新宿シアタートップス TAAC 『GOOD BOYS』

『にんじん』(ルナール)裏バージョン、とアゴタ・クリストフの作品を読んでちょっと思ったけど、タカイアキフミのこの作品は、『悪童日記』よりも『にんじん』に似てないか?「戦争」や「運ばれてゆく人」を描くことで、世界が外へ外へと吹きこぼれていく『…

THEATRE1010 『風が強く吹いている』

加速。「(略)…その時、自分の目に周囲はどう映り、自分の肉体はどれだけ血液を沸騰させるのか。なんとしても未知の世界を体感したかった。」 「走(かける)は自分が、相手との間合いを詰めようとしていることを感じていた。海中に超音波を投げかけて、そ…

新宿ピカデリー 『とべない風船』

三浦透子の撮られっぷりが凄い。古代文明の女神像のような顔で映っている。隠してない。守ってない。三浦透子自身であることを貫いていて、「三浦透子」という観音開きの箪笥の中に、「女の子」「俳優」が入っている。その逆じゃないのだ。どうやって至った…

坂本龍一 『12』

プールに入ると考え事をしちゃうから、頭の中で『ラストエンペラー』のサウンドトラックを、最初から最後まで流していた。「水の下にも都がある」感じしたなあ。すくわれた。その程度に、ファンです。「Energy Flow」も草臥れた時聴くんだけど、曲が高まって…

Bunkamuraシアターコクーン 彩の国シェイクスピア・シリーズ 『ジョン王』

通路沿いの席の足元に、ゴールデン・レトリーバーの盲導犬が静かに丸くなっている。すごく運のいい人と関係者が座る真ん中の通路からすぐの列に、タブレットが設えられ、聴こえにくい人のために字幕を提供する。だれがおもいついたのー、いいやんこれー、親…

東京芸術劇場プレイハウス 『宝飾時計』

人の躰の中には、行きつ戻りつする時間、「息づく」時計が棲んでいる。灰色に停止したり、手にとれるように蘇ったり、こつこつ進んだり、人間を振りまわし、人間に振り回されながら、時計は生きる。その上、この『宝飾時計』という芝居の中で演じられる「宝…

東急シアターオーブ 『ニューイヤー・ミュージカル・コンサート 2023』

今日の主役の四人(ベン・フォスター、アダム・ジェイコブス、レイチェル・タッカー、真彩希帆)が歌う、まるっきり序盤の、 「The world is a stage, The stage is a world of entertainment!」 のとこで、はやばやと泣いている。うんうんそうだよねー。そ…

下北沢 ザ・スズナリ 劇団東京乾電池公演『十二人の怒れる男』

あれ宮口精二(太いズボンに目に痛いような白いシャツの50年代)出ないの?的な、全体がセピア――白黒の映画の中へ入ってゆく感じ――の作り。そして、子供であった時より父になってからの人生の方が鮮明な人間の演出だ。冒頭、少年(19歳となってるが――高田ワ…

Bunkamuraル・シネマ 『RRR』

うぉー。頭の中の「プラッシーの戦い」とか「ムガール帝国」とか「セポイの反乱」とかのお勉強が、一撃であっさり四方へぶっ飛んでいく。走る!飛ぶ!苦痛!友情!最初、映画館で予告編を観た時、(どうなのかなあこれ)と思ったのだった。予告の中の英国兵…

有楽町朝日ホール イッセー尾形一人芝居 『妄ソー劇場・すぺしゃるvol.4』

会場につくと、イッセー尾形の手になるミニチュアの人形劇場がいくつも展示されている。早めに行った方がいいよ。開場時間も早い。イッセー尾形が作った紙芝居を、実際にこどもたちに見せている映像もある。こどもが茶々をいれるので、ちっとも先へ進まない…

シアタークリエ 『4000マイルズ ~旅立ちの時~』

構造が、わからねー。これ結局何の話だったか、ちゃんと演出されていない。役者に意図が伝わってないし、役者が分かっていたとしても演じきれてない。『4000マイルズ』、青春ビルドゥングスロマンやん。自転車でアメリカを横断中に、強烈な喪失体験をした若…

ユーロスペース 『天上の花』

破綻なくきちっとできてる。歯車がぴったりとかみ合い、するすると物語は進み、惹きこまれる。 詩人三好達治(東出昌大)は、16年思い続けた、師萩原朔太郎の妹慶子(入山法子)と結婚するため、妻子と離別し、海辺の僻村に疎開する。しかし、三好の思う慶子…

WHITE CINE QUINTO 『ミセス・ハリス、パリへ行く』

第二次大戦後、従軍したまま帰還しない行方不明の夫を待ちながら、ミセス・ハリス(エイダ=レスリー・マンヴィル)は家政婦として働く。ある日仕事先でディオールの美しいドレスを見たミセス・ハリスは、お金を貯め、パリのクリスチャン・ディオールへ、オ…

TOHO CINEMAS シャンテ 『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』

「かわいい猫の絵を一生描き続けた男」「愛妻と死に別れたが一生愛していた男」と、なんか、ファンシーでラブリーな映画を想像しちゃうけど、全然違う。これ、「生きるのが下手な男がどうやって世界とコミットしたか」という剛速球映画なのだ。妻(エミリー…

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA 劇団民藝公演 『モデレート・ソプラノ』

目隠し鬼みたいに、芝居が観客の私たちを、どこに連れて行くのか、分からない作り。何をしているのかわからないけど、とりあえず踏み出す人々の群像劇だ、と途中までは思うのだが、目隠しを取ると、意外な場所に立っている。大体人間は、目が見えないみたい…

本多劇場 KERA・MAP #010 『しびれ雲』

KERAの頭の中から生まれた架空の島「梟島」に、一人の怪我をした男が現れる。記憶を失い、フジオ(井上芳雄)と名付けられた男と、彼の周りの20人に満たない人間関係の、戦ぐ波乱と頭上に浮かぶ「しびれ雲」。島の住人の潮目になるという「しびれ雲」を見上…

世田谷パブリックシアター シス・カンパニー公演『ショウ・マスト・ゴー・オン』

再演の映像を、深夜のテレビで観たのかなあ。「松」、「トランプ」くらいの、断片的な記憶しか残ってない。楽しく観て、すっかり忘れてる。今回この28年後の再々演を観て、「ふーん」と感心するのは、ところどころに、ひんやりした匕首のような怖さが潜んで…

東京芸術劇場 プレイハウス 東京芸術祭2022 芸劇オータムセレクション『守銭奴 ザ・マネー・クレイジー』

稀代のけちんぼうアルパゴン(佐々木蔵之介)は、召使のお仕着せから食べ物からなにもかもにけちけちしている。娘エリーズ(大西礼芳)を金持の老人アンセルム(壤晴彦)に縁付け、自分は息子クレアント(竹内將人)の思う人マリアーヌ(天野はな)を妻にし…

紀伊國屋ホール 『管理人/THE CARETAKER』

「背景の壁に窓、その下半分は袋で覆われている。」(喜志哲雄訳)って、どういうことかと思ったら、茶色い麻袋のような布で、窓が隠されているのだった。窓の上の羽目板はむき出しになり、寸胴鍋や脚立や木箱、古くて端が縮れた新聞の束の山、皆ぼろぼろで…

東京芸術劇場シアターイースト 二兎社公演46 『歌わせたい男たち』

「立場」。立場が変わると意見が変わる。そんなのよく見聞きすることだけど、その立場が煮詰められて、のっぴきならない人たちがいる。学校の先生だ。永井愛は国歌斉唱問題の山場を2008年に設定しているけども、私の知ってる限りでは、式を巡る厳しい対立は…

恵比寿ガーデンシネマ 『土を喰らう十二ヵ月』

まず、「一年間かけている」ってことが映画に出てる。高速撮影がちょっと多いけど、いやじゃない。土に埋けた(?)里芋を出す、雪の下からほうれん草を採るところもしっかりリアルで、真っ黒の土をつけた芋を、一つ一つ流しで洗うとか、ほうれん草の根が白…

新国立劇場小劇場 シリーズ未来につなぐもの『私の一ヶ月』

うーん…何をどういっていいか…あのう…言うよ。 趣味が悪い。すごく悪い。泉(村岡希美)の夫拓馬(大石将弘)の死を、残された泉がこころの重荷として背負っている。それを、「風鈴(実物)をかける」ことで表現する。いやな気持になりました。これさ、もう…

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA  こまつ座 第145回公演 『吾輩は漱石である』

「手紙を披くと、あなたの声がきこえるけれど、二度三度と読むうちに、その声は消えてしまいます。」っていうのあったよね。わたくし、この芝居を観て、そのことを考えました。 私も(平埜生成がthe座 no.116で、本作が大好きだといっている)井上ひさしの評…

SCOOL 劇壇ガルバ 第4弾実験公演『錆色の木馬』

うゎゎゎ、むずかしいやん。と思い、こんな時論理的な人ならすぐ理解できるのに、と思い、鏡に向かって、鏡を持った時のことを考える。鏡の中には、鏡を持った「ワタシ」が映り、「ワタシ」の持った鏡の中にも、もっと小さな「ワタシ」が映る。一つの鏡に、…

中野サンプラザ 『ベルウッド・レコード50周年記念コンサート』

ずいぶん高低(たかひく)のあるスタンドが舞台に並び、一番上に照明をつけて、星のように光ってる。 今日は、『ベルウッド・レコード』の50周年の記念コンサートだ。ベルウッドって、1972年に正式に活動を始めたキングレコード傘下のレーベルなんだって。70…

池袋シネマ・ロサ 『Bridal,my Song』

「映画を見る側に考えさせるのがA級映画であって、すべてを説明してしまうのはB級だ」(クリント・イーストウッド、『「ローリング・ストーン」インタビュー選集』ヤン・S・ウェナー/ジョー・レヴィ編著 太田黒奉之/富原まさ江/友田葉子訳)と、イースト…

新橋演舞場 2022年 劇団☆新感線 42周年興行・秋公演 SHINKANSEN RX『薔薇とサムライ  海賊女王の帰還』

17世紀初頭のヨーロッパに、コルドニアという小国があり、国を治める女王は、元海賊のアンヌ(天海祐希)である。悪者たちから国を取り戻したものの、十数年が過ぎるうち、隣国ソルバニアノッソの女王マリア・グランデ(高田聖子)は、コルドニア併合に向け…

Bunkamuraザ・ミュージアム 『イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき』

90年代の終わり、「北欧」が若い女の人たちの間ではやり始めたのは、みんな無意識に、北欧ミタイニナリタカッタからだと思う。子供たちにはみな整った保育園があり、老人は守られ母親は働けて、一個人として尊重され、人権はちゃんとしていて、国は情報の透…

新宿シアタートップス オフィス3〇〇公演 『ぼくらが非情の大河をくだる時 ~新宿薔薇戦争~』

ひとつの棺、3人の男。男たちは棺を奪い合い、押し付け合う。3人で「ひとりの男」としてえがかれる局面があり、切り替わって(スウィッチング!)「世代の違う3人の男」としてえがかれる局面があり、そして「家族の男たち」であり、つまりは「男」なのだ。こ…

明治座 『羽世保スウィングボーイズ』

作・演出:G2 美術:伊藤雅子 照明:高見和義 音楽監督:崎久保吉啓 音響:内藤勝博 衣裳:前田文子 等々、スタッフ名はチラシにきちんと載っていて、企画・製作が博多座で、後援に佐世保市がついていることまで、ぺらっと一枚のチラシ情報でわかるのに、キ…