下北沢ザ・スズナリ iaku『流れんな』

海辺の町の、地元で獲れる「ガッピギ」を名物にする食堂で、企業と組んだ町起こしの話が進行中だ。食堂の主人の父が倒れた後を、懸命に長女睦美(異儀田夏葉)が穴埋めしようとする。「ガッピギ」の貝毒で、町は数か月動きを止めている。食堂に帰ってきた妹…

東京芸術劇場シアターイースト belle waves #1 ミュージカル『ラフへスト~残されたもの』

トンリム(山口乃々華)という名の1916年生まれの賢い少女とイ・サン(相葉裕樹)という1910年生まれの新進詩人との恋、その後ヒャンアン(ソニン)と名を変えたトンリムと大画家キム・ファンギ(古屋敬多)の恋が、鏡合わせに進行する。鏡の中から…

東京芸術劇場シアターウェスト serial number11 『神話、夜の果ての』

拘置所の精神科医(廣川三憲)の嫌う「心の闇」という言葉、宗教二世ミムラ(久保田響介)の弁護人クボタ(田中亨)の厭う「正義」、そしてミムラの母がすがる「神」。どれも汎用性が高い。大きくも使え、ちいさくもなる。この三つの言葉が指し示すのは、人…

東京・新宿 THEATER MILANO-Za 『ふくすけ 2024 ー歌舞伎町黙示録ー』

世界は薄く細分化された「層」で出来ている。たとえば死に神の持つような長柄の鎌で、切り払っても切り払っても、世界は姿を見せない。下の「層」が明らかになるだけだ。「層」は垂直に数限りなくあり、決して昇れはしないと思い知ったコオロギ(阿部サダヲ…

彩の国さいたま芸術劇場 『ORLANDO  オーランド』

オーランド(宮沢りえ)は、イギリスの大貴族の息子だ。彼は何百年もの年月を、胸に一冊の詩稿を抱いて旅をする。途中、男から女に変わり、遺産を失いかけたり子供を産んだりもした。しかし、そこには大きく触れられない。オーランドが一人の「詩人になろう…

下北沢 本多劇場 ナイロン100℃ 49th SESSION 『江戸時代の思い出』

人数分に汁物を取り分けて、いつも貝杓子一杯分だけ鍋に残してしまう癖が私にはあって、これはDNAに刻まれた先祖の飢餓の記憶だなと思う。40年ぶりに読む大作小説の登場人物が、知り合いのように懐かしい。ていうか知り合いなのだ。生きれば生きるほど、記憶…

京都四條南座 坂東玉三郎特別公演 『壇浦兜軍記  阿古屋』

「弾きすぎないでね」 『阿古屋』を玉三郎に引き継ぐとき、六世歌右衛門がこう言ったというのだが、それで歌右衛門がすごいひとだったとわかる。一方引き継いだ玉三郎は、『阿古屋』の二つのサワリに、平家の盛衰が見える、と、口上でゆっくり教えてくれ、こ…

アップリンク吉祥寺 『ハロルド・フライのまさかの旅立ち』

平日の午後、小さい映画館だが結構お客が入っており、後半になるにつれ観客のすすり上げる声が大きく響く。 いい映画(はなし)なのだ。 ある日、ハロルド(ジム・ブロードベント)は、一通の手紙を受け取る。昔の同僚クイーニー(リンダ・バセット)からの…

世田谷美術館 『民藝 MINGEI 美は暮らしのなかにある 』

第二次大戦がはじまるちょっと前に死んでしまった若い詩人は、生前こんなことを言っていた。僕の理想の家には長火鉢があって、それを前に着物を着たまだ見ぬ僕の奥さんが座っている。しかし、スイッチを押すと部屋は一変し、椅子に洋装で、さっきの奥さんが…

新橋演舞場 熱海五郎一座 新橋演舞場シリーズ第10回記念公演 『スマイル フォーエバー ~ちょいワル淑女と愛の魔法~』

2回目。前説の東貴博のフジイ8段が、似なくなっている。おもしろくない。客を笑わせながら自分も面白がるってことが、どれだけ難しいかを目の当たりにする。10回目/30回でもう飽きたのか。東貴博はずいぶん見せない苦労をしてここまで来た人だと思うが、…

博多座 博多座開場二十五周年記念 『六月博多座大歌舞伎 夜の部 通し狂言 東海道四谷怪談』

東京の観に来れないひとたちごめん。2024六月博多座大歌舞伎夜の部、通し狂言『東海道四谷怪談』、よい舞台でした。始まり週の水曜日、例によって観客がとても少ないけど(県庁と市役所の偉い人、どうしたのさ、なにしてる?)、観終わったお客さんたちは、…

新橋演舞場 熱海五郎一座 『スマイル フォーエバー ~ちょいワル淑女と愛の魔法~』

すいすい流れる芝居、と観客が思う、ということは、舞台に立っている当人たちにとっては、上演中の時間が、きらっきらに感じられたのかなあ。カーテンコールの三宅裕司は初日の出来にちょっと泣きそうで、ステージはほんのすこししんみりしてるのだった。え…

下北沢 シアター711 TAAC『静かにしないで』

「セル」(細胞、小部屋)に閉じこもり、ケータイから目をあげてにこやかに世界と交流して見せ(交流したふりをして)、またケータイに戻る若い者たち(タカイの世代)が、『社会』に気づき、社会化を図ろうとする、苦しい、しかし希望のある話だよ。登場人…

東京芸術劇場 プレイハウス 『未来少年コナン』

最初に登場する白衣の人物たちは、紙の上に作り出した科学を共有し始める。そして、決して責任を取ろうとしない。ぷんすか。もしかしたら、ひとりの人間の頭脳が始める理屈ゲームなのかも。科学はとうとうカタストロフを呼ぶ。彼らの囲む机は二つに割れてし…

紀伊國屋ホール 劇団青年座第256回公演 『ケエツブロウよー伊藤野枝ただいま帰省中』

田舎の家の、続く二間が見渡せる。縁側があり、沓脱ぎの石が据えられている。このセットがさ、なんか温(ぬく)いの。陽射しで縁側と石が暖められているのが感じられる。客入れ中ずっとかかっているのは、「カチューシャの歌」や、「宵待草」で、ここに「ケ…

彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd Vol.1 彩の国さいたま芸術劇場開館30周年記念 『ハムレット』

「あとからわかる」。この世は舞台、男も女も役者だったとして、そしてすべてが誰かに観られているとして(メタシアター?)、実人生と芝居のちょっと異なるところって、本当のことをずいぶん「のちに」知るってとこじゃないかと思う。吉田鋼太郎は実人生を…

東京ドーム RED HOT CHILI PEPPERS 『 The Unlimited Love Tour』

太鼓にさぁ、よく模様が入ってるやん?雲みたいな、マンガの吹き出しみたいな、オタマジャクシみたいな柄が、追いかけっこしてるやつ。三つ巴って言いますね。「天」「地」「人」を表すとか水を表すとかいうけど、あれ、「力(ちから)」のことのような気が…

THEATER MILANO-Za 『歌舞伎町大歌舞伎』 

力を出すってどういうことか考えた。最高の力を出す。それが拮抗する。祭りの山車が、すごい勢いで走ってくると、方向を変えた時、さっと何か真空みたいなものが生まれ、それがもう、めっちゃ清い。無心。強いものがあらん限りの力でひっぱりあって空気を止…

109シネマズプレミアム新宿 『オッペンハイマー』

世界中の人が、実はナイーヴ(世間知らずうぶおひとよしだまされやすい甘い)なのだ。 ナイーヴは雨の波紋のように同心円を描き、干渉しあう。次第に広がり薄くなるけど、乗り越えあってうねりを作り、雨粒の小さなものは消え、大きなものは遠くまで行く。 …

下北沢・北沢タウンホール 音楽劇『瀧廉太郎の友人、と知人とその他の諸々』

うー。「きのう、お稽古の帰りに夜道を見上げると、完璧なまでに艶容で清冽な朧月が懸かっておりました。」(演出家ご挨拶) 「お稽古」「夜道」「艶容」「清冽」「朧月が懸かる」。こういう文章、時間の余裕がない時にも書いちゃう人、どうなのか。と、そっ…

シネクイント 『異人たち』

どこにいるのかわからない。薄暗がりの遠景の街に、劇的な感じのグレーの雲が幾筋もたなびき、うすく明かりがさしている。朝?高層マンションの窓越しに、外を見る男(アダム=アンドリュー・スコット)の顔がそこに重なる。夕映えの夜?いや、遠くの街のビ…

中野ザ・ポケット 義庵4th ACT 『ちいさき神の、作りし子ら』

耳が聴こえる者と耳が聴こえない者の恋愛、結婚、こう書くことにもう不平等が忍び込んでいる。正しくは、「音を聴く者と無音を聴く者」とするべきなのか。いやいや、「無」っていう否定的な感じが、よくないかもだな。 真の平等・公平とは何かがこの芝居では…

新宿武蔵野館 『ペナルティループ』

あー、愛だよねこれ。殺し殺される者の間の激しい愛だ。恋人唯(山下リオ)を素性の知れない男溝口(伊勢谷友介)に殺された岩森(若葉竜也)は、6月6日の朝、復讐するために野菜工場へ向かい、機会をとらえて溝口を殺害する。しかし自宅で目を覚ますと、そ…

配信 『チャッピー小林と東京ツタンカーメンズ』

チャッピー小林(小林聡美)よ!このライヴの世界線はどこだ!世界が見えねー。 逆光をあびてしずしずと歩を運んできた一人の女(チャッピー小林)は、もちろん自分の立ち位置をラクダのタイムマシンに乗ってきた女と説明はするけど、なんかまあ、説得されな…

鶯谷 東京キネマ倶楽部 No Lie-Sense

鶯谷。エロス(ホテル街)とタナトス(墓地)に挟まれたところ、とか言いたいけれど、実際には正岡子規ののどかな影とかも感じられ、ひょろ長い、不思議な街だ。だいたい、行けども行けども喫茶店がない。延々と続くホテルの数に、ほんと、びっくりする。だ…

酒田雛街道 

「来たよぉ」 山居倉庫の広々した物販部(酒田夢の倶楽)の壁一面に、きれいに飾られた素晴らしいお雛様(一体の立ち姿が70センチくらいに見える)をしり目に、親指の先くらいのお顔の、精巧な芥子雛に声をかける。ちっちゃ!ものすごい小さい。見えない。…

渋谷PARCO WHITE CINE QUINTO 『PERFECT DAYS』

「まったくね、西洋の人たちはあたしたちが、みんな盆栽好きの庭師だったらいいと思ってんのよ、」と、頭の中で大きな声を出してみる。「それと小津ね」。もちろん『東京画』(1985)には感謝してる、あれがないと、私小津映画観なかったかもだもん。 本作の主…

シアタークリエ KERACROSS 5 『骨と軽蔑』

ものすっごい切れ味、と思うのだ。刀鍛冶の打った包丁で、牡蠣をまっぷたつに切ったみたいな、ぬるくない業物の幕切れだよ。すぐそばを砲弾の飛び交う戦争(自国の戦争)、こどもが駆り出される戦争、その中で、金と権力を手にした女たちが、厳しく辛(から…

キャナルシティ劇場 『オデッサ』

そっかー。「愉快」で同時に「愛憎深く」、この矛盾した命題を充たすためには、「推理もの」だよね! しかもただ推理ものじゃつまらないから、警察官カチンスキ―(宮澤エマ)は英語で話す。被疑者コジマ(迫田孝也)と留学生スティーブ日高(柿澤勇人)は鹿…

博多座 二月花形歌舞伎 『江戸宵闇妖鉤爪』『鵜の殿様』 2024  

「あ、ちょちょちょっと待ってて、いま読んでる本佳境だから」と江戸川乱歩『人間豹』の画面の上に出た「着信」の赤と緑の丸に慌てる。いやーおもしろかった人間豹。これ舞台、しかも歌舞伎にしたくなる気持ちわかる。妖しくて怖く、そしてその妖しさと怖さ…