い求める女性の長蛇の列をみれば、わかります。しかし、何故こんなに人気なのかはわからない、世界には細緻な知識とその披瀝を楽しむ人たちが多いせいなのかな。この『プライベート・…

Bunkamuraザ・ミュージアム 『ベルナール・ビュフェ展 私が生きた時代』

「あー、はいはい」ビュフェのポスター、ビュフェの絵葉書、ビュフェのリトグラフを見るたび、足ばやに通り過ぎてきた。「絵が黒い→ビュフェとわかる→無視する」の連鎖反応。まあビュフェの黒も、一筋縄ではいかんということが、このたびのビュフェ展でわか…

シアタートラム 『現代能楽集Ⅹ 幸福論』

鈍色の空、鈍色の荒れる海。この海佐渡かな。息子元雅(『隅田川』を作ったことで知られる)を喪い、流刑になった世阿弥の心に映る海だろう。これは家族が解体する物語、そして生成する物語だ。 清水くるみ、頑張りました。地下アイドルとして13人のファンの…

アップリンク渋谷 『HITSVILLE:THE MAKING OF MOTOWN メイキング・オブ・モータウン』

デトロイトの自動車組み立て工場の生産ラインで働いていたベリー・ゴーディが、音楽レーベルを立ち上げる。自動車の完成までと同じような工程(アーティストの発掘、育成、品質管理など)を経て、爆発的な勢いでヒット曲やスターが生まれる。ゴーディの抜け…

ヒューマントラストシネマ渋谷 『ストックホルム・ケース』

「どうしてそうなったかわからないが、そうなっている。」っていう、説明の難しい、勢いのついた事態が、世の中にはままあるものだが、この映画もそんな感じだ。頭の中で最初から、何度も映画を転がしてみるけど、「そうなったわけ」がわからない。ストック…

劇団俳優座 No.343 『火の殉難』

あれっ、高橋是清がアメリカで「奴(やっこ)に売られた」という話は?高橋が幼時、馬に踏まれそうになった「強運」の話は? どっちも影も形もなくて、芝居は金融と戦争、そしてテロについて詳しく物語っていく。 うーん。よくわからん。古川健は司馬遼太郎(…

新橋演舞場十一月公演 『女の一生』 

森本薫、1946年10月34歳没。前年1945年10月のエピローグで幕を閉じる『女の一生』は森本の代表作。そうでしょう。主人公布引けい(大竹しのぶ)のみならず、脇役のそれぞれに複雑な味わいがあり、スルメのようにいつまでも頭の中で歯噛んでいられる。 日清戦…

渋谷HUMAXシネマ 『十二単衣を着た悪魔』

えっパンフレット売り切れ。客の入りがいいのかも。 就職試験に連敗中である雷(らい=伊藤健太郎)は、弟(細田佳央太)の京大医学部合格でへこむ。彼女にも振られた。現場の搬入アルバイトとして参加した源氏物語展(製薬会社がついている)でもらった源氏…

赤坂ACTシアター 『NINE』

透明で、皺の寄っているスクリーンが、客席と舞台を隔てる。この皺、この歪みが、客席と舞台をどこまでも遠ざけ、スクリーンにはACTシアターの客席が映る。スクリーンが揺れると、客席が湯気のように揺れる。蜃気楼。それとも幻。それとも映画。その向こうに…

北沢タウンホール 伊東四朗トークライブ 『あたシ・シストリー』

舞台の上がきゅっと、昭和で詰まってる。竹の庭門。物干しざおが竹のとビニールのと二段にかかる。ブリキのバケツ。上手の部屋には茶箪笥、その上に黒電話が乗っかっている。縁側の体(てい)で座椅子が四つ設けられ、ふっくらした座布団がある、と、なんか…

東京芸術劇場 プレイハウス 芸劇オータムセレクション イヴォ・ヴァン・ホーヴェ演出作品上映会 『じゃじゃ馬ならし』

まず、オランダで記録映像撮った人(と、今や全世界の演劇配信映像を撮るすべてのひと)にいっときたいのだが、ファーストシーンはあなたが考えている倍は大切なので、コマを割ったりしないでほしい。インタビューがかぶるとか最悪だ。まさにinvasionである…

東京芸術劇場 プレイハウス 芸劇オータムセレクション イヴォ・ヴァン・ホーヴェ演出作品上映会 『オープニング・ナイト』

三重の包み紙で包まれたがらんどうの籐製のボール(見た目セパタクロー!)の中に、赤いスーパーボールが飛び込む、という、人に説明しづらいイメージでこの芝居を観ました。包み紙は三重の現実、籐製のボールは主演女優ミルトル(Elsie de Brauw)、スーパ…

東京芸術劇場 プレイハウス 芸劇オータムセレクション イヴォ・ヴァン・ホーヴェ演出作品上映会 『声』

ハロー?という女(Halina Reijin)の電話を掛ける声が、音楽でかき消されそう。いつお芝居が始まったのか、正確にはわからないほどだ。私たちが生きる実人生と、舞台の女の人生が早くも混ぜ合わされ、二重になっている。しかし、舞台上には四角いがらんどうの…

渋谷パルコ8F WHITE CINE QUINTO  『ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった』

おうちに帰り着くまでが遠足です、とどこの町でも先生が口にしていたせいで、今誰かがそういうと笑いが起きる。お菓子を先に食べちゃう子、寄り道する子、鼻血出す子、いろいろだったよね。笑ったりはできないけど、ザ・バンドの軌跡は「帰れない」遠足みた…

KAAT神奈川芸術劇場プロデュース 『人類史』

虚空のように真っ黒の舞台。上手の奥から、四つん這いの生き物が一つ現れる。このサピエンス(知恵ある者)以前の何かであるらしい者たちの這い進む姿が、とてもかっこよく、美しい。頭より高い場所はどこにもないように見え、低い姿勢で斜め前に出す足先の…

シアターコクーン COCOON PRODUCTION 2020 『フリムンシスターズ』

分断と分裂。昼と夜(輝く二丁目の看板)、右の階段と左の階段、上手と下手で高低のついた二つの赤い戸口。グレーのコンクリートを模した壁に、一際鮮やかに海が描かれる。あー、この海がいろんなものを隔てているね。沖縄と東京、ゲイとゲイでないもの、日…

あうるすぽっと ロームシアター京都 レパートリー作品 『糸井版 摂州合邦辻』

4度、5度と繰り返される合邦(武谷公雄)の殺人シーンは、それが現在の東京に起きる子殺しでもあることを強調している。父(武谷公雄)と小さい娘(玉手=辻=内田慈)のシーンが長く演じられ、二人はセンチメンタルな歌の掛け合いで繋がりを訴えあう。これ…

ヒューマントラストシネマ渋谷 『スパイの妻』

常套句(クリシェ)でない。この作品が海外で評価されたのは、まずそこだろうと思う。この題材(日本軍の人体実験)は、日本では空気の薄い、誰も行きたがらない暗い場所にある。だからそこで起きる出来事を、まだ誰も見たことがないのだ。状況も主人公も、…

練馬文化センター小ホール イッセー尾形の妄ソー劇場

舞台下手に衣装ラック、小机に水のペットボトルが見える。その下にかつらがいくつか。中央に二重、両脇に一段だけ階段がついている。奥に信号機がうっすら傾いで立ち、開演前の地明かりは青い。イッセー尾形による会場内諸注意、あんまりおもしろくない。「…

日経ホール 〈振替公演〉J亭スピンオフ企画 12 白酒・三三 大手町二人会

座席の背もたれの背が高い。日経ホール、ここって何するところ?きっとセミナーや何かやっているに違いない。ネットで確かめたら月に3,4回お笑いライヴやコンサートもある。ふーん。辺りを見回す。演劇の公演では、いま、客席は水を打ったように静まり返って…

東京芸術祭2020 東京芸術劇場30周年記念公演 『真夏の世の夢』

開演前、勿論舞台は暗いけど、空調の換気の音やスイッチがオンのまま消された照明の立てる奇妙な唸り声が聞こえてくる。舞台の一番奥には銀色らしい四角いもの(調理台)が、客席の赤いシートを映している。何でしょうこの宇宙感。ここにすべての重力や光が…